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汚れた正義-4 正義と殺し


タカノはイズミとシンタロウの葬式に参列出来なかった。

クロサキ家のご両親からは最後の挨拶をして欲しいと頼まれたが、タカノは脚を運べなかった。


憤りを感じる日々が続いた....

何も出来なかった、自分に腹が立っていた。

守れなかったことへの後悔で墓にも行くことができなかった。


もっと強かったら....

あの男に奪われなかったんじゃないだろうか?

タカノはそう感じ始めていたーーー


強くなって、強くなって....

この手であの男を殺してやると思い始めていた。


大学進学後に名門と有名だった世界チャンピオンを輩出する総合格闘技のジムの門を叩いて自らを鍛え上げた。


時間が過ぎるごとにその思いはどこかに忘れているようだった....

毎日をただ過ごしていた。


大学では友人にも恵まれ、家の仕事を手伝い、トレーニングに明け暮れた....

忙しさの中で、どこか男への復讐心を忘れようとしていた。同時にイズミとの思い出も心の奥にしまっていた。



そして時は流れて、

大学卒業後タカノは兵役に着いたーーー



憧れはあったが、

どこかで強くなった自分を試したくて、

中東のバンダリと呼ばれる街で起こったのか煮えたぎる鍋事件と呼ばれる戦闘で大戦後初めて海外で殉職者を出した国家憲兵隊に3年間の兵役へ志願した。


そして、

国家憲兵隊でも数多くの犯罪者やテロリストと渡り合うことで知られ訓練も過酷とされる機動憲兵隊を志願した。


無事に機動憲兵隊に配属後、

自ら志願して日本でも有数の厳しさを誇る陸軍レンジャー訓練受けることにした。



タカノは最終過程の敵地潜入の行軍中に

朦朧とする意識の中で、

手に自動小銃を持ち40kgのリュックを背負いながら山道を歩いていたーーー


久々に自らの死を感じていた。

そんな時思い浮かんでいたのは、

涙を浮かべ恐怖に怯えるイズミと血塗れでぐったりと動かなくなったシンタロウの姿だった....


そして、大切な二人を奪った男の顔が目の前に浮かび上がるーー


手で持っておる小銃を握りしめると目の前が、自分がいる山道に戻っていったーーー


ー殺してやるー


一歩一歩進む足音と主に

イズミが男に犯されて、彼女の悲痛な篭った悲鳴が耳に聞こえ始める。


あの男を殺すという強い思いだけがタカノの足を進めていた。


そう感じながら、途切れそうになる意識を保ちながらやっとの思い出で無事に過程は終了しタカノは陸軍レンジャーの訓練を終了させた。



するとその日から、

国家憲兵隊では、誰もが知る凄い人として尊敬の眼差しを受けていた。


大卒だったので、

職業士官への栄転も進められた。

国家憲兵隊の特殊部隊へのオファーもあったがタカノは断った。


強さを求めるなら絶好な機会だったが、

どこか道が違うような気がしてならなかった。


別に国の英雄になるつもりなんてこれっぽっちも感じていなかったからだ。

あるのは大切な人を守れる強さが欲しいだけだからだ。



でも、

タカノはどこか心の中にすっぽりと空いた穴があった。満たされない気持ちが溢れ返るーーー

レンジャー訓練で思い出した、あの光景と悔しさを思い出していた。


訓練が終了後に次の任務として真冬の大阪で街頭警備駆り出された。



ふと街から見上げる空に手を伸ばした。


微笑むイズミの姿と笑みを浮かべるシンタロウが、遠くから手を振っているように感じた。

もし、今の自分だったら足を撃たれて背中を撃たれても.....


助け出せたかもしれないーーー


そんなことを思っていたら、

傍受している警察無線からある情報が入ってきた。


それはすぐ近くで、

脱走したテロリストが潜伏しているとの情報があり警戒レベルを上げろとの命令だったーーー


タカノはそのテロリストの名前を聞いて、唖然とした....そう、あの男だったからだーーー



「キリシマ上ちゃん。我々も探しましょうや」


そう背中をポンと叩いたのは、

的場警部補というタカノの分隊と共に行動する警察官の一人だった。


彼は煮えたぎる鍋事件の当事者で...

