それはほんとうの、はじまり (第8話)発射音
<5番(本山)アラート!射角に17番です!!>
ダァーン!
人間の耳はいい加減なもので、反響もあってオカモトにはライフルによる発砲だというところまでしかこの瞬間にはわからなかった。
だが、川島ということはないだろう。消去法でほぼ本山のはずだ。
<こちら99番、5番(本山会長)発砲。1発>
よし、そりゃそうだよな。
ダァーン!
<5番(本山)発砲。2発目>
リーゼから報告が入る。やはり、アマチュア無線のときのプッシュトゥトークとは違って音を用いた序状況整理が高度になっていてやりやすい。
無線機に依存した活動だったころ、射撃と射った本人の状況が落ち着くまで報告が入ってこないのは、勢子としては足を止めて物陰に隠れていたくなるあまり嬉しくないシチュエーションだ。
<シカも、外した場合にめり込む地面もばっちり見えてる。でえじょうぶだ。>
<99番了解。17番を動かしてもいいでしょうか>
<おうよ>
<17番、東に来るシカを狙って撃つ場所探してつきます。99番、一旦進行はお願いします!>
<99番了解。17番は南方面に回るみたいね。D4の西側に出てから南にトラバース(※)する見込み。24番(村上)、D4方面は斜線あきらめて!>
※同じ標高を山に沿って動く。
村上は散弾なのでライフルに比べれば到達距離に関わる心配は少ないが、さすがに距離が近く、遮蔽物が多い。念のためオカモト方向への射撃をあらかじめ制しておく。
<24番(村上)わかり・・・ました・・・>
村上は実際に自分が撃つシチュエーションを想像したのか、やや口が重い。ベテランでも緊張する見せ場だ。完全に返事を返せただけで十分だろう。
<24番(村上)、大丈夫よ。外しても誰も怒らないし、安全第一で行きましょう>
<おう、もうオレが一頭は当てた。たぶん捕ったから大丈夫だ。ボウズの心配はないぞ。3頭いた!>
ボウズは猟じゃなくて漁だし、令和の20台に釣りや漁の用語が通じるかどうかは猟ほどではないにしろ怪しいものだが、役割を大きく見せすぎてプレッシャーをかけるよりは肩の荷を下ろそうという配慮は正しいのではないだろうか。
<さすが5番(本山会長)ですな。見とれちまいました。>
当然だが、川島からは見えていない。優しい嘘というやつだ。
<ははは。オレもまだまだ現役よぉ。だが後2頭はゆずってやらあ>
<お見事です。23番(相模)はまだ配置にもつけていませんが。後、もうすこしです>
<聞こえてるか?17番。足止めしろってよう>
<リョウカイッ>
オカモトは声を出している場合ではないようだ。ボタン操作によるマクロ音声で返してきた。
「突っ込み役不在ね・・・。」
猟友会ノリ的な状況だが、水を差しても別にいいことは無いと言いたげに、マイクオフのままでリーゼが独り言ちる。
<お、17番が声も出さない。こりゃあきたか?>
当然、オカモトの音声抑止とボタン操作頼みは他のメンバーに伝わる。
川島はこれを発射&捕獲見込み大と見込んだようだ。
反省会ネタ・・・本山の発砲時に見えていた地形と、シカまでの距離、弾丸のドロップを推計せよ。




