ラシュト家に仕える者-1 草原の少女シュリム
ラシュト邸に使える仲間それぞれのタカノとの出会い。彼らは何を思い何を感じたのか。
馬に乗り草原をゆっくりと進む少女は、
目に涙を含ませていた。
「シュリム〜気をつけてな〜」
そう彼女の年老いた祖母は手を振っていた。
祖母の後ろには彼女の一族みんなが集まっていた。
みんなでていく娘に手を振りながら、行ってらっしゃいと言っていた。
「一族の代表だーしっかり届けて、いいところ仕官して働いてくるんだぞ〜」
そう彼女の歳の離れた兄が大きく手を振っていた。
シュリムは、
今日、一族の一存に関わる旅に出たのだ。
それは傘下に入っている大焔帝国への貢物を持っていくことだ。
途絶えるわけにはいかないのだ、
焔帝国あっての敵がいない生活を送れているからだ。
「うんだ!誇り高きゲルガの民....ボクは頑張んねーと!都で活躍してくっべ」
シュリムはそう言って陽都に向けて馬を進めていった。
仕官先は心の中で決めていた。
男性ではないし字が書けないから、科挙を受けるのは厳しいだから....
異世界出身での禁軍武官タカノ・ウル・ラシュト卿。
彼の噂を聞いてシュリムは心の中では彼の元で働こうと思っていた。
鬼神の如く都に蔓延る悪人や魔王軍を打ち負かしており、ついでに頭脳明晰で軍の改革を進めており、町の民にも優しく
タカノは都人だけではなく異民族には憧れの念を受ける貴族の一人だ。
「タカノ・ウル・ラシュト卿....一体どんなお方だろう...」
ーーーーーー
「確かに受け取った。陛下には伝えておきます」
「ありがたき幸せでございます。
ゲルガ一族一同、皇帝陛下の庇護にあることを常に感謝しております」
王宮の前の門で、
皇帝の側近である宦官に一族の献上品である弓と宝石乗ってきた馬を手渡して。
跪き頭を下げていた。
皇帝陛下に会えるのは、
親密である藩国の王族や同盟国の代表クラスのみで、
焔帝国内に住む一民族であるゲルガ族は自治を認められている一臣民であるだけであるので皇帝陛下への謁見は認められない身分だ。
一族としての務めは終わらせたシュリムは、
あてもなく都を歩いていた。
雇ってくれるかはわからないが、直接ラシュト邸に向かうことにした。場所は城衛の兵士から聞いたので問題なかったが.....
「なんで、こうなんだぁ....」
城衛庁の留置所に入れられたシュリムは思わずそう声を出してしまった。
異民族の格好をしたままで弓矢を持っていたのがヤバかったのか...
それとも、
城衛の兵士に声をかけた後都で道に迷い彷徨って空腹のところ迷って入った場所に置いてあったリンゴを食べたら....
どちらにしろ、
近くを警邏していた城衛の兵士に捕まった。
実のところ王宮を出た後空腹のあまり、記憶がない....
「おいでろ!武官の家に入ってたんだ。謀反の疑いがある取り調べだ!」
そう、城衛の兵士がシュリムに向かって怒鳴ってきた。
少しまだ状況が掴めないシュリムはぼうっとしながら立ち上がり頷いた。
牢屋を出ると、
そこには赤い武官装束に身を包む明らかにオーラの違う男性が取り調べを行う部屋に座っていた。彼は何かを急いでいるのか何かカリカリした雰囲気を出していた。
後ろには青い髪の少年が腕を組んで暇そうに立っていた。
「格好からして、北方の遊牧民だな。どこの一族だ」
武官はそうシュリムを鋭い眼光で睨みつけながらそう聞いてきた。
シュリムは思わず、背筋が硬ってぼんやりしていた意識が一気に戻ってきた。
「げ、ゲルガ族の娘シュリム」
武官はそれを聞いて、目の前の椅子を手で指し示してこう言った。
「まー座れ。単刀直入に聞きたい。俺も暇じゃない...
