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徒然とはいかない喫茶いしかわの日常  作者: 多部 好香


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412 今日はいつもより肌寒い日だから

 ニュアンスだけですが、はだいろ注意です。苦手な方は自衛してね。

 愛しい人と至近距離で目と目が合った。

 言葉の代わりに小鳥が啄むようなキスを贈られて、お互いの頬と頬を擦り合わせて頬擦りする。

 今朝はいつもより涼しくて肌寒い日だからもう少しだけと理由をつけて、二人で潜り込んでいるベッドの中は温かい。


 素肌同士なのでずっとくっついていないと風邪を引く、夫が真面目な顔をして言うものだからゆかりはくすくす笑いながら「そう。風邪を引いたらお仕事に支障がでますから、それならずっとくっついていないといけませんね」と逞しい身体に身を寄せた。


 まあそうしていると夫婦、しかも新婚さんなのでたっぷり汗をかく羽目になり、先程まで二度目のお風呂に入ってから水分補給と軽い昼食を取ったところだ。

 夫が作り置きしていた温かいスープを飲み、ゆかりが今朝オーブンで焼いたパンをトースターでカリカリに焼き直してゆっくりと時間をかけて二人で食べる幸せなお昼の一時。

 おかげで心も身体もぽかぽかに満たされている。


 言葉で和樹さん大好きを伝える代わりに、ゆかりは首もとに両手を回して自分からも口づけを一つ。

 夫の和樹が返してくる口づけは段々深くなっていき、ゆかりも応えながら彼のさらりとした髪に指を差し込んでいく。

 ああ、どうしよう。幸せすぎて息ができなくなってしまいそう。

 まっすぐな瞳の中に映る自分の顔は瞳は蕩けきってまるで熟した林檎のよう。


「ゆかり」

と熱を持った声で呼ばれたらそれだけで、ドクドクと心臓の音が大きくなり、コントロールできなくなっていく。

「うん」

 だって新婚だし、同僚だった時からずっとずっと大好きだった人だもの。

 それに明日の喫茶いしかわは午後から出勤だし、だからいいよね。


 そう自分に言い訳をしながら別の意味で抱き合う体勢を整えた。

 砂糖菓子より甘い視線に頬は熱いまま、またぐすぐずに溶かされていく予感に胸を高鳴らせて、ゆかりは愛しい人を迎えていった。

 最初はでろ甘キスの日にしようかなと思って書き始めたんですが、違う方向に突き進まれてしまったので……ははは(乾いた笑い)

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