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#-1 王都

ごめんなさい。


“#-1”を2話ほど挟みます。

Steigmaの王都の状況と、ジーナたちの向かった先のLedas王国のことについて先に触れておきます。



  下町の西と南では、燃える物はほぼ全て燃えた。

戦闘の激しかった地域では、民家の壁という壁は破壊つくされ、石造りの土台が幾らか形を残している。

生き延びた者たちは、城下街の淵に辛うじて崩れずに残っている建物の陰に集まって日をよけている。


  王政は混乱を最小限に収めるために、無傷なところだけを残し、傷んだ部分を全て切り捨てた。

城下街の入り口には結界が張られ、城下の壁には電柵が新たに設置され、触れる者達を丸焦げにした。

戦火が及ばなかった東の下町にはバリケードが設置され、表情の乏しい軍服たちが押し寄せる人々をシャットアウトしていた。


  ただただ立ち尽くす者たち、あてもなく彷徨う者たち、抗議するために東に向かった者たち、様々に行動を起こした者たちもいたが、全体としてどこか圧力が感じられない。

  だが、そういうものなのかもしれない。

町民の中には少なからず王政に仇為す反乱軍を救世主のように慕う者たちがいた。 だが、その救世主が彼らの住まう下町を灰と瓦礫の山に変えたのだ。

  救世主には町を焼かれ、王政には切り捨てられ、焼け出された多くの元町民たちの大半は放心状態だったのだろう。



  この動乱の勝者は、王国内にはいなかった。

反乱軍は下町の半分を焼き、民間人に150万人近い死傷者を出し、敗走した。

王都はこの内戦で浄水設備と発電設備の半分を失い、残された下町への水と電力の供給を止めた。

正規軍の人的被害も甚大で、軍部は不足分を補充するために、日に1回の下町への炊き出しを条件に一般人を徴兵した。



  SteigmaはRyhtaiの侵攻を前に、すでに半壊状態になった。

軍部直下の公安は、官僚や閣員たちや、貴族やその親族が国外へ逃げ出さないように見張ることに手を焼いた。

要人たちが逃げ出しては勝てる戦も勝てないし、最悪、戦争責任を取らせる必要もある。

軍の上層部はこの状況でも、未だにこの戦争に勝利する可能性を捨ててはいなかった。


  王都の国会では連日激しい議論がぶつかり合っていた。

四面楚歌となったこの状況から、如何にして活路を見つけるかということに議論は過熱する。

国益を優先するあまり条約を守らなかったことを、SauresとRyhtaiに詫びる体裁の良い文章は出来上がってはいる。 だが、責任の所在が未だ明確にならない。

戦争責任をめぐって軍部の反乱を装い、一幕やる手はずは整ったのだが、その物証が今一つ足りていないらしい。


  どちらにしても、両者ともにパニック状態に陥っていて、冷静に現状を分析できる思考が働いていない。


  敗者には述べる口上すらありはしない。

過去に彼ら自身が敗者に対してそうしてきたというのに…



  処変わって、下町の南東の端の小高い丘の上。 

あの美しい協会があったのは、ここだ。 ダンテの父がいた教会だ。

だが、それも数日前までの話で、ここも他と変わらず、今は瓦礫が残っているだけだ。


  一瞬のことだっただろう。

大きな爆音とともに辺り一帯は吹き飛ばされ、ダンテの父も共にいた何人かも、亡骸さえ残らなかった。

反乱軍が陣取ったこの場所一帯も正規軍の爆撃の集中砲火を浴びて灰になった。


  だが、ダンテが焦心苦慮していた未来はなくなった。 それが、せめてもの救いだろう。



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