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異世界の仕事は....休みをくれ(涙)


「そなた、陽都では名の知れた鬼の義禁大尉と見た!尋常に勝負!!」


そう言って、

タカノ走るルート上に現れた明らかに強そうな武人を見て

思わず舌打ちをして、


「その通り!!邪魔だ!押し通る!!!」


タカノは叫びながら、

屋敷の奥で剣を構えていた強そうな武人をライダーキックのような飛び蹴りで吹き飛ばした。


吹き飛び具合はざっと10mぐらいだろうか、壁を突き抜けて中庭にあった池に落ちていった。



タカノの目標は彼ではなかった。

奥にいる切り込み隊長を吹き飛ばした大物だ。

さっきの武人の強さはきっと義禁の下士官クラスに毛が生えた程度だろうとタカノは感じていたい。



「やっと見つけた。お前か....」


そこには、

牛の顔をした大きな斧を持つ二足歩行の魔物がいた。


さっき玄関口にいた牛の魔物よりも2〜3倍は巨大だった。背中から黒いカラスのような翼も生えていた。


「これじゃ幻影狐盗賊団というよりは、牛盗賊団じゃねーのか。お前が首領だな?」


タカノはそう言って、太刀を持っていない左でその魔物を指差してそう言った。


「その通りだ。我が名はジュナン。魔王様より力を受け使徒として転生した者だ。魔王軍が六神将が一人」


どうやら、

彼が率いていた幻影狐盗賊団とは人社会向けの名前であって、彼ら使徒と魔物は魔王軍の一派らしい。


「おいおい、まじかよ...牛盗賊団ってセンスねーなおい」


タカノはそう言って、太刀を両手で持った。


「おいおい、そこじゃないだろ」


魔物はそう言って、首を振った。



実はこういう、

人外の相手をすることも多々ある。

こういう場合は大手を振って冒険者ギルドに丸投げして討伐クエストを発注するが、禁軍が対象することもある。



今回は珍しいケースだ、

魔王軍の幹部が都入りして潜伏していたからだ。


タカノはふと、

応援を要請しておけばよかったなと思いため息をついた。


それを見ていた魔物はこう言った。


「魔王軍の幹部と知って恐れ慄いたか?」


ため息の理由は簡単だ。



「あのなーこんな大規模なことされたら、捜査で休み無くなるんだよ!


明日は娘達と電影劇見に行くつもりだったのによぉ!!!」



タカノはそう言って、

魔物に飛びかかり太刀を振りかざした。


理由を聞いて周りは唖然としたが、


魔物は手に持っていた大きな斧でそれを防ぎ、

金属音が建物内を響き渡らせて空気を元に戻した。


タカノは斧に当たろうがそれでも、太刀を押し切った。

魔物が地面にめり込んで、思わず声を上げた。



「なかなかやるではないか、人間の身であるのにーーって」



魔物はそう言って感心をしていたが、タカノはくるりと空中で一回転して飛んで一旦距離を取り直した。

着地した瞬間にテンポをおかず、太刀を構えて直して物凄い速さで突っ込んでいった。



「な、なに!?」


魔物はそう言って斧を振り上げたが速度が追いつかなかった、

縦に振った斧は地面に刺さり、タカノは刀を振りかざした。


人の限界を少し超えた反射スピードと人間最高峰の身体能力を生かしたタカノの攻撃は見事に魔物を捉えて

真っ二つに両断した。


魔物は光に包まれて元の人間の姿に戻り地面に倒れ込んだ。


そしてあっという間にこのガサ入れは終わってしまった。



「生きてるものは捕らえよ。魔王軍の手先だ!」



タカノはそう言いながら太刀を鞘に収めて一息ついた。

“大食漢”というスキルの影響か腹が減ってきてたまらない状態になっていた。

汗もなかなか出ていることに気がつく。


タカノは近くにあった椅子に腰掛けて、暑かったので兜を外した。


「まじか....徹夜コースか....」


タカノはそう言ってため息をついて、

窓の外から見える庭を眺めた。


屋敷の外の庭に白い狼が空から降りてきて、人間の姿に変わったのを見て。


やったとタカノは思ってしまった。

それはなぜかというと....


「タカ兄!お待たせ、タオルと晩飯の残り持ってきたぜ!」


空から飛んできたのは変化の術使ったシンだったからだ。

シンとは付き合いが長くこの戦闘後に起こる生理現象のことをよく理解している。


大きく手を振って背負っている風呂敷を持ってこちらに向かってきた。


イズミにもらったスキルの副作用というべき効果のは毎度毎度困っている。

場合によっては、空腹により気絶することもあるからだ。


タカノは、部下が持ってきた水筒を飲みながら一息ついて一つの仕事が済んだことに対して安堵した。



現場での仕事が終われば、

一件落着とはいかないのが現実なようで、きちんとした国家組織をなすこの国では、生前の世界と同じくお役所勤めには書類の山が押し寄せてくる。


今夜は公務で寝れないのが確定になってしまった。


「あーもまた仕事増えちまったよ」


タカノはそう言って、

大きなため息をつきながら書類に目を通していた。


でも、心の中では少しにこやかにいれた。

今回の騒動はあくまでも城衛庁の話であって、義禁庁はあくまでも演習中に魔物と接敵して援護に入っただけの話になったからだ。


なので、

実はそこまで義禁の事務の仕事は少なく済んだのだ。


城衛将は苦笑いしながら、

この件を引き受けはしてくれた。


城衛庁は今頃、てんやわんやになって手柄のために必死こいて書類を揃えているのだろうなーとかふと考えてしまった。

冒険者ギルドに仕事を投げた分、突如現れた魔王軍幹部クラスの魔物が出現したため大分と危険手当ての請求もきているだろうと思うが....



