汚れた正義-1 恨みと妬み
正義には、
いつも綺麗なことばかりではない、
タカノ自身が初めて人を殺したことを思い出す。
それは大切な人を奪われたことから始まった...
異世界で武官になってからも
「悪人を殺した」と思いこませて自らが苦し見ながら進んでいた。
「義禁である!!都での違法武装及び謀反の疑いで捕縛する!!陛下に歯向かう賊ども神妙に縄につけ!!!」
夜も深くなった陽都の郊外にあるとある貴族屋敷の前にタカノは鎧を身につけ完全武装の15人を引き連れて、都で蔓延る謀反疑いと近年多発している押し込み強盗に関わる組織の捜査を行なっていた。
タカノは高らかとそう叫びながら、
屋敷の門を蹴破った。
今日は、
明日の朝に離宮から宮殿に戻る第2皇女を襲撃し誘拐か殺害を目論む軍閥貴族がいるとの確かな情報と武装した傭兵隊がこの屋敷内に入ったことを義禁の役人が確認していたので完全武装でのガサ入れに来た。
赤い禁軍の旗がなびきながら、
タカノと部隊は入り込んだか。
ウトウトと寝ていたであろう、
貴族の傭兵たちは慌てて叩き起きた。
「ここをどなたの屋敷と思われる!皇族に連なるカンリン公の屋敷を知ってのことか!?」
青いの文官束帯に身を包み胸の部分に鷹をあしらった紋の刺繍がある貴族がそう言って、屋敷の中から飛び出してきた。
大方、
検討は付くがタカノよりも高位にある文官の貴族で今回の謀反と連続強盗事件に関わる人物カンリン公の息子であるウリュであろう思えた。
タカノを見るなり、文官貴族は勝ち誇った顔をしてこう言った。
「誰かと思えば、これはこれはラシュト義禁大尉殿ではありませぬか?副太政官である私、ウリュ・リンカンを捕縛するおつもりか?」
タカノはそれを聞いてこう言った。
「この旗とが目に入らないのか?皇帝陛下の御旗であるぞ!」
「たかが、下手人武官のくせによく大口が叩けるではないか?
物どもこいつらを叩き斬れ!報酬は払う!!」
傭兵たちは武器を手に取って、タカノたちに向けた。タカノはそれをみてこう言った。
「抜剣!!今、こやつらは我ら禁軍へ剣を向けた。賊軍だ。歯向かうものは斬り捨てよ!と言いながらも極力...生け捕りがよかたんだがな〜」
義禁の15人の兵士は剣を抜き盾を構えた。
傭兵に一人がドラを鳴らすと屋敷から30人ほどの完全武装の傭兵が姿を現した。
相手に傭兵の方が明らかに数が多いのはみて取れた....
シンを使いにやって応援の待機してる部隊と緊急クエストで出したのでアルス率いる冒険者仲間も駆けつまで持ち堪えないといけないとタカノは思えた....
「覚悟はできてるな」
タカノはそういうと背中に背負っていた大太刀を抜いた。
「大尉....が人相手に大太刀を抜くってことは....本当に斬り捨てるつもりだ」
部下の人がそう呟いたのをタカノは耳にした。
確かにその通りだ仲間を守る為だ....
もう、失うわけにはいかない。
本当は悪人だからと言って殺すのは気が引けるーー
タカノにとっては過去に憲兵隊にいた頃に初めて人を殺した悪夢がふと蘇る....
手が震えるが...タカノは大きく息を吐いて心を落ち着かせた。
「大切な仲間を守る為だ。相手も殺しにくるーー」
タカノはそう言って大太刀を構えた。
ーーーーーー
「うわ....」
シンはそう、ことが終わった現場を見渡して思わずそう言葉を漏らした。
至る所に血飛沫が飛び散っており、
タカノが斬り捨てた数人が血塗れで疼くなって呻き声を上げていた。
タカノは自ら、血で濡れた縄でウリュ捕縛していた。
ウリュは嫌そうに抵抗しているが、人類最高峰の怪力の前には全く意味を成していないように見えた。
「私が誰だと思ってる。この縄を解け、この異世界の蛮族が...」
「うるさい黙れ...」
タカノは確かに貴族ではあるが、成り上がりが故に快く思っていない既存の貴族というのも多くはない。
宮廷の一部では英雄としての鬼の義禁大尉ではなく、
野蛮で品のない下劣な鬼として思っている人もいる。大体はタカノの出世と改革案によって苦湯を飲まされた古いお家の貴族であることが多い。
「薄汚い獣人の女をハベらかせて...蛮族の王位を名乗るのになんでこいつなんかが...
皇帝陛下の禁軍にいるのだ...」
ウリュはそう言って、
唾をタカノに吹きかけた。
獣人や半獣人の亜人は表向きは差別がないが...
