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桃太郎(自作)  作者: 鉄トンボ
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第二話 英雄の育ち

 物事がわかるようになってきた桃太郎は、鬼ヶ島の実情を見て嘆きました。

 なんと、砂浜や近海がプラスチックゴミや汚染水などで溢れかえっていたのです。


 海に詳しい海賊の頭領に尋ねると、恐るべき事実を聞かされました。

 鬼ヶ島はちょうど様々な海流が落ち合う場所で、その海流によって大陸からたくさんの産業廃棄物から流れ込んでくるとのことでした。

 そしてそのせいで昔獲れていた魚介類がいなくなり、奪略や強盗をせざるを得なくなったと。


 桃太郎は、頭領に聞きました。


「何故大陸の人々に訴えにいかないのですか?」


「もちろん、訴えにいったさ。だけど、聞き入っちゃくれなかった。あっちでは揉め事を裁判というもので収めるそうだ。こちらがどれだけ訴えてもそれに勝てなきゃどうしようもないのだよ」


「どうすれば勝てますか?」


「俺もよくはわからないが、弁護士という職業があるらしい。それは訴えた者を助ける仕事だそうだ」


「わかりました。将来の夢は弁護士に決まりました」


 桃太郎は弁護士になることを決めました。


 それから桃太郎は、司法の勉強にとりかかりました。

 文字が読めなかったので、まず言語の勉強をしました。

 苦しかった。大変だった。

 だけど、仲間がいたから、続けられたのでしょう。


 犬と猿と雉です。

 三匹とも気づけば傍にいて、自然と共に育ってきたのでした。



◇◇◇



 実はこの犬、前世が桃太郎の前世の飼い犬であった。

 身体は違えど、魂の匂いは同じ。

 大好きな飼い主がどこにいようと、それを嗅ぎ分け、絶対に見つけ出す。


 そう意気込み、転生し、桃太郎を探し出し、まだ子犬ながらも自力で鬼ヶ島に辿り着いた。


 まだ五歳だった桃太郎の横で眠り、自然と桃太郎の仲間へとなったのであった。



◇◇◇



 実はこの猿、隣の島で行われていた猿の知能研究に使われた被験体であった。

 度重なる過酷な実験にストレスが爆発し、鬼ヶ島まで脱走してきたのである。


 必死で脱走してきたため、手足は傷だらけで体力も尽きかけていたが、森の中で子どもの桃太郎と出会った。

 純粋な桃太郎は昼ご飯用に持っていたバナナを分けてくれたのだ。

 過酷な精神状態は優しさに脆い。

 即刻、桃太郎の仲間になった。



◇◇◇



 この雉、実は大陸から渡ってきた。

 雉はそもそも鬼ヶ島に生息していないし、留鳥である。よって鬼ヶ島に存在するはずがない。


 だがこの雉は一味違った。親が渡り鳥の巣に托卵したのであった。

 渡り鳥の巣で生まれたこの雉は、自分を渡り鳥だと思い込み、育ったあと、別の大陸へと家族で渡ろうとした。


 だが幸か不幸か、種類が違ったため身体能力が渡り鳥より劣っていたため、ついていけなくなり、仕方なく近くの島に降り立った。

 それが鬼ヶ島だったのである。

 その数日後、桃太郎が流れてきたのだが、

生まれが違う余所者の境遇に自分を重ね、

桃太郎の仲間に参入することになったのだ。

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