あの家の倉庫になぜ入った?」
「い、家ですか?」
シュリムは記憶を辿りながら何かを思い出そうとしたが、何も思い出せないでいた。
武官は急いでいるのかイライラしているのが目に見え始めていた。
「よし。まあいい。何を見た?」
「り、りんごです...あれは絶品で....」
武官はシュリムが何か言おうとした瞬間にバンと机を叩いて立ち上がった。
「おい、シン。こいつ関係ないようだな?」
「あ、ああ。
真実を出させる術式を発動させてるけど....これだったら全く関係なさそうだよ。彼女は関係ないよ」
腕を組んでいた、少年は武官の呼びかけにふとハッとしてそう言った。
シュリムは、キョロキョロっと周りを見渡した。
「シュリムって言ったな。どうやって、あの家に忍び込んだ?」
シュリムは目線を元に戻して、こう正直に答えた。
「覚えてません」
それを聞いた、
武官ははーっと息を吐いてこう言った。
「よし。終わりだ終わり。ただの侵入犯だな...」
武官は立ち上がり、部屋を後にしようとした瞬間。武官装束が赤色で皇帝の紋章の書かれた模様を見てシュリムはふと思い出した。
「貴方様はっ!義禁庁の武官様でしょうか?」
武官はそれを聞いて振り返りシュリムの方に視線を向けた。
「タカノ・ウル・ラシュト卿にお会いしたいのですが!」
武官は目を丸くしてシュリムを見つめた。横にいた少年が武官の代わりにこう答えた。
「目の前にいるけど」
「へえっ?」
「だから、目の前にいるって。タカノ・ウル・ラシュト卿だって」
シュリムは少年の言葉に考えが止まったが....
次に出た行動は考えるよりも先に出たようだった。
「ラシュト卿!ぼ、ボクを雇ってください!」
ーーーーー
事情とやる気を話せば人生どうにかなるというのをシュリムは祖母から聞かされていたが、
どうにかなってしまったようだ。
遊牧民出身だという事で、
不慣れな馬小屋の管理係として雇って貰えることになった。
保釈金は全てラシュト卿持ちで、
馬小屋に住込で暮らすことまで決定してしまった。
もちろん、
保釈金は肩代わりでその分以上の働こうとシュリム自身考えていた。
「あ、また再会するとは思わなかった!」
シュリムはタカノに案内されて、新居になるラシュト邸の馬小屋の中にいる自分の乗ってきた馬が小屋にいた。
「お、もし貸してこの汗血馬はお前が乗ってきた馬だったのか....
この前のジュナンという魔王軍の幹部を捕らえた恩賞として皇帝陛下から頂いたんだが....
俺とこの家に住む奴らで馬の世話をしたことがないんだ。
知り合いなら問題ないだろう」
タカノはそう言って馬の頭を撫でていた。
「こいつの世話を頼む。あとは....」
タカノの背中からぴょんと顔を出したのは、可愛らしい顔をした三人の娘たちだった。
綺麗な金髪の髪の毛にぴょこっと猫の耳のような物が生えていた。
「娘の遊び相手も担当してほしい」
どうやらこの半獣人三人娘は....
「か、かわいい...」
思わずシュリムは思ったことが口からこぼれ出してしまった。
タカノはウンウンと頷いていたが、三人娘の娘は興味津々そうにシュリムと馬を見ていた。
「いえいえ、なんでもございません!畏まりましたっ!旦那様!!!」
この娘たちはタカノの娘たちのようだ...
「「「よろしくお願いします」」」」
三人はそう笑みを見せて、シュリムにお辞儀をしたーー
こうして、田舎から飛び出してきた。
草原の少女シュリムはラシュト邸の仲間になった。
シュリム「はじめまして。ボク、シュリムと言います」
シン「お、きましたなボクっこ田舎っぺという属性のロリじゃん」
シュリム「へ?どういうだぁ?」
シン「そういうことだよ。とりあえず、よろしくな」
シュリム「(うーんなんか、妙なこと言われてるような気がすっけど、気にすることないかぁ。とけーのことだぁー初めてのことばっがでなんも分かんねべ)」
シン「あのゴリラも挑戦するな....東北弁で行こうとしてるのに、全く知らなねーのにさ....キャラがブレそうだ...」
シュリム「あ、娘っ子。かわいいなぁーぎゅーってしたいべ」
リン「?」
シン「いや、この個性は生きてきそうだ....」




