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娘達と遠足だったんだけど....仕事かよ(涙)



「危ない!!」


彼が生前最後に発した言葉がそれだったのは鮮明に今でも覚えているらしい。



コンクリートの道路の上に、

ピンが抜かれた手榴弾がマラソン大会を見に来ていた群衆の足元にカランカランと音を立ててバウンドして小さな女の子の目の前で地面に止まったんだった。



覆いかぶさりように、ヘッドダイビングを決めた瞬間に宙を舞ったのをよく覚えてる。



そして、死んだーーー



即死とはならなかったらしいが、

転生するまでの記憶はそこまでで途絶えている。




とっさに

座ってた馬車から落ちそうになった、

幼い女の子を片手でキャッチしてふとそんなことを思い返した。



「お父様〜」



そう袖を引っ張る、

もう一人の幼い女の子は何か物欲しそうに口に指を加えていた。


もう一人の幼い女の子は、

目の前に広がる草原を楽しそうに駆け巡っていた。



3人の女の子は顔話そっくりで、

綺麗な金髪に整った顔立ちだがどこかまだまだ幼さが目立つ可愛い顔つきをしている。


主人公の三つ子ちゃんだ。



少し生前の世界と違う点はその娘たちの頭には猫耳のような角が生えている。


半獣人である母親の血を濃く受け継いでいるようだ。

しかしそこはかわいい面だ。


ここは死後の世界ではないらしいが、

この主人公にとっては死後に転生したセカンドライフの舞台だ。



「旦那〜!」



彼を呼ぶ男性の声が耳に入り、

振り返った。


遠くの方で手を振ってる、年老いた小柄の男性が走りながらこちらに近づいていた。

彼は主人公の使用人であるシュンテイという元は盗賊だ。


「てぇーへんだ。

劉堤の両替屋のたたきに入った幻影狐盗賊団の隠れ宿を見つけまし.....


こりゃ、可愛い娘っ子さん達じゃねーか!」


走りながら、少し息を切らせてそう叫んでいる声が聞こえてきた。



「こんにちは!」



そう袖を掴んでた彼の娘リンがニコニコとしながら、声の主に返事を返した。


馬車から落ちそいのなっていた、娘メイもリンの声を聞いて何があったのか気になってソワソワし始めた。




「なんだ、せっかくの家族との休暇もお預けか」



彼はそうため息をつきながら、袖を掴んでいた娘を抱き上げて馬車に乗せて。



「おーい。マオ!こっち!」



「はーい。お父様!!」



草原を駆けていたマオは、楽しそうに走って彼のもとに戻ってきて脚に体当たりをする様にしがみ付いてきた。


マオを持ち上げて、3人並ぶように馬車に乗せてこう言った。



「父の仕事が入った、今日のお出かけはこれまで。


屋敷に帰ったら。シンと一緒に夕御飯の支度を手伝いを....」



「えーそんなー」


ブーブーと頬を膨らませる。リン、メイ、マオの三つ子ちゃんたちは不機嫌そうな顔をしているのを見て彼はこう言った。


「今日のお出かけの埋め合わせと、お手伝い頑張った御褒美に箸箱屋のかりんとうを買ってきてあげるから」



それを聞いた、

次女メイと三女マオは目をキラキラさせてた。

甘いお菓子が大好きな二人には効果的面のようだ。



「メイ!お手伝いする」


「マオも!」



でも、

長女のリンはあまり嬉しそうな顔をしてこない。



彼はそんな彼女の頭を手でポンポンと優しく叩いてこう言った。



「今度はみんなで電影劇見に行こう」



リンは嬉しそうな顔をして頷いた。電影劇という生前の世界でいえば映画に近い物でこの世界で人気の娯楽の一つだ。



三つ子はみんな電影劇は大好きで、年に数回は見に行くようにしている。


一応、料金は一般人だと

年に1回行けるだけでもすごいレベルのことだが...

彼はそれよりははるかに稼いでいるので、問題はないなぜなら



「鬼の義禁大尉と呼ばれて、

悪党どもを震え上がらせる。旦那も娘にはタジタジなんですなぁー」



主人公の仕事は義禁大尉。

この国の都で起こる盗賊団や謀反者を取締る義禁庁に所属する武官。

大尉という肩書は実働部隊を指揮する最前線の位だ。


この世界の華と呼ばれる人口100万人は超える大都市である陽都を守護する存在でもある。



転生してから、なにかと色々あって

手に入れた仕事だ。


本当だったら、

こんなアジアン風のファンタジー世界ではなくて生前の世界で彼の家業を継いでぶいぶい言わせていたはずではあった。



あの手榴弾から大きく人生が変わった....



でも今は、

身近に大切な人達がいる。


元々持っていた夢とは違うが充実した日々を送っていることを彼自身はいいと感じていた。



馬車に乗り込んだ彼は、一路都へ戻ることにした。



「本当は休み欲しかったんだけどな...」



彼はため息をついて、馬車に乗り込み騎手をする遊牧民出身の家臣の少女シュリムに都へ急いで戻ることを告げた。


鞭打つ音が聞こえ馬車が動き始めた時に彼は馬車の中で座り込ん窓の外の景色を覗き込み娘達を見つめていた。

するとリンがくるりと向きを変えて、彼の方を見つめて何かを聞いてきた。



「ねーねー。お父様」



「うん?」



「お父様の昔話を聞かせて欲しいです」



「いいぞ。都までちょっとかかるからちょうどいいな」


リンはそれを聞いてうんうんと頷いて、

彼の横に座る位置を変えた。


リンが動いたので気になったのか、残りの二人も外の景色から父親の方に注目を変えた。



彼は、昔話をするため過去のことを思い出し始めた。


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