汚れた正義-3 奪われた大切なモノ
翌日、
女子高生が本気で吐く声でタカノは目覚めると思ってなかった。
タカノもズキズキしながらホテルの部屋に空になったビールの缶やらティッシュやらお菓子の袋が散乱した部屋の中でふと何があったのか思い出せないでいた。
「俺も吐くからトイレ変わって...」
「は....い....」
ユニットバスの部屋にはボロ雑巾のようにくくたびれ切ったクロサキが便器に抱きついていた。
「頭痛いよー」
そんなことを言っていたので...
同じく二日酔いでダウンしてることがわかった。
タカノはイズミを起こして、洗面台の蛇口を捻ってお湯を出した。
「みっともないからとりあえず、顔洗えよ」
「うん」
そのあとまだ吐き足りないのか、
ゲロをかけられる初体験もついでに経験したのは別の話だ。
タカノも思わずもらいゲロを便器に吐いた....
イズミは親指を立てながら、キツそうな顔をしながらでも少し笑いながらこういった。
「ご褒美でしょ、こんな美少女のゲロは?」
タカノはトイレを流して目を閉じてこういった。
「そんなハードコアな趣味ねーよ」
とりあえず、
落ち着いた二人は再度就寝することに同意してある程度だけ綺麗にして朝を迎えて、
シンタロウに叩き起こされるまで意識を失ったかのように寝ていた....
イズミはけろっとした顔をしていたが、タカノはずっとズキズキ痛む頭を抱えていた....
散々な結果だったけど、ある意味では笑い話になる経験だなと感じていた。
イズミはどこまで覚えているかはわからなかったが....
ふと手が触れ合うと指を絡めあって見つめあっていた。
シンタロウが面白がってクスクスと笑っていたーー
真っ赤な顔をして、
シンタロウを大阪弁で何かを言って“しばいていた”
イズミが大阪出身で普段家では関西弁を使っていることをタカノはこの時に知った...
「なんか、変でしょ?」
イズミは恥ずかしそうな顔をしたが、タカノは首を振ってそれを否定した。
「そんなことないよ...」
「そう、そうなんかな〜。うちそっちがええかなー」
意外なところを知れた所だった....
やっと本当のイズミを見れた気がしていたーーー
でも、
その瞬間は瞬間でしかなかった。
タカノは姉弟と別れて別行動で、家族へのお土産を探していた。
姉弟は二人でどうしても行きたい場所があったらしく残りの時間を買い物と観光で意見の不一致があったのでバラバラで行動することになったーーー
でも、
タカノはそれが生前のイズミとシンタロウを見た瞬間だったとは思いもよらなかった....
タカノは一人で家族に頼まれた特産品の売っている店から宅配便を送ったあと、
待ち合わせの空港に向かう途中でシンタロウからのメッセージと着信があったことに気がついた....
タカノは掛け直すが、
電波でも悪いのか一行にシンタロウは出ることがなかった。
試しにイズミに電話をかける...
すると電話が出たがごそごそという音が聞こえてーー
微かに女性の声で
ーー助けてーー
と聞こえてタカノは何も考えることもなく、イズミの携帯のGPS情報登録していたので読み込ませたーーー
すると、
「倉庫?なんで?」
タカノはとりあえず、タクシーを拾いその場所に向かうことにした。
頭の中でどうなってるのか整理がつかなかったでも、おかしなことになってるのはわかった。
ただタカノは状況を把握するのには時間がかった....
GPSの情報を頼りに人気のない倉庫を探し回ったーー
倉庫街にイズミの悲鳴が響き渡ってきた。タカノはその聞こえた方へ走って向かった。
その場所は小さな倉庫小屋のような所で中には、
小屋を支える柱に手錠で繋がれて怯えるイズミと...
シンタロウに馬乗りになっている大男がいた。
男は手に血のついたナイフを持っていてそれを何度も何度もシンタロウに突き刺していたーー
タカノは何が起こっているの判断がつかなかった。
一瞬動きが止まって、イズミの必死に呼びかける声が聞こえてシンタロウを刺すことに夢中になってる男に向かってタカノは、言葉にならない声を出しながら走っていった....
男はそれに気がついて、ナイフを地面に投げ捨てて
もう片手で持っていた黒い何かをタカノに向けた。
その瞬間に大きな破裂音が聞こえてタカノは地面に倒れ込んだーーー
足が動かない...
痛みがある訳でもない...でも右の太腿を触ると手に真っ赤な血が着いていた。
そして、鈍い痛みが右の太腿から出始めた。
タカノは動こうとしたが...