焔帝国では都と西域を除けが根深い差別意識がある。
ついでに中華思想のような焔帝国の多くを占める中原地域の人間以外を蛮族と言ってる考えも根強くある....
つでに異世界人も蛮族扱いだ。
タカノは飛ばされたツバを袖で拭いていると
ウリュは、
大声で笑いながらこう言った。
「信じられるか、偉大な焔帝国の皇家の血を受けるこの私が....
神が遣わした異世界人の勇者とはいえ、
名誉高い禁軍武官でありなが薄汚い半獣人の雌を抱いて、
挙げ句の果てに我が隷下の落ちぶれのラシュト藩の旧王家を名乗ってるホラ吹きに捕まるなんてな〜面白いではないか?」
それを聞いたタカノはウリュを睨みつけて
胸ぐらを掴み、片手で地面に叩きつけた。
『殺す』
タカノがそう思った瞬間から、
魔力の暗い黒色のオーラが漏れで始めた。
それを見ていたシンと義禁の下士官が止めに入る為に急いで寄って行った。
「タカ兄っ!!」
「いけません大尉!!!」
タカノは額をウリュの額に軽くぶつけながら小さな声でこう言った。
「俺のことをいくら言うのは構わないが、ミミとその一族を馬鹿にするのはやめろ....」
タカノはそう言って、拳を上げた腕をシンが全身で抱きつい止めた。義禁の下士官達はタカノに飛びついてウリュから引き離した。
血の気のたったタカノは止めるのに手間がかかるのはシンもタカノの部下もよく知っていた。
キレたタカノは『性欲の猛者』のスキルの影響でバーサク化するからだ、それは鬼と恐れられる由縁の暴れ方をするからだ.....
タカノは下士官達を払い除けならがこう言った。
「問題ない...少し感情が乱れただけだ....」
久々のバーサク化したことにタカノは少しばかり、驚いたが。
感情の乱れ特に怒りや恐怖と言った負の感情がバーサク化を呼び起こすことを長くこのスキルと付き合う中で知っていた。
だから普段から平静を保つように心掛けはしていたようだが....
今回ばかりは、かなり来ていたのだろうと感じられた...
愛する妻のことをああ言われたり、大切な家族からもらったラシュトという家督を愚弄されたのが許されなかった....
タカノは深呼吸して心を落ち着けた....
結果として
ガサ入れは無事に成功し皇女の襲撃を未然に防ぐことに成功した。
傭兵側の結果は、
死者数は2人、重傷者が10名、軽傷者が20名...
逃げたウリュ・リンカンを含めた傭兵隊33名を捕まえた。
禁軍の15名は全員が負傷だが死者はいなかったーーー
傭兵側の死者2名は
タカノが切り捨てた若い兵士だった。一人は勇猛果敢にもタカノに襲い掛かった青年だったが、大太刀に胴一刀両断されて絶命して、
もう一人は恐怖の顔を見せながら、逃げる為に必死に剣を振るってきた10代後半ぐらいの新兵だったのだろう....タカノは無心のままに太刀を首しに突き刺していた。
シンが来た頃には二人に手をかける暇もなく仲間の治療に当たった為に治癒魔法をかけようとした頃には手遅れだった。
タカノは義禁庁の牢に捕らえた傭兵を入れたあとに、屋敷の自室の椅子に座り、ふと今日殺してしまった二人のことを思い出していた。
「悪人を斬ったんだ。仕方がなかった...」
タカノはそう呟きながら頭を抱えていた。
ふと、初めて人を殺した時の事を思い出していた...
震える腕を押さえつけながら、
馬乗りになって拳銃を眉間に突きつけていた。
突きつけていた人は名前こそ覚えてないが...
大切な人達を奪った男だった。
男の恐怖に怯える顔を見ながらタカノは、
怒りと恐怖...色々な感情に染まる感情を押さえつけながら。震えながらも引き金を引いた。
「なんで....思い出すんだよ....
やめろ、もう見たくない」
タカノはそう言って、椅子から立ち上がって近くにあった瓶を壁に投げつけた....
ミミ「シリアス回が始まりましたね〜」
シン「そうだな、タカ兄の辛い過去か〜」
ミミ「大切な人を奪われて、辛い思いをしてって感じな内容でしたわね」
シン「あれ、もう台本読んじゃったの?」
ミミ「ええ、でもこれはあんまりだと思いますわ....ねこうねー」
シン「タカ兄にこっぴどくネタバレしちゃダメだよって言われてるから言わないですね」
ミミ「当たり前ですわ〜。次回、初めて....あの女許しませんわ〜本来ならタカノ様の童....」
シン「はいはい。マイク止めてぇー」