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徒然とはいかない喫茶いしかわの日常  作者: 多部 好香


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540 あまくやさしく

 お久しぶりの飛鳥ちゃん佳苗ちゃんコンビ登場です。

 注文の品をすべて提供し、洗い物を目の前にしたゆかり。

「使い切っちゃったから、また作らないとね」

 ゆかりは中身のなくなった容器を見ながら少し考える。

「うーん……うん、よし!」

 顔を上げると声を掛ける。

「飛鳥ちゃん、佳苗ちゃん。ちょっといいかしら?」

「はーい!」

 二人はぱっと顔を上げるとゆかりの元にやって来た。


「あのね、さっきの注文でココアペーストを使い切ったんだけど」

 ゆかりは空になった容器を見せながら説明する。

「良かったら二人で作ってみない? ココアペースト」

 飛鳥と佳苗は目を丸くして顔を見合わせると、おずおずと飛鳥が聞く。

「いいの? お店で使うものなのに。味付け難しかったりしない?」

「大丈夫、大丈夫。簡単だからすぐ覚えられるわ」

「なら、やりたい。佳苗ちゃんは?」

 佳苗はぶんぶんと首を縦に振る。

「ふふっ、決まりね」


 ゆかりが容器を洗う間に、二人は髪をまとめ直し手をしっかりと洗う。

「では、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 お互いにぺこりとお辞儀して、ふふふと笑顔になる。


「まず材料です。ココアパウダー、砂糖、牛乳。この三つです」

 二人がふんふんと頷きながらメモを取り終わるのを待つ。

「分量は、2:2:1。1が牛乳ね。分かりやすいでしょ」

「うん。忘れなさそう」

「これはお店用の、かなり甘めの味付けなの。うちの店でココア注文する人は甘ぁいのを飲みたい人が多いし、モカ・ジャバにも使うから」

 言われて初めて「そうだったのか!」という顔をしている佳苗。佳苗はかなりの甘党だから、もしかしたら家で作るときもこれに近い甘さのものを飲んでいるのかもしれない。


「では、実際に作ってみましょう。うちはこの容器のサイズに合わせるので、ココアパウダーとお砂糖は二カップずつ使います」

 飛鳥と佳苗は慎重に計量する。ゆかりは付け合わせサラダの下拵えをしながら説明を続ける。

「ココアパウダーとお砂糖をよく混ぜてね。だまが残らないように丁寧に。このあとの作業がやりやすくなるから」


「できました!」

「うん。じゃあここに、一カップの牛乳を少しずつ入れて練り混ぜてね。さっきの混ぜる作業をサボると、ここでココアの粉が塊で残りやすくなっちゃうの」

「へぇ、そうなんだ。そういえば家でココア作る時ってココアの塊がなかなか溶けないけど、先にお砂糖を丁寧に混ぜておくと良かったんだね」


 できあがったココアペーストを確認する。

「OK! 容器の中で均して蓋して、このまま冷凍庫に入れちゃって」

 容器を冷凍庫に入れたところで「完成!」とパチパチ拍手する。

「これで作り方覚えたよね。これからココアペーストの補充は二人にお任せしちゃおうかしら」

「いいの?」

 にこりと笑顔を見せて頷くゆかりに、飛鳥と佳苗も笑顔を返す。


「お砂糖多いから冷凍してもカチカチにはなりにくいけど、うちは念のためで手前のほうに入れてるの。保存期間は冷凍で一ヶ月くらい。だけど喫茶いしかわ(うち)はその前に使い切っちゃうわね。ココアもモカ・ジャバも、けっこう注文入るから」


「飲むときは、牛乳二百㏄を温めて、ペースト大さじ一と塩一つまみを溶かします」


「お家で作るときは、すっきり飲みたいならココアペーストのお砂糖は三分の二くらいまで減らして大丈夫よ。最近は三分の一が計りやすい計量カップも多いし、お家でも作りやすいんじゃないかしら」


 ゆかりがイタズラっぽく二人の顔を覗き込む。

「自分で作ったペーストでココア飲んでみる? せっかくだからココアも自分で作る?」

「……いいの? コンロ使って」

「いいよ。今ちょうどお客さんの注文入ってないし。ここで作るのが嫌ならバックヤードにカセットコンロ持ち込んで作ってもらってもいいけど」

「ここで作って飲んでみたい」

「なら、これどうぞ」

 ゆかりは飛鳥に小鍋を渡した。


 キャッキャしながら自分たちのココアを作る二人をたまに確認しながら、カウンター席を整えていく。それが終わると手を洗って。

「ちょっと席外すね。すぐ戻るから」

「はーい」

 奥であるものを取ってくる。


 戻ると、マグカップにココアを注ぎ一口飲んだところだったようだ。

 二人ともほうっと息を吐く。

「頑張ってくれてる二人にサービス。これ乗せて飲むのはどう?」

 ゆかりがさっと出したのは白い大ぶりなマシュマロ。二人の表情がさらに明るくなり、すっとマグカップを出してくる。

「お願いします」

「かしこまりました」

 マグカップに一つずつ、マシュマロをいれる。ココアとのコントラストがキレイだ。



 その後、勉強会で疲れた時など、ついついココアを飲む機会が増え、期末テスト終わりは毎回ぷにぷに具合が気になってしまう二人の姿を見ることになったのはご愛嬌である。

 ココアって寒い時期に飲むことが多いから、どうしようかなと思ったのですが。


 なぜかモカ・ジャバが飲みたくなって、でも最近なんでも高い(いつの間にこんなに値上げしたのかと驚くことも少なくない)から、実際に飲むのは我慢してここで昇華しようかと。

 つまりこんな話になったのは私の食欲のせいです(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 飛鳥&佳苗、キャッキャウフフで楽しそうですね。 この2人と進くんの3人でお出かけしたら面白いことが起きそう……なんて想像してしまいましたw
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