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徒然とはいかない喫茶いしかわの日常  作者: 多部 好香


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44-2 虫よけの効果(後編)

「最近どうも、“全身俺色計画”が復活しちゃったらしくって」

「“全身俺色計画”ぅ?」

「ええ。昔ね、アドベントカレンダーになってるコスメボックスをプレゼントされたの。その前に、服や靴やアクセサリーも、なんだかんだ理由を付けてプレゼントされてて」



 ◇ ◇ ◇



「あの、和樹さん。さすがに私、プレゼントをいただきすぎだと思うんですけど……」

「そんなことありませんよ。むしろ全然足りません! 僕のせいでいろいろ我慢させてる埋め合わせも兼ねてますから、遠慮なんかしないでください」

 笑顔できっぱり言い切る和樹に、説得の無理難題さを改めて実感するゆかり。


 今日は久々のデートだからと和樹からプレゼントされたものを身に付けるようにしてみたが、これは……。

「今日の私、下着以外はメイクから何から全部和樹さんにプレゼントされたものなんです。もしかして、これで下着まで和樹さんのプレゼントになったら、いわゆる“全身俺色”ってやつになるんですかねえ?」

「なるほど! つまり、今日のデートで下着をプレゼントすればいいんですね」

「違います! ちょっと、なんで“その手があったか!”みたいな顔してるんですか!?」

 慌てたゆかりがぷうっとむくれても、和樹にとっては可愛いばかりで効果がない。それどころか逆効果だ。ゆかりは困り眉をさらに寄せる。


「やっぱり私、もらいすぎですよね? このままだと和樹さんからのいただきものだけで暮らすことになっちゃう」

「最高じゃないですか! ぜひそうしてください! もう気付いてるとは思いますが、僕独占欲強いんですよ」


 笑顔でいけしゃあしゃあと言い放たれてゆかりは絶句する。

 そのままずるずると下着屋さん巡りをするはめになり、和樹にスリーサイズを知られることとなり、大変恥ずかしいデートとなった。


「いやあ、ゆかりさんってかなり着痩せするタイプなんですね」

 レストランの個室でふたりきりになった途端、そんなことを嬉しそうに言わないでほしい。


 穴があったら入りたい。むしろ自分で掘るから入らせて!

 そんな気分でデートすることになるとは、まったく予想していなかった。


 それからも折に触れ、和樹の全身俺色計画が発動し、止めさせるのに必死になった。



 ◇ ◇ ◇



「それで……ええと、何回目になるか覚えてないけど、最近また和樹さんのプレゼント欲が高まってるらしくて」

 はあ……とため息をひとつ。

「今回は、どうやって止めればいいのかしら」

「……アタシには、それこそ無駄な努力に思えるけど」

 あははと乾いた笑いを返すあたり、ゆかりもわかっているのだろう。


 ニヤリと笑って言ってみる。

「それこそ、そんな物より私を見て! っておねだりしたらプレゼント買いに行くよりゆかりさんの傍にいるほうを選ぶんじゃない?」

「そうですね。それ前に試したことあるんですよ。そう言ったら10日ほど引っ付き虫になって、仕事行きたくない出張行きたくないって駄々こねて、和樹さんの職場の皆さんをとっても困らせたんですよねぇ」

 遠い目をして答えるゆかりに諦観が浮かぶ。


「あ、もうすぐメンズバレンタインデーとかいうのがあるので、下着をプレゼントされるのは確定してます」

「あら。それはそれは。ふふっ。もしかして毎年?」

 ゆかりは深く頷く。

「ええ。これもね、どうやら花嫁イメージの白いベビードールを見つけたのがきっかけらしくて、なんとか私に着せる方法がないかって検索した結果らしくて。しょうがないなぁって着てあげたら僕の花嫁が可愛すぎる! って抱きしめられました」

 くすくすと笑うゆかり。


「まあ、それ以降は、プレゼントしてくれるなら、ふだん使いできる下着がいいですってお願いしましたけど。たしか去年はキュート系で、その前がセクシー系で、その前がエレガント系でしたね」

「まあ! でもちゃんと着てあげるんだ? 合わない下着だったことはないの?」

「うーん。今のところないですね。ほら、合わない下着とかデザインが好きじゃない下着だとめったに着ないじゃないですか。だから私が何度でも着たくなるというか、ヘビロテ入りする下着を探し出すのが楽しいらしくて。ふふっ。そこはありがたいですね」


 やはり、あの溺愛しすぎる旦那を相手になんだかんだでうまくやっているこのコはスゴい、とユキエは素直に思う。

 幼い頃から知っている従姉妹でも見るかのように目を細めて穏やかな表情を向ける。

「そっか。相変わらずラブラブなのねぇ」

「……はい」

 ほんのり頬を染めて小さな声で、でもきっぱり肯定する彼女はとても綺麗だった。


「そんなゆかりさんにプレゼントよ」

 スッと一枚の葉書を差し出す。

「なんですか?」

 葉書を手に取り目を通すゆかり。

「ネクタイセールのご案内? ってこれ、有名なブランド店じゃないですか!?」

「そ。ウチのお店の常連さんからいただいてね。ホラ、和樹クンの同僚の奥様とお友達になってショッピングに行くって言ってたでしょ。もし都合が合えばその奥様とどうかなと思って」


 ユキエはニコリと笑ってゆかりに勧める。

「そのお店の半期決算もあるみたいだけどね、なんでも10月1日がネクタイの日なんですって。たまにはゆかりさんからプレゼントしてあげたら和樹くん、喜ぶんじゃない?」

「そう……ですね。うん。そうしようかな。よし、環さんにも相談してみようっと」

 ゆかりは両手で口元を隠しながら、うふふと楽しそうに笑う。

「せっかくのプレゼントだもの。和樹さんには内緒にしなくちゃ」


 無理じゃないかしら?

 そう思いつつ、賢明なユキエは口にはしなかった。

 ゆかりさんにとってのハンサムウーマン、オネエさまのユキエさん登場です。

 前編のあの啖呵をきってほしくてご登場いただいたのですが、あんまり個性が出てないような。まだまだ修行が必要です。


 前編は(読んでておわかりかもしれませんが)最初は11月下旬頃投稿しようかなと思ってました。

 が、そこまで投稿が続いてるかわからないし、そもそも回想なんだから、いつ載せたっていいじゃない! という思い切りのもと、ここで出してしまいました。


 そのせいで和樹さんの暴走とかゆかりさんのおのろけとか、いろいろ被弾してる気がするけど……RUSHカレーのルー購入できるようにしてあげたから許して!(笑)


 ちなみにユキエさんは自分のお店でRUSHカレーを仕上げ、同僚のオネエさまたちと召し上がったそうですよ。

 『剛腕RUSH』出演メンバーの筋肉のキレとか爽やかな汗とかを録画で堪能しながら。

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