もう一回破裂音が聞こえて、何が重たい物が背中に当たった。
すると、だんだんと息がしにくくなってきた。
動こうと努力はしたものの痛みと苦しさ...
そしてずんとのしかかってくる重さで身動きが取れなくなっていた。腕で身体を上げようとしたが起き上がれなかった....
恐怖の怯えて震えるイズミが視界の中に入ってくる。
彼女は何か言葉を発していたが、聞き取れなかった。
男は手に持っていた黒い物。拳銃を近くにあった作業台に置いて、ナイフを持ってイズミの方へ近寄って行った。
ナイフをイズミに突き立てる。
彼女は叫ぼうとしたが男は手でそれを塞ぎ、ナイフで服を切って行った。
手錠で繋がれた状態だからイズミは逃げる事も出来なかった。
イズミのこもった声がタカノの耳の中に入っていく。
タカノは、心のかで
『やめろ!』と叫んだ。
呼吸がしにくくなって、それは声には出なかった....
イズミのこもった悲鳴だけが小屋の中で響いていたーー
その時、タカノは男と目が合った。
男はニンマリと笑ってイズミの首筋を舐めてから、
彼女の胸を触っていた。
『それ以上やったら、殺す!』
タカノはそう叫ぼうとしたが、肺に穴が空いて息が出来なくなっていたので声には出なかった。
イズミは涙を流して、タカノに目を合わせていた。
その瞳からは悲痛にも
『助けて!お願い助けて!!』という訴えがタカノには聞こえていたーー
タカノはぼんやりとしていく、意識を保ちきれなくなって目を閉じた。
次に目を開けた時に見えた光景は....
タカノにとって一生忘れる事ができない光景だったーーー
血塗れになってぐったりとするシンタロウがまず目に入る。
昨日まで一緒に楽しく過ごしていた親友が目の前に血塗れになって倒れているのだ。
目を動かしてイズミを向くと
虚な表情を浮かべ頬に一筋の涙が溢れる動かなくなった愛しい少女が手に手錠をつけられて服を破かれて無残な姿で横たわっていた。
タカノは次に気づいた時には病室のベッドで寝ていた所だったのに気がついたーーー
何が起こったのかわからなかったが、
涙を浮かべて心配そうな顔をするタカノの母親とほっと安心している父親がいた。
ーーーーーーーー
タカノは、
心が重たくなりあの時感じたような息苦しさをミミの胸に包まれながら感じた。
「タカノ様...」
ミミはそう優しくタカノを呼んだ。
きっと掛ける言葉が浮かばなかったのだと感じた。
そう辛い思い出を引き出したことによって、
あの時の辛い感情や記憶をタカノは言葉に出してミミに伝えたかったが、何も言えなくなっていた。
「親友は男に何回も刺されて殺された。
愛した人は首を締めながら男に弄ばれて最後に死んんだってのを聞いたんだ...
その時、俺。
何も出来なかったことを後悔したんだ。
動けなかった自分が嫌だった。
街の喧嘩でナイフも鉄パイプも経験して全員殴って倒してたから助けられるって心のどこかで感じてたんだ...
でも、失って....」
タカノは目から涙が溢れ始めた。
ミミは無言で優しくタカノを抱きしめたーーー
「ミミありがとう....」
「今のタカノ様なら、大丈夫ですよ。
神が遣わした勇者なんですから。私をあの使徒から救い出してくれました....」
ミミはそう優しく小さな声で語りかけてくれた。
タカノは目を閉じてこういった。
「今夜はこのまま我がままを聞いて欲しい...」
「大丈夫ですわ」
ミミはそう言って胸に抱き寄せたタカノの頭を優しく撫でた。
イズミ「ちょっと、この回....血糊多く使いすぎちゃうの?おかげでベトベトやん....」
シン「確かにシャワー浴びたい....それにしても姉さん。ゲロインの仲間入りしたじゃん!しかも元彼にぶっかけるなんて...クスクス」
イズミ「いややわ。作者の胸糞な悪趣味が見えてしまって...あ、ゴリラさんさっきのは冗談ですから...ね、あははは」
シン「問題ないらしいよ〜ゴリラも今回のシーン書くのに結構心のダメージを受けたらしいから〜寛大になってる」
イズミ「ふぅーよかった...エミリも然りやけどあのクソゴリラなっちゅーことさせんねん。後でしばきまわすぅ」
シン「あ、それ言ったらダメだよ...」
イズミ「あああああああああ。血糊を頭からぶっかけないでぇぇぇぇ」
シン「あらら、次回は正義と殺し。タカ兄の心の葛藤がメインな感じだ!守る為に人を殺すことに疑問を思うタカ兄は....?」