320 とある応援し隊員の思い出 Case9~その後if~
前話の続きのifストーリー。
ふう、と一つ溜息をついて席を立つ。レジへと向かえば彼女が「ありがとうございます」と伝票を受け取った。
「今日も美味しかったです。また来ますね」
そう伝えれば、彼女はパアッと小さな子供のように惜しみなく笑顔を向けてくれる。
「ありがとうございます! また中村さんとお話しできたら嬉しいです」
「ぜひ、こちらこそ」
この笑顔に彼も虜になっているのだろうな、と微笑ましく思っていれば、彼女が「あの」と内緒話をするように声を潜める。
何かあっただろうか、と彼女に合わせて口元に耳を寄せれば「ねえ、中村さん」と彼女の声が届く。
「その、私……うまく振る舞えていましたか?」
震えるようなか細い声に驚いて彼女を見つめ直せば、首筋まで真っ赤に染めた彼女の表情は、見ている私まで胸が締め付けられるような恋をする女性のそれだった。
「その、もしかして……」
逡巡した後、こくり、と小さく頷いた彼女。
ぷしゅーと頭から蒸気が立ち上りそうな彼女のこの想いに気づいていない彼は、いつ彼女のこの想いに気づくのだろう。
あの『ふんわりパンケーキ』のようにとろけるような、甘酸っぱいこの想いに。
これだから、二人の観察はやめられない。
ゆかりさんに自覚があった場合のifでした。これも小悪魔なのかな?
お互いがお互いの好意に気付いてないあたり、それはそれでじれったすぎますけどね。
ふたりの仲を応援し隊・喫茶いしかわ常連小隊だけに配布される薄い本ができてしまいそうです(苦笑)
これじゃあまりにも短いので、夕方あたりにもう1本、短いのを投稿します。




