542 そんな和樹さんには○○の刑です!
疲労困憊で帰宅した和樹は、晩ごはんの後風呂に入った。あまりにぐったりと帰宅したことを心配したゆかりが背中を流し頭を洗ってくれるということでお願いする。
先に身体を洗う。というか洗ってもらう。「わたしはもう入りましたから」とゆかりが服を着たままなのが少々残念だが仕方ない。ここで怒らせて背中を流してくれなくなる方がずっと残念なのだから。
泡立てたスポンジで丁寧に触れてくるゆかりに気分がほわほわする。泡を流す前に軽くマッサージしましょうかとゆかりが素手で触れてくれると頭の芯がぼうっとして疲れがどんどん流れ出していく気がする。
シャワーで泡を流すと湯船に入るように勧められる。
「僕まだ頭洗ってませんよ」
「いいんですよ。今日は和樹さんが最後ですから。すぐお風呂掃除しちゃうので、肩までお湯に浸かりながら頭洗いましょう」
にこやかにそう言ったゆかりは、ぼそりと付け足す。
「それに和樹さん、こうでもしないとちゃんと温まってくれないじゃないですか。いつもカラスの行水なんだから」
そう言われると自覚しかない和樹はうっと返答に詰まり、大人しく湯船に入った。
湯船の縁に頭を預けるようにしながらゆかりに身を任せる。
お湯の温度大丈夫ですかー? 水圧強すぎませんかー? シャンプーはこれでいいですかー?
ゆかりの指先の感触に集中しつつ、たまに挟まれるほよよんとした質問に、和樹もあまり考えず、まったりと返していく。
もこもこと泡だったシャンプーに包まれながら、質問は続いていく。
「かゆいところや洗い残した場所はありませんかー?」
「ありませーん」
「わたしの好きなところありますかー?」
「ありませーん……んん?」
しまった! まったりしすぎてうっかりすぎる返答を!
焦る和樹にゆかりは唇の端だけにやりと釣り上げる。
「へーえ。わたしの好きなところ、ないんだぁ。そんなこと言う和樹さんはスーパーサ○ヤ人の刑です!」
しゅるしゅると和樹の頭にふわもこのツノを作るとさっさと手を洗って出入り口の扉を開ける。振り返りぎゅっと目を瞑って和樹にべーっと舌を出すとぴしゃりと扉を閉めて出ていってしまった。
湯舟に浸かりゆかりに手を伸ばした状態で固まっている和樹(もちろん頭はふわもこサ○ヤ人である)はしばらくしてハッと意識を取り戻すと慌ててすべてを洗い流し、ご機嫌取りを兼ねた風呂掃除をしてから飛び出す。
「ゆかりさん!」
「きゃあっ! なんで裸なんですか!? 服着て! 服!」
「は、はいっ! すみません!」
ドタバタドタバタ!
「今度こそ……ゆかりさん!」
「髪濡れたままじゃないですか! ドライヤーで乾かして! せめてタオルドライしてよ。風邪ひいちゃうでしょ、もうっ」
なんだかんだと就寝の支度をしてベッドに入る。共寝を拒まれなかったことにほっとしつつ、そっとゆかりを腕の中に閉じ込めた和樹は、言葉を紡ぐ。
「ゆかりさん、さっきはすみませんでした」
「さっき? あ、裸でうろついたこと?」
「そうじゃなくて……いえ、それもですけど、お風呂で失言したので」
「お風呂? ……ああ、あれ。気にしてませんよ。和樹さんも気にしないで」
「気にしますよ。本心と真逆なんですから。ゆかりさんの好きなところならいくらでも……そうだなまず……」
それから和樹の怒濤の褒め言葉は、ゆかりが寝落ちしてもずっと続いていた。




