表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛短編集:君に届く歌が歌えない。  作者: 甘宮るい
もうきっと、間に合ったりしない。
11/18

だから今更、君に期待なんてできない。





 恋愛なんて人生の付属品だと、盲目に誰かに救われたいと願っていた私にある元彼は言った。代替え品を探しているクズと自分のことばかりなクズ同士、ソイツとはうまくやれた。

 私はソイツの代替え品にはならなかったけど。


 好きって言われると変なスイッチが入る。自分のどこが好きなのかと1から100まで問い詰めて、嫌いになってほしい。もしも自分が本当に誰かに必要とされる人間だったなら、これまでの人生の冷遇に言い訳がつかなくなる。

 一緒に幸せになりたいなんて台詞を鼻で笑って、ただその気持ちくらいは利用した。

 ただ救われたかった。救われないのを知っていた。どうにもできないのを知っていた。どうにもできないところまで来てしまった。

 きっと根本的解決はこの先の何処にもない。

 せめて最低なヤツとだけ一緒に居た。そのせいで最初のころよりもっと拗れていった。

 きっと初めだったなら、いやせめて2回目とか。もっともっと前に出会っていたら、どうにかなった。

 ならなかったかな。

 人の言葉に良くも悪くも振り回される性格だった。殴られるよりも暴言を吐かれる方がつらかった。体が痛いのは平気だった。心が痛いのはもうだめだった。



 心臓が握りつぶされるような罪の自覚、いつも変わらない君の態度。テーブルに置かれるグラスの音、テレビから流れる恋愛ものの映画の音。

 核心に触れる話はいつもしない。

「明日は1限?」

「うん、そっちは?」

「俺は普通に仕事、だから今日は早めに解散かな」

 時計の針の音。画面に集中する視線。

 無理やりにこっちを向かせたら、どうなるんだろう。クズはクズらしくなれたらよかったのに。

「私、好きな人じゃなくて好きになってくれる人がいいと思うんだよね」

「ん? あぁ、大事にしてもらえるから?」

「ううん、一緒に居てあげるだけであっちは幸せでしょ? もし私が好きでだれかと付き合っても、幸せにしてあげられる自信ないしさぁ、そういう綺麗でかわいい女じゃないし」

「確かに、純粋って感じじゃないかもね」

「酷いなぁ」

「いやいや」

「まぁでもそうだよねー」

 今すぐに記憶を消して、やり直しとか生まれ直しとかそういうのいいからさ。記憶を消して、縋りたかった。いや、もう一瞬でもいいのに。一瞬だけでもいいのに。

 友達同士のこの距離は、絶対に縮まらない。すぐそこの手には絶対触れられない。

 越えちゃいけない、一線。

「拗らせちゃったなぁ~」

 こんな私じゃなかったらなぁ。

「……そのうちいい感じにいくんじゃね?」

 そう言ってる君とは絶対にありえない、よね。

「私といると不幸になるよ~、クズだもん」

「うーん、俺は楽しいけどなあ」

 そんな簡単じゃないんだよ。

「友達じゃん?」

「友達としていいやつだと思うよ」

 あぁ、もうぐちゃぐちゃだ。

「俺これ見終わったら帰るけど、明日はどうする?」

「明日も見ようよ、なんでもいいからさ」

「何か見たい映画ない?」

 映画じゃないよ、私が見てるのはさ。

「適当に探しとく~」

「おう」

 綺麗なうちに、君に会いたかった。

 もう今更、間に合ったりしないの。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