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狩猟。獣と銃と山とヒト  作者: 水底 宇宙
狩猟姫と泣き虫執事
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ピックアップジビエ シカその3 特殊部位と病気の話


「ハンターならではのシカ料理というと」

「だんだん雲行きが怪しくなってくるね。できるだけ注釈を挟みながらにするけれど、この先は安全性に疑問のあるものが出てくるから気を付けてね」

「通だけの知るキケンな奴っぽくなって来たですね!」

「と脅しておきながら、最初は無難な奴から。シカハツのバターソテーはわかりやすくおいしいですよ」

「心臓をつかみだしてフライパンにポンっ!ワイルドです!!」

「いやいや、さすがに解体して即ポンとはいかないですけども。

 でも臭みゼロでおいしいですよ。ちょっと心臓ってどういう素材だか考えてみてください。」

「んー?内臓ですしモツみたいな脂っこくてぷりぷりな歯ごたえなんでしょうか」

「心臓の役目からするとイメージ湧くかもしれないですね。全身に血を送るポンプ。

 すなわち筋肉。引き締まったゴムのような柔軟性!」

「おお。わたし筋肉好きです!」

「それを厚切りにしてバターソテー、食べるときはちょっと薄切りにして岩塩なんかをかけるわけです」

「シンプルで、力強い・・・・!」

「オカモト・・・」

リーゼは盛り上がり二人をよそにジト目である。

「注釈は?」

「え。ああ惟男は失礼しました。でも心臓に寄生虫居たら普通に死ぬんじゃないでしょうか。」

「シカ、フィラリア感染するからね」

「ひぇ。犬の心臓が寄生虫まみれになるあれですね」

「そう。だから犬にも生肉を与えてはいけないし、人間だって生で食べていいものではないのよ」

「うわ、ネットにも人間に感染する例が出てきました、日本で100例もあるんですね」

「たぶんそれはシカから生食、ではなく一般的な媒介者である蚊によるものなんじゃないかと私は思うけれど、用心はした方が良いんじゃないかな。」

「あと、シカだけじゃなくてイノシシも含む狩猟生肉全般に言えることだけれど、E型肝炎は危ないね。ワクチンもないから、とにかく加熱してかかるのを避けるのが大切だよ

「岡本さん生背ロースの話してなかったです?」

「はい・・・師匠に弟子入りするときの入門の儀式替わりとでもいいますか・・・。

 冷凍して死ぬタイプの雑菌は冷凍保存で殺してるという話だったんですが

 加熱しないとダメですからねぇ。

 ちなみに半解凍背ロースはシャリシャリとトロリが相まって、ミョウガとショウガを醤油に添えて食べましたが、絶品でした」

「シカ生食文化のあった島根県のある地域の猟友会員に抗体検査をしてみたら4割が陽性だったという話があって」

「え。4割って大事件じゃないです?」

「発症は会員全体の8%だけだったっていうからかかった人の8割は無自覚に治ったってことになりますね。」

「けれど、免疫の力が落ちていれば、当然発症するし、死んだりもするから、とにかく加熱は大事で、低温調理も、必要温度と時間の計算については入念な確認が必要ね。」


「そうだ、この前シカの睾丸を付けたお酒が精力が付くって聞いたんですけど!」

「スズランさん小学生もいるんだから言い方ァ」

「特定の部位を食べるとそれに応じて元気になるです!」

「は、はい・・・。栄養豊富でいいらしいですね。その分野ではシカの袋角も漢方的に人気があって、まあ、カルシウム豊富そうだし、すりつぶして酒に漬けるのが中国流らしいです」

「お酒なら平気なんでしょうか」

「いえ・・・それが・・・E型肝炎ウイルスは酸・アルコール・洗剤での消毒は難しいんだ。徹底的な加熱が無難じゃないかな」

「あれ、でもそれを考慮すると、以前あたし聞いたんですけど、シカの母乳とか生き血ってやばくないです?」

「普通にやばいですね。しっかり加熱するしかないかなぁ」

「SARSやコロナでブッシュミートというキーワードが話題に上がったけれど、通常の活動圏から出たところには、まだみんなが耐性や対処法を確立していない、道のウイルスも、既知でも対策が追い付かないもの、古すぎて対策が一度終わって途切れたような有害物質が普通に存在するよ。加熱だってもちろん万能じゃなくて、今は話題に上がらなかったけれど、狂牛病ともよばれるBSEのプリオンが骨髄に溜まりやすいという話があって、これはシカの場合鹿慢性消耗病(CWD)やシカ科動物が罹患する伝達性海綿状脳症(TSE)という名で呼ばれる。そして、料理で行うレベルの加熱では分解できないのよ。だから生の脳をすするのなんて論外だし、シカ骨スープも命が惜しければ食べるべきでないものよ。究極的には、潜伏期間が長いから余命一か月くらいになればこれらBSE系列の病気のリスクを恐れず食べられるかもしれないけど異常プリオンタンパク質が主に脳に蓄積し、脳の組織がスポンジ状となり、異常行動、運動失調などの神経症状を示し、最終的には死に至る、なんていうのはあまり積極的にかかりたい内容ではないね。」

島根県のある地域で猟友会員4割が・・・の下りの出典:

島根保環研所報第50号(2008) 野生動物等のE型肝炎ウイルスの保有状況

https://www.pref.shimane.lg.jp/admin/pref/chosa/hokanken/shohou/shohou50.data/11_hosina.pdf

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