11 ぷりんあらもーど(進視点)
今回は短めです。
うちの両親は仲がいいです。
見るたびに、僕はこの二人に愛されて望まれて生まれた子供なんだなあということを実感します。
けれど、それを悲しいと思う自分もまたいるのです。
お父さんとお母さんの間には、誰も入れません。
別にファザコンとかマザコンとか言われたいわけじゃない。でもさみしいのです。一本線がひかれているみたいで。
「進くーん、おやつあるよ! 和樹さんが久しぶりにプリン作ってくれたから、張り切ってデコレートしちゃった!!」
ぷ り ん あ ら も ー ど ! ! !
ああ、その誘惑に抗える子供がどれほどいるでしょうか。
缶詰や生の果物もきれいにカッティングして、生クリーム(驚くなかれ、うちではホイップクリームではないのだ!)もふんだんに盛られているのです。
僕はダッシュで食卓に向かい、即座にデザートスプーンをつかんでぱくつきました。
フルーツやクリームがたくさん盛られるからか、プリン本体は甘さ控えめで、カラメルも僕のような子供の舌には少し刺激的な苦さ。でもすべてが調和したそれは、天国の食べ物かと思うほど美味しかった。
「……進は本当にプリンが好きだなあ」
正面の席で肘をつき崩れた姿勢で僕が勢いよく食べる様を見ていたお父さんが、目を細めて笑う。
「違うよ。お父さんの焼いたプリンと、お母さんのアラモードだから美味しくて大好きなんだよ」
ふたりはきょとんと顔を見合わせた後で、あらあら虫歯に気をつけなきゃと苦笑する。
そう、僕はお父さんとお母さんの間には入れない。入り込めない。
でも僕は、二人のプリンアラモード。
食い意地が張りすぎていろんなスキルを身に付けた妻(いやこの人の仕事喫茶店員!)と、妻に褒められたすぎて凝り性を発揮しまくる夫のプリンアラモード。
見たい! 食べたい!