58. 王女の目覚め
地下室はなんと、草原になっていた。
明るい光がずっと満ちているせいなのだろうか。
そしてあまりにもまぶしい球体が宙に浮いており、その下には白い小さな花々が敷き詰められたように咲いている。
その浮遊する球体は、ルシータが光の神殿で見た光の球体とそっくりだった。
「これは……これが光の王女か?」
レギオンが戸惑ったように言った。
ハラートはうなずき、
「だが誰も、どうやって彼女を目覚めさせればいいのか、知らない」
ルシータは一