215 ソーメン!
夏休みを迎えた子供たちの世話の何が大変かというと、やはり三食きっちりメニューを充実させることだろう。自分だけなら二食同じメニューとか、TKGで済ませてしまうなんてこともできるのに。
「また焼きそば~?」
「もうそうめん飽きたー!」
と言われるなんて、常套句のようによく聞く。簡単と言われていようと、真夏にコンロの前で火を扱って調理するのは大変だというのに。
喫茶いしかわでもそんな話は若奥様たちからぽろりと零される。そしてゆかりに聞くのだ。
「私でもできるような簡単そうめんメニューないかしら?」
ゆかりは毎年どこかで誰かに同じ受け答えをしているのだ。今回も苦笑しながら答える。
「うちはたまに夫がごはん作るの代わってくれるので、少しはマシかもしれません。けど、私も手を抜くときは抜きますよ。大変なときは具だくさんの味噌汁にそうめんも入れて味噌汁にゅう麺にして、どんぶり鉢ひとつで済ませちゃうことだってあります。もっと手を抜くときは、“まったけのおすいもん”とかフリーズドライの中華卵スープをそうめんに乗せて、お湯や水で溶かしちゃったりとか」
夫・和樹のゆかり溺愛っぷりを知らぬ常連客などいないので、こちらも毎回のように似た反応が返ってくる。
「あらぁ、さすがは和樹さん。“そうめんでいいよ”とか言ううちの夫に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ!」
「あ、そうそう」
ゆかりはポンと手を叩いてカウンターの奥から数枚の紙を持ってくる。何かをコピーしたもののようだ。
「よかったら、これどうぞ」
【そうめん&そうめんつゆアレンジメニュー】
・和風カレーつゆ
・ガスパチョ風つゆ
・ピリ辛豆乳つゆ
・キムチトマトつゆ
・抹茶つゆ
・青じそレモンつゆ
・コーンマヨつゆ
・焼肉たれつゆ
・にんにくオリーブ油つゆ
・豚バラ塩レモンつゆ
・肉ピーマンつけ汁
・冷や汁風
・塩ラーメン風
・味噌ラーメン風
・油そば風(しらす追加しても美味しい!)
・坦々麺風
・ジャージャー麺風
・台湾まぜそば風
・ヤンニョムチキン風
・カッペリーニ風
・カルボナーラ風
・納豆坦々麺風
・豆乳冷麺風
・焼きそば風
・ビーフン風
・ネギ塩豚にゅうめん
・豚キムアボカド
・なす炒め
・ピリ辛肉なす
・なすとキュウリの浅漬け
・サバ缶ネギ塩
・にらだれ
・ツナ×焼肉のたれ
・豚こま豆苗ポン酢
・まるごとトマト
・レモンオリーブ
・舞茸旨塩
奥様たちは一瞬呆けて、ぱらぱらめくりながら紙面に載ったタイトルをざっと確認して、ほう、と息を漏らす。
「……すごい」
「えへへ。何年かかけて集めたものなんですけど、お子さんにも作れるものもあるので、親子で作ってみるのはいかがですか? うちの子たちは小学生になってこのへんのレシピは作れるようになったので、自分で作らせちゃってます。全部をお母さんがやらなくても、意外に大丈夫なんですよ。子供たちも楽しそうですし。それにね」
ゆかりはにっこりと笑う。
「どうしても“作るの無理!”ってなったときは、喫茶いしかわのご利用をお待ちしておりまぁす」
お茶目にパチリとウィンクするゆかりのしぐさは、和樹のそれととても似ていた。
短いですが、あるあるシチュエーションでした。
本文ではおしながき状態のそうめんアレンジレシピ。一部は名前アレンジしてますが、どれも手間抜きレシピが存在します。
ツイッターとかレシピサイトをちょっと調べたら出てくるはずです。
ちなみに、ここに名前出したものは、私も3年くらいかけて8割ほど作ってます。
それ以外にも麻婆豆腐と一緒に食べたりとか……。
でも、ズボラな私はそうめんは大量の湯でゆでるのが面倒だなぁと思っちゃうので、冷凍うどんをレンチン解凍して……のほうが多いかもしれません。




