キリシマ・タカノ-1 光と闇
キリシマ・タカノ。
あの時、身を挺して子供を守った英雄はその後.....
転生し異世界で幸せを掴んだが。
別の時間軸を生きたキリシマ・タカノは
幸せから遠のいて行っていた。虚無感を埋める為にひたすらに国の為に任務に着き続け。手を血で染め続けたーー
そして任務の最中に命を落とし異世界へ転生したーーー
同じ世界で出会った自分同士はまさに光と闇である事を知ることになる。
「対象の乗車を確認。実行する」
キリシマ大尉はそう言って、ビルの影からある車を覗きながら手に持ったスマートフォンを起動させた。
その瞬間、大きな爆発音と衝撃波がその場所一体を包み込みビルのガラスが砕け散り地面に降り注いでいたーー
悲鳴が飛び交う中...
泣き叫ぶ女性が、爆発に巻き込まれた男性と小さな男の子を抱き抱えていた。
キリシマとふと目があったーーー
ーーあなたが殺したーー
キリシマは目を逸らし目を開けると....
銃弾が飛び交う、
とある場所にいるのに気がついた。
これは....
とあるテロリストの掃討作戦での記憶だと思ったーー
部屋に入るなり武器を持った男達を次々と的確に急所に銃弾を撃ち込み殺していたのが目に入るーーー
爆発音と硝煙の匂いが身体を包み込み...
頭を撃ち抜かれ即死したはずの男がキリシマを睨みつけながらーー
ーーお前が殺したーー
また目を瞑ると
どこかで人をナイフで刺し殺した場面が見え、
また目を瞑ると違う場所で撃ち殺した場面が見えたーー
それを何度も繰り返していると....
どれもこれも、全てを思い出していたーーー
そして、一番古い記憶がである場にいることが気がついた....
暗い部屋の中で恐怖に震える男がいた。
これは一体誰だったか...
記憶を辿っても出てこなかった。
込み上げてくるには恨みだったーー
銃口を眉間に突きつけていた。震える手から放たれた弾丸は男の眉間を貫いていた。
「イズミの思いを知れ....」
ーーそうか、これは初めだったなーー
また目を瞑るとそこは薄暗い暗いジャングルの中にいたーー
ゆっくりと足を進めると先にうっすらとあの人が見えていたーー
「イズミ!!」
そう初恋のあの人。失った一番大切な人ーーー
急いで行かないと水を掻き分けて足を早めたが...
右腕がポトンと落ちて水に中に沈んでいったことに気がついたーーー
「許さない...」
「痛いよ...」
「悲しいよ...」
そんな色々な人物の声がキリシマの耳の中に入ってきたーー
身体中にたくさんの黒い手が身体中を掴んできたが、キリシマはそれを振り解きながら進んでるはずなのに
イズミの姿は遠くなっていていたーー
だんだんと水の中に沈んでいったーーー
キリシマは目を開けると涙目になりながらナイフを首に突き刺そうとするミラが馬乗りになっているのに気がついたーー
「殺すなら殺せ。俺はお前の大切な人を殺してる...」
ミラは何も言わないで、ただ黙っていた。目からは怒りを感じるが何か違う感情も読み取れた。
キリシマはミラの持ったナイフの刃を右手で掴みこう言った。
「殺す勇気がないなら、こんな真似をするな。
一度、復讐だとしても人を殺すと戻れなくなるーー
お前はそこにいく必要はないーー」
右手からは血が滴り落ちていたが、痛みはなかったー
この右手はあの勇者ショウタに斬り落とされた後、魔術でくっつけた義手だからだ。
そして、ナイフを奪い取って、投げ捨てミラを押し倒して血のついた右手で彼女の頬を撫でてこう言った。
「それでも殺したいなら、少し待って欲しいーー
全てが済めば俺を殺せ」
「わかった...」
ミラはそう言って、ため息をついたーーー
キリシマとミラは異世界転生して来た勇者を殺すために魔王軍が用意した計画に協力するために焔帝国の帝都から少し離れた街に潜伏していた。
極西地域から来た冒険者を装い着々準備を進めていた。
「この国って豊かよね」
そう、ミラは宿の外から街をぼんやりとみながら椅子に座りめを閉じるキリシマに聞いた。
「ああ、そうだな...」
キリシマはそう答えると椅子から立ち上がり、ナイフを抜き、刃を砥石で研ぎ始めたーーー
「本当にやっちゃうの?こんな平和で豊かな街を...
私は賛同できない。これでも元は冒険者よ...」
「なら、なぜ抗わない?」
「あなたを殺す為。今のあなたを殺そうとしても返り討ちにあうからよ。
あなたが、やるべきことを終えた瞬間に仇を討つため...」
ミラがそう言うとキリシマはため息をついてこう言った。
「私怨に囚われるな....
忘れろっていてもーーーー無理だろうな...
俺が言えたことでもないからなーー」
キリシマは、
そう言ってミラを見つめると彼女の瞳には確かに強い意志があることを感じることができた。
愛する人を奪われた気持ちはいた程わかっていたーー
目の前にいる少女がどこか昔の自分のようにも感じられた。
ナイフをミラの顔スレスレに投げて壁に突き刺した。
そして、彼女が怖がる反応を見てこう言った。
「恐怖はあるんだな。怖がるなとは言わないが、敵に恐怖を見せるな...
