威勢の焔~一人目
お嬢様って言っても色々ですよね。
通りの向こうより白地に青のラインの入った神官の服装の女性が現れた。
彼女の名前はエリン・バートン、職業はヒーラー、裕福な貴族バートン子爵家の三女として産まれ、末っ子だったために愛されたがわがまま放題に育ってしまった。
将来を危惧した両親が思いやりを育てるために教会へ入れ優しさで人を癒せる子に、と思ったのだがそうそう育った性格は治らないらしく自分は貴族である!とのさばってここまで来てしまった。
協会は信心があれば誰にでもその扉は開かれている、奉仕活動にも熱心な為国や町、村でも大事にされ共生をしている、だが上記のように裕福な家から多額の寄進の代わりに問題児を受け入れさせられている面もあり、町や村に派遣される神官は当たりはずれが発生してしまった時代もあった。
はずれの神官だと教会が寂れてしまう、何度もの失敗を乗り越えたのが「外れ神官は野良パーティーで鼻っ柱をへし折ってもらおう作戦」である。
だいたいの外れ神官が生き残ることの過酷さ、指示に従わないことのリスク、協調性や用心深さ、人任せにしないと言うことを学んでくるのだがどうも彼女は入ったパーティーに恵まれて?いたのか元の性格を維持したままになってしまい、教会のみならず父母達の悩みの種になっている。
だが一つは良いところがあるもので彼女は朝が強かった。
決められた時間の1時間前に到着したエリンはまず雑用係への叱責をはじめる
「そこの雑用係!何をしているのですか!!私が座る椅子をさっさと用意しなさい!」
彼女は自分は高貴な生まれのためどこにでも座るなどとんでもないことと考えている、ダンジョン内でも休憩時は彼女だけは椅子を求めるのだ、必要ならばテーブルとティーセットも出させる
休憩時の甘いものが用意されていないと怒って帰ってしまったこともある。
そんなトラブルを乗り越えてきていたリックはさっとマジックバック(偽)からいかにも貴族が好きそうな猫足の椅子を出す、もちろん使われている布はビロードである、真面目なリックは椅子のお手入れもちゃんと欠かしていない。
「遅いですわ!姿が見えたらすぐに出すものですわよ!当家のバトラーの爪の垢でも飲んでおきなさい!」
言っていることは酷いが椅子には座れたので表情は満足そうである、彼女のもう一つの良いところは感情がすべて顔に出るのでわかりやすことである、本人は貴族らしく感情を押し隠しているつもりらしいが(笑)
ただ空気は読めない、周りが自分に奉仕するの事を当たり前としてしまっている為一連の流れを見ている町の人々の表情には気が付いていないのだ。
(お貴族様ってのもぴんきりだとわかっているけど嫌な印象だねぇ)貴族ってこんなものでは?
(けっ、嫌な女だぜ、なんでリックもあんな奴にへーこらしてんだよ!)雇われてますから・・
(もう!もっと遅く来なさいよ!)早く準備するのは良い事ですよ~
当の本人のリックはどこ吹く風である。
リックへの不平不満、ダンジョンの不衛生さ、日ごろの教会への不満をぶちぶちと貴族らしく呟いているいつも通りのエリンに満足したリックは
「さぁ、静かになったので時間まで道の掃除をしてますね!みなさんもお店の準備頑張ってください!」
とさっさと手を動かしている
どこが静かなんだよ、、、毎回ぶちぶちと毒を吐く呪い人形みたいなお貴族様がこえぇよ!と言う商店街の心の声はどうやらリックには届いていないようだ。
読んでいただきありがとう御座いました。