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#07 夜明け

当日の夜が明けました。 カウント0です。

時間



  日付が変わる頃には、風はやんだ。


  それは、朝方の5時過ぎのことだった。

東の空が明るくなる中、見張り台の上にいた優とハンナは南側の地平線に赤い光をみた。 ハンナはすぐに時計を見た。

光が見えてから約6分、バリバリバリーと空気を裂くような音が聞こえてきた。 間違いない、王都だ。

優たちは見張り台から降りてダンテたちに知らせに行った。


  宿営地は、早朝から慌ただしくなった。

起きたダンテたちは、寝巻を着替えて防具をつける。

宿営地から南東の方角には黒い雲が迫って来ている。 真上にも垂れ下がった雲が出来つつある。 雨が来る。

  ベッドはばらされてマットとテントと共に運ばれ、馬車の荷台の底にしまわれた。 薪、食糧、食器、衣類。 速やかに馬車の近くまで運ばれた。

  忘れ物の無いことを確認して、ダンテが火を起こした。

アリスがコーヒーを淹れて、ダンテが干し肉とチーズをあぶってパンにはさんでいく。


ダンテ 「みんな聞いてくれ。 この朝食がSteigmaでの最後の飯になる。 あと数時間で物理防壁が消える。 雨の中の出発になりそうだ」


アリス 「ダンテさんのよみが当たりましたね」


ダンテ 「ああ、そうだな。 誤差は12時間ってところだ。 俺は今日の夕方に出発を予想していた。 まぁ、おおむね予想通りだ。 だが、経験則で申し訳ないが、こう何となくうまくいっているときは、思わぬ肩透かしを食らうもんだ。 だから、気を引き締めて行こう。 朝食を食べたら防壁へ向かうが、

防壁が消え次第フォーメーションを展開してくれ。 武器も初めから構えていく。 いいな。 戦闘態勢で外に出てしばらくそのまま進むぞ」


ベレ 「ダンテさん、質問が」   ダンテ 「なんだ?」


ベレ 「武装したまま向こう側に飛び出していったら、ISMINTIの民を刺激することになるのではないでしょうか?」


ダンテ 「鉢合わせる可能性はある。 だが、そいつらがISMINTI。だった場合は、幸いだ。 SAURESに雇われた傭兵(ようへい)の可能性だって十分にある」


ベレ 「なるほど。 すみません」   


ダンテ 「いや、いいぞ、ベレ。 質問は大事なことだ。  例えば、もし、俺がSAURESに雇われた傭兵(ようへい)なら、間違いなくISMINTIの民のふりをする。 意味は分かるな、ベレ? 武装して脅かしてでも距離を保った方が、お互いのためなんだ」


ベレ 「わかりました!」


ダンテ 「それに、ISMINTIと我々は言葉が違う。 彼らは古い言葉を話す。 だから、どの道話はできん。 好戦的な種族ではないから、鉢合わせたら距離を十分に取りながら譲り合って進んでいこう。 他に質問はあるか?」


ダンテ 「よし! アリス、何か付け加えたいことは?」


アリス 「あっ、いえ。 たぶん、ないと思います。 ですが、天気のせいかもしれませんが、不安です。 アウトフィールドに出る前から、結界を張らせてもらえませんか? しばらくの間、私の魔力を2割まで使わせてください。 雨も防げますし…」


ダンテ 「ああ、わかった。 だが、フォーメーションは組んだまま進むぞ。 結界も無敵ではないからな」


アリス 「わかりました。 ベレとコールは馬車のギリギリ横について。 縦長に範囲を絞って魔力を節約するから」


ベレ/コール 「了解です/了解っす」


朝食を食べ、一息ついてからダンテたちは国境へ向かった。 8:30を回った頃だった。



  午前 8:50 上空に出来上がった雲が雨水をこぼし始めた。




  アウトフィールド。


ゴザ 「もったいねーなぁ、あれ。 4つで金貨2枚もするんだろ? おれ今から拾ってこようか?」


メッド 「“ファリハ様”が経費でおごってくれるらしいから、いい。 ありがとうな、ゴザ」


クキ 「そこまで、気を遣うもんかね? 私らほとんどA級のランカーのチームよ?」


ギョ― 「“ファリハ様”の洞察力が言うんだから、黙って見てましょ」


ファリハ 「お気に召さないようですね、クキ様? では、ひとつ私と賭けに興じてみませんか?」


クキ 「面白そうな賭けなら乗ってもいいけど」


ファリハ 「はい、では。 私はあの一団の中に相当の魔力の持ち主がいると見ています。 4枚のサキュアプレートがオーバーフローで全部割れたら金貨3枚をいただきます。 プレートが1枚でも残れば私が金貨2枚をクキ様に差し上げます。 いかがですか?」


クキ 「のった!」   ファリハ 「では賭けは成立ですね」   クキ 「儲けー! キャハハ」


  クキとファリハが賭けの話をしている脇で、茶色のローブを羽織った男(?)が(うな)る。


ギョ― 「 … 」


メッド 「ギョ―、どうした?」


ギョ― 「メッド、わたしたち、デーモンキングでも相手にしようっての?」


メッド 「どうしてだ?」


ギョー 「サキュアプレートを割るとなれば、わたしでも骨が折れる。 それを4枚同時に割れるってことは、尋常なことじゃない。 魔導師レベルの魔術師があの中にいるか、人に化けたデーモンキングでもいるかのどちらかよ」


メッド 「なるほど、そこまでのことか」   ギョ― 「ええ…」


メッド 「ギョ―、サキュアボムを準備してくれ」


ギョ― 「メッド、アナタまで!!」


メッド 「俺も少し悪い予感がするんでな...」


ギョ― 「メッド、正気なの? 気武無効はわたしの魔力も全部削るのよ?」


メッド 「ああ。 わかってる」


ギョ― 「だ、誰に運ばせるの? まさか…?」


メッド 「ギョ―、すまない。 あとで埋め合わせはするから、頼む」


ギョ― 「――でも、あんなかわいい子、なかなかいないのよ?」


メッド 「すまない。 俺も予感が外れてくれればと思う。 だが、これは当たる。 それにファリハもああ言ってる」


ギョ― 「わかったわ。 あきらめる」


そう言うとギョ―は、大きな声でジョリを呼んだ。

奥のテントでシグマの長い髪の毛を溶かしていたジョリは、ギョ―に呼ばれて飛んできた。


ギョ― 「もう少し後で“お使い”を頼むからね。 この瓶の入ったかごを持って。  ここに贈り物をつくるから、それをもうすぐやってくる馬車のお兄さんたちに渡してほしいの」


ジョリ 「わかったわ、ギョ―様。 わたし、上手くやるわ」


ギョ― 「いい子ね、ジョリ。 幸せが待ってるわ」


不気味なローブの男(?)はほほ笑むと、両手から蜘蛛の糸のような黄土色の錬を出して紡いでいく。

20歳くらいのふくよかな女性で、ボディラインの綺麗なジョリは、ギョ―の紡ぐ糸を嬉しそうに見ていた。



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