確かに殺していいとは言ったが、
俺も死にたいわけじゃない...」
キリシマはそう言って砥石をテーブルに置いて、立ち上がりミラの前に立ち壁に刺さったナイフを抜き、彼女の顎を掴みこう言った。
「もし、お前がこっちに来る覚悟があるなら。仇に恐怖を見せるなーー」
キリシマはそう言うなり、
彼女から手を離してナイフを鞘に収めた。
ーーーーー
魔王軍の不穏な情報は、どこから漏れたのかは定かではなかったが...
早い段階でタカノ率いる義禁庁は察知していた。
タカノは執務室に座りながら、上がってきてた報告書に目を通していた。
「それにしても、あまり表に出せない調査ってのは難しいな...
大規模に人を送るわけにもいかないし....」
タカノはそう言うと書類を一時机の上にいて、横に置いてあったカリントウを手に取って頬張り始めた。
同じ部屋にいる秘書官がこう答えてくれた。
「そうですね。大尉...おおっぴらに我々自身が動くわけにも行きませんし...
引き続きシュンテイ殿の内偵と冒険者ギルドの情報だけが頼りの綱という形ですよね」
「それもそうだな....
魔王軍が、動いてるのは確かだ。
多分、どこかの街で潜伏している使徒を使って大規模な攻撃があるのは確かなはず...
早くそれを見つけないといけないんだけどなぁ....」
ドンドンドンと廊下を走る音が聞こえてタカノは扉の方に目を向けると、
アルスの声が聞こえてきた。
「大変です!タカノさん!!」
バンと扉を乱暴に開けたアルスは大きく肩で息をしながら、疲れた様子でこう言った。
「キリシマ・タカノと行動を共にしていた、魔法使いの少女が見つかりました!!
冒険者ギルドで今、身柄を押さえてます!!」
「マジか!?今から向かう!支度する」
タカノはそう言って、慌てて席を立った。
キリシマ・タカノは魔王によって呼び出された並行世界から来た勇者の一人。
もしかすると、何か今回の魔王軍の動向に繋がると感じ急ぐことにした。
タカノとアルス、義禁庁の部下3人を連れて一行は陽都の冒険者ギルドに向かった。
日はすでに傾き夕焼けが街を包む中、冒険者ギルドは夜になると酒場になるので多くの人がギルドの建物内にいるのが見て取れた。
禁軍格好をした兵士と武官が店に入ると一瞬店の空気が固まったように感じたが、
よく顔を出している常連がタカノに挨拶をすることで場が和んだ。
「なんだ!義禁大尉の旦那じゃないか?今日は何のようだい」
そう気さくに話しかけてきた大男はアルスとエミリの冒険者仲間であるB級ライセンス持ちのファン・イーロンという戦士だった。
「よう。今日は仕事だよ...それよりもギルド長は?」
「ギルド長は奥にいたよ。なんか重苦しそうな顔してたけど...昨日の肉でも当たったのかな」
そう上機嫌に話すイーロンを見てタカノは笑みを浮かべた。
そりゃ、仕事終わりの時間だからお酒も回ってそうなるわなと心の中で思っていたが...
横にいたアルスはどこか羨ましそうな顔をしていた。
このギルドでタカノ・ウル・ラシュトを知らない冒険者なのどいないから至る所から声が掛かってきたが、軽く挨拶を交わしてタカノは奥の部屋へと進んでいった。
ギルド長の部屋の中に入るとそこには、ギルド長と厳しい顔をするアデルとエミリが椅子に座る少女をみていた。
その少女は紛れもなく、
あの並行世界からやってきたキリシマ・タカノと行動を共にしていたミラという魔法使いの少女だった。
「タカノさん...大変なことがあるようです」
エミリはそう言って、重苦しそうな表情をした...
アデルも同じくため息をついていたーーー
ミラの表情は虚としていて何かぼうっと遠くを見つめているように感じた。
彼女が座る椅子に魔法陣が書かれているのを見てタカノはこう言った。
「真実を出さるための術式か...違法だが、まーいいーどうせ俺も許可するつもりだったしーー
で、彼女は何を言ったんだ?」
タカノに言葉を聞いてアデルがこう言った。
「明日、魔王軍が大規模な転送魔術を使って攻撃を仕掛けるそうよ...場所はここーー陽都近辺...」
タカノはそれを聞いて目を見開いたーー
そして、こう言った。
「ギルド長。緊急クエストの受注をお願いしたいーー
俺は、俺の範疇で禁軍と城衛を動かす...
一刻を争う、時間は無駄にできない。全員動いてくれ」
シン「一応、最終章のつもりで作者は描いてるそうだよ」
タカノ「へーそうなのか...なんかそう聞くと寂しいな〜」
ミミ「話の区切りというのをつけたいようですわよ」
タカノ「まー元々、大きな筋書きはあってないようなもんだからな....」
シン「俺の天界帰るための冒険とかやってないし...タカ兄魔王を倒すはずなのに、都で事件解決に奔走してるし...」
タカノ「いやいや、ちゃんと魔王軍の手先を倒してるじゃねーかよ...勇者って感じ一切ないけど...」
シン「いっそ、異世界犯科帳の題名よくないかってのも作者は悩んだそうだよ」
ミミ「まぁーとりあえず、タカノ様にシン。この章はタカノ様自身の為のお話ですわ。お手伝いしますわよ」
シン「へいへい。とにかく、次回。1vs40。
キリシマ・タカノが大暴れするらしいぜ」
タカノ「あ、やべ...準備しないと...セリフも覚えないと」




