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徒然とはいかない喫茶いしかわの日常  作者: 多部 好香


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279 if~両片思い同士の告白~

 和樹さんとゆかりさんが両方とも自覚しててじれじれの告白をするとしたら、こんな感じかなと。

 寒い日には、炬燵に蜜柑。温かい飲み物。外では、手袋、ニット帽、マフラーにカイロ。喫茶いしかわでは暖房を入れて、温かいスープとホットコーヒー。

「お鍋も欠かせませんね!」

 閉店前の喫茶いしかわ。私と和樹さんは、冬に欠かせない物とは? という話題で盛り上がっていた。

 私はカウンター内に立って。和樹さんはカウンター席に座って。


「あ、あとたまにお店に顔を出してくれるにゃんこたちがとってもぬくぬくで冬は手放せません」

「おや、うちのブランも負けていませんよ?」

 と和樹さんは負けず嫌いを発揮してくる。

「そんなに温かいんですか? どれほど温かいか検証しないといけませんねぇ」

 ふふっ、と笑いながら言うと

「では、僕がブランを連れてお邪魔しても? それとも…ゆかりさんが僕の家に来ますか?」

 そう提案してくるので、私は笑って誤魔化した。

 私と和樹さんはお友達だ。私は和樹さんのことが好きだけど……こんな素敵な人、私みたいな平凡なただの女の子にはハードルが高すぎて、どうしてもあと一歩が踏み出せない。


 沈黙の後。

「ねえ、ゆかりさん聞いてくれるかな?」

 和樹さんが顔を隠すように顔の前で手を組み、下を向きながら話しかけてきた。

「僕にはいいなって思っている女の子がいてね。喫茶店勤務の年下の女の子なんだけど……」

 私の肩がビクッとする。

「とても素敵な子でね、つるりとまん丸なおでこにほんわかしたタレ目が可愛くて、笑顔もとても可愛いんだよ。優しくて気立もいいからきっといいお嫁さんになるんだけど、なんせ僕がもう三十路のおじさんだから相手にされなくて……若い女の子にウケるようなことは知らないし。なんせ若い頃から恋愛とは無関係で生きてきたものだから正直どうしたらいいかわからないんだ……」

 私はまさかの告白に驚きながらも、下を向いて話している和樹さんの耳が赤いのを見てしまった。

「これでもカッコつけているつもりなんだけどな……やっぱり年の差かな? それとも仕事がネック? 彼女しっかりしてるから、あまり会えない男は家庭的じゃなさそうだから嫌なのかな? 彼女のお兄さんより年上なんだよ、僕。ちなみに今まで話してきた女の子はゆかりさんのことだよ」

 和樹さんが、顔を真っ赤にしながパッと顔を上げた。

「カッコ悪いけど、ここまで話したんだ。僕がどうしたら君に好かれるのか教えてくれないか?」

ちなみに年の差は変えられないからそれ以外で。クソッ、カッコ悪い……。再び下を向いてしまう。


「あの……私も聞いてもらってもいいですか?」

 和樹さんがビクッとする。私も恥ずかしいので、下を向く。

「私、好きな人がいて。年上の大人の男性なんですけど……凄くかっこよくて大人で素敵な男性だから、年下の私ではとてもじゃないけど……こ、恋人にはしてもらえないって……思っていて」

 ああ、顔が凄く熱い。

「もっと近づきたくても、やっぱり子供だなって思われたくなくて……近づけないんです。あの……和樹さんのことなんですけど……」

 私は勇気を出して、顔を上げた。

「どうしたらお近づきになれるんですか?」

 和樹さんは相変わらずのポーズで下を向いている。

「ごめん、今幸せを噛み締めていて……顔が上げられない……。あと五秒待って」

 そう言ってきっかり五秒経ったら顔を上げてくれた。

「ゆかりさんはゆかりさんのままでいいんだよ。僕は今の君が好きなんだ」

 きちんと私の目を見て伝えてくれる。

「和樹さんも……私は和樹さんのことが大好きなんです」

 お互い全力で照れ合ってしまう。

「と、とりあえず閉店します!」

 喫茶いしかわの看板を下げ閉店作業をする。和樹さんも手伝ってくれて、作業はすんなり終わった。

「うわー……今日は寒いですねぇ」

 喫茶いしかわを出て私はハァっと息を吐く。


 寒い日には……炬燵に蜜柑。温かい飲み物。外では、手袋、ニット帽、マフラーにカイロ。喫茶いしかわでは暖房を入れて、温かいスープとホットコーヒー。

 そしてそこに「恋人と手を繋いで温め合う」が加わった。


 和樹さんが手を差し出してくれる。私が手を出すと、ギュッと繋いでくれる。

「僕の心臓が大炎上ですよ……」

 照れ臭そうに懐かしい言葉を呟いた。


 なんだかとっても普通の恋愛っぽい! 恋愛ぽんこつには見えないよゆかりさん!(笑)

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