それはほんとうの、はじまり (第3話)開始地点
<じゃあ、グレーの台形にTで始まる数字で罠、青いひし形Cと数字でカメラ、黄色い顔が人間と犬。
100番(鷹士)、罠とカメラの報告お願い。>
<はい、現在設置している情報化くくりわなは本日0時からすべてロック解除、踏めば作動します。現時点ではまだかかっていません。
カメラは直近で昨晩25時ごろC15をおそらく南方向に移動するシカ2頭を撮影しました。
他の罠とカメラに反応がないことを考慮すれば図中の潜伏地点に2頭とも残っている可能性が高いと考えています。」
ここ一か月に映った大物はシカのみ、年内だとイノシシとツキノワグマも一日分くらいずつの実績があります。小型ではキツネとタヌキも多少移っています。他ではヤマドリくらいでしょうか。カモシカとかはいないですね。>
<ありがと。じゃあ次に17番、作戦概要と勢子の想定ルートについて説明して。>
<僕は運転中なので手短に。画面は見えていないのであしからず。僕と23番(相模)、エドで北を本タツである5番(本山)へ追い落とすのが第一段階。
勢子は猟犬の速度でもシカに追いつけないのでおそらく折り返されます。それを南側に流して罠と24番(村上)が仕留めるのが第二段階。
潜伏予想地点の真北が手薄なところに勢子とともに移動した23番(相模)を配置して北側も封鎖するのが仕上げの第三段階。
北側含め複数個所からの離脱を防ぐためにドローンに積んでアランを待機させ、シカの進路に合わせて投入します。B1C1D1あたりが濃厚ですが、カメラ次第では本MAPより北からも投入します>
言葉に反して、オカモトは車を止めて解説に集中しているようだ。傍目にはわからないけれど、おそらく目につけたレンズ上の画像に集中している。
<そうね。100番(鷹士)、ドローンの航続距離と猟犬装備の状況は?>
<出発前時点で装備はすべて動きます。強制停止機構も問題ありませんが、本MAPより北までアランを運んだらおそらくドローンは復路の電力を確保できません>
<アラン着陸後の電波中継もダメ?>
<本日の安全稼働時間は30分程度、着地までで35分です。15分で投下した場合中継を行えばドローンは戻せません。>
<17番と23番(相模)に頼むしかないかな?いける?>
近年の電池技術の進歩と低価格化は目覚ましいとはいえ、10キロ弱の犬を積んで飛ぶだけの出力を寒冷期に出すのはかなり厳しい。そのあとの空中待機での電波中継への利用などというのはあきらかに現実的ではなかった。
一方、電波中継自体の消費電力はドローンに比べればごくわずかで、数十分単位のドローンと違って半日は簡単に維持できる。
よって、この場合ドローンに積んだ中継器をある程度見晴らしのいいところで着陸させ、臨時の中継局にしようというアイディアなのだろう。
<僕でもドローンと犬は片方ずつしかいけません。犬の位置次第ではドローンを背負って迎え位に行くのは出来てもドローンの安全というか破損を考えると厳しいです。本来、予備電池だけ持ち歩いて復路は差し替えて飛ばしても解決するのですが、今日の手持ちは全部ドローンに搭載済みです。>
<じゃあ2往復か。100番(鷹士)がリモートだからあきらめて。>
<かしこまりました。>
たかが10㎏とはいえ4つ足の猟犬、下り坂を走ろうとするのを制御するときに銃・ドローン・その他の関連装備を安全に運搬するのは難しいだろう。はっきりいって予備電池を運ぶ方がずっと簡単だ。
とはいえ、電池も数万円。重さも勢子として犬を追い続けることを考えるとそれなりの負担ではあった。何を持ち何を持たないか選択する中でオカモトは電池を持たないことを選んだようだ。
<分担は以上ね。5番会長(本山)、一言お願いします。>
<猟期は始まったばかりだ、油断した奴がでるかもしれんから車を降りたらいつでも撃てるようにしとけ。でも人間や家は撃つんじゃないぞ。矢先を確認してから撃て>
<<<はい>>>
<2番(川島)と5番(本山)も車は位置につきましたね。3分で移動開始、初期配置まで10分を目指してスムーズな展開をお願いします!>