あの戦場を生き残った一人でもあった。


時折プライベートでも付き合いがあって、

歳は離れていたがなぜか意気投合していた。


「ええ、的場警部補」


タカノは頷いて近くを的場警部補と共に警戒することにした。


色々な場所を捜索していると、

廃墟になった雑居ビルを見つけたのでそこに入ることにした。


このビルはよく悪ガキの拠点になってるらしく、

警備が甘いせいかよく人の出入りが目撃されているビルでもあった。


タカノは懐中電灯で照らしながらビルの中を探し回った。的場警部補は別行動でビルの外を探していた。


ビルの一室でドアから光が溢れている部屋を見つけて、タカノは懐中電灯を消して無線で的場警部補を呼んだ。


聞き覚えのある男の声と、女性の篭った声が聞こえていた。


タカノは警棒を抜いて、そっとドアの隙間から部屋の中を覗いた。

するとそこにはあの男が手にナイフを持って手錠をかけられ身動きが取れなくなった高校生ぐらいの少女が涙目になっていた。

口には布を巻き付けられており喋れなくされていた。


タカノの脳裏にあの日の事が思い浮かんだーー


少女はタカノに気がついて、篭った声で助けを求めていた。

タカノはドアを開けて男に向かって突進した。


男はナイフを床に投げ捨て、腰のベルトの挿していた拳銃を取り出して構えようとしたがタカノはそれを警棒で叩き落とした。


拳銃が地面に落ちると同時に男の鳩尾にタカノは蹴りを入れた。男は吹き飛んで少女の真横に仰向けになって倒れ込んだ。


少女が怖がって男から距離をとったーーー

その次の瞬間は、タカノは訓練通りに体が動いていた。


「動くな!」


タカノはそう言って、腰にある拳銃を抜いた。

警棒を持ち替えて両手で男に向けて拳銃を構えた。


男はふてくされた顔をしながらタカノにこう言った。


「なんだよ。邪魔しやがてって....」


タカノはその言葉を聞いて男に近づきこう言った。


「黙れ...」


「はいはい。黙りますよー憲兵さん」


男はそう言って両掌をタカノに見せて抵抗しないことを見せてきたーーー


そして、男はこうぼそっと言った。


「ちっ。せっかく外に出て久々に女とヤれると思ったのに....」


その言葉を聞いて、タカノは男の顔面をを蹴り飛ばし馬乗りになって左手で胸ぐらを掴みながら、眉間に拳銃を突きつけた。


「黙れ....黙れ!黙れ!!」


タカノはそう叫んで、男を睨んだ。

男は何かを思い出したような顔をしてこう言った。


「あの時のガキか....

お前の女だろ?よかったぜ。最後まで苦しそうにもがいて。助けを求めてそうな目をした。たまらなかったなー


女の弟は邪魔だったから。ちょっとストレスの吐口になってもらってさー

あの姉弟には感謝してるよーなーんてな」


タカノはそれを聞いて、

拳銃の引き金に指を置いて絞り始めた。


「殺す....」


タカノが持った拳銃が震えはじめる。

タカノが本気で殺そうとしているのを察してか、男の表情が急に変わった。


「なー殺さないでよ。殺しちゃうとダメだろ?な?」


男の顔がだんだんと恐怖の色に染まっていくのをタカノは見ていたーーー


「シンタロウとイズミの思いを知れ....」


タカノはそう言った瞬間にある自分の中にある理性が働いてきた。

無抵抗で恐怖に怯える人を殺す....


『人を殺す...』


自分の人生を振り返った。

楽しいことも嬉しいこともあった。もちろん辛いことも、

それはこの男も同じではないのかとーーー


震えると手を見ながらタカノは叫んだ。

そして、あの時感じた憤りと悔しさが心を埋めていった。

カチッと引っかかる感覚が引き金をかけた指から感じ取れた。


乾いた発砲音が聞こえて、金属の薬莢が地面に落ちる高い金属音がビルの中に響き渡った。


血飛沫がタカノの顔にかかっていた、少女に悲鳴も聞こえる。

だが、タカノは動けなかったーーー


「キリシマ!」


的場警部補の声が聞こえて、タカノはふと我に帰った。


「俺、殺して....」


タカノは立ち上がると、拳銃をホルスターにしまった...


的場警部補は無線で応援を呼びながら、男が手にしそうになっていたナイフを蹴飛ばして動かなくなった男の手に手錠をかけた。


「お前はのやった行為は正当な行為だろう。お前は、被疑者がナイフを再度手に持とうとしたところを見て、発砲しただけだ」


的場警部補はポンと肩を叩いて耳ものとでこう言った。


「お前は正義のために事を為しただけだ。

その少女は救われてテロを未然に防いだ...」


タカノはそれを聞いて、足元に落ちていた手錠の鍵を見つけて少女の手錠を解いた。そして口に巻かれた布を取った。


少女は泣きながら、ありがとうございますと何度も繰り返してタカノに抱きついてきた。タカノはそれをそっと抱きしめてやっていたーーー


複雑な気持ちだった....

男を殺せた事は自分でもイズミやシンタロウのためになったと感じられるが。


でも、

男の人生がどうだったかはわからないが...

彼をきっと自分はイズミやシンタロウとを思うように大切だと思う人がいるのでは?と感じていた。


「殺しても。帰ってくる事はないか....」


抱きしめる女性がイズミだったらよかったのにとふと感じてタカノはそう口にしていた。


男の恐怖で震える顔が頭から離れなかった。

人を殺した事への罪悪感をタカノは深く感じていたーー


もしもあれが自分だったらなんてことまで考えじ始める恐怖で歪む自分の顔が思い浮かび眉間に風穴が開く。


タカノは首を振って、その浮かんだイメージを消した。


「でも、少女を救った。悪人を殺しただけだ。正義のために....」


そういう思いでタカノは自分に言い聞かせ続けたーー

少女の恐怖からの解放で喜ぶの涙でタカノの制服は濡れていた。

的場「いやーどうもどうも。カメオ出演で出されもらっちゃったよぉー」


ミミ「いえいえ、夫がお世話になっておりますわ」


的場「へーキリシマちゃんの嫁さんか〜綺麗だ人だな。猫耳ついてるけど....

まー俺はSFの世界から来たキャラだからファンタジーは見慣れないだけかな...」


ミミ「そうですかね...?香浜ではどのような生活を?」


的場「ただのしがない香浜の警官さ。よかったら今度、香浜に遊びに来なよ。うちのカミさんも娘も歓迎してくれるさ」


ミミ「そうですね。今度行ってみますわー。

話しに聞く聳え立つ摩天楼の港町に綺麗な夜景....

タカノ様とデートなんてしてみたいですわ〜


それはさておき、

次回、守るべきモノ。タカノ様の活躍に乞うご期待!」

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