「そこだけは、払っておきます...」

と城衛将にこっそりと伝えていた。タカノの独自ルートで冒険者ギルドの幹部と交流があるので義禁の蔵からお金は払った。



「多分、城民府の予算半分以上は持ってかれるだろうからな〜」



そんなことを思いつつ、

机の上に置かれた。シュンテイに言って買ってきてもらった違法ではないスレスレの格安ルートで手に入れた電影劇のチケットを見ながら。内心ニコニコが止まらなかった。



実は明日は、

妻のミミと出会ってから7年になる日でもある。


「転生してから7年か....」


書類に目を通し終えて、最後の欄に署名を加えた。

仕事を終えたタカノは伸びをして深呼吸をした。


明日は生け捕りにした、人の聴取が待っている。


隣の部屋を覗くと、

机に突っ伏して眠る下士官クラスの部下達がいた。

皆抜け殻のようになっているのがわかった。


「とりあえず、予定より早く済んだから...少し寝るか。今頃、城衛庁は総動員でフル回転だろうなー今回ばかりは感謝しないとな〜」


タカノはふと、

ミミと出会った時のことを思い出しながら、長椅子に横になり目を瞑った。



ふと気がつけば、夜も開けて昼になって

いつものガサ入れ後の尋問が終了し、

城衛から犯人らを引き継ぎそのまま義禁庁の牢獄の部署に移送して陽都の義禁大尉の仕事は終わった。



日も傾いて、

タカノは義禁庁から歩いて自宅に戻ろうと思い足を進めていた。隣にはシンもついていた。


「帰りにかりんとうを買わないとなー。店空いてるかな〜」


ふと娘達に約束したお詫びのかりんとうの話を電影劇のチケットを見ながら、思い出していた。


捜査に参加した部下の多くは今回の臨時収入で入った報奨金で宴会をするらしく呼ばれはしたが。


ここ最近、

家族との時間をろくに取れてないことを言うと理解してくれて、タカノの抜きで勝手に打ち上げ会をすることにしたらしい。


「仕事と家族に挟まれる。この感じ前の世界でもきっと同じだったのかなとか感じるよ」



「まーそうだと思うぜ。それよりもタカ兄。これ娘っ子達に」


シンはそう言って、タカノに紙袋を渡した。


「タカ兄忙しいだろうと思って...」


紙袋には、

『元祖箸箱屋黒糖餅』と書いてあった。


「うーん惜しい...これ、かりんとうじゃなくて糖餅だな。黒って文字だけ見てしまった感じか」


タカノはそう言って、笑みを見せた。

シンは悔しそうに唇を尖らせた。


「ち、せっかくカッコよく決めたかったのに....ポカミスするなんて」


「ありがとな」


タカノはそう言ってシンと肩を組んだ。

自ずと二人は笑みを浮かべる。


「て、照れるじゃねーかよ」


そうこうしているうちに、

たまたま箸箱屋の支店が目の前にあったので御目当てのかりんとうを買って二人は帰ることにした。


かりんとうを買って満足したタカノは屋敷の門の前について、ある重大なことを思い出してしまった。


「あ、やべー今日。ミミとの記念日だった....

贈り物用意してね...」


「げー姉御のことすっかり忘れてた」


シンも同じくだったようだ。

だがもう引き返してる時間もなかった。


門が開いて金髪の綺麗な髪と猫の耳のような角がチラッと見えて、覗き込むように顔を半分出していた。


「ただいま、ミミ。遅くなってしまって」


はにかみながら、タカノはそう言って手を上げた。

ミミはすると門から出てきてニコニコし始めた。

どことなく、

ー今日はなんの日か知ってますよねー

と言わんばかりなことを言っているようにも見えた。



「お帰りなさい。タカノ様」



そう、ミミがいうこと同時に門からもう一人飛び出してきた。活発な三女のマオだった。

タカノを見た瞬間に走ってきて、


「あ、お父様!」


と言ってはしゃぎながら、走ってくる途中で盛大に転んでしまった。


「おいおい。大丈夫かよ?」


いち早く娘のところに寄って行ったのは母親でミミはマオを起き上がらせてた。


マオは痛いのか、少し涙目になりながら。ミミにこう言った。


「お母様。マオは泣きませんから」


「うん。いい子ね。傷口を洗ってきなさい。あとで薬を塗ってあげるから」


「はい....」


マオはそう言って、タカノから回れ右をして屋敷に戻ろうとした。

タカノは、後ろからマオを抱き上げてこう言った。


三つ子ちゃん達は母親のミミから少し厳しめに教育を受けてるというか、剣術の稽古つけているからこういう痛いことには慣れはしている。


「父が洗ってあげるよ。シン。薬箱持ってきてくれ」


「わかったよ」



マオのことで、

ミミへの記念日への贈り物件を誤魔化そうと思ったが、タカノがなにも用意できていなかったことを彼女は感じ取っているように感じられた。


ミミと並んで屋敷の中に入っていった。

感じ取ってくれたのかわからないが、

満遍の笑みを見せてこう言った。


「生きて帰ってきたのです。私はそれで嬉しいです。贈り物は大丈夫ですよ。私の幸せはタカノ様と娘達です」


やっぱり、プレゼントを持っていないのを気づかれたようだったとタカノは感じ取った。



こんな感じの生活が今のタカノの日常だーーー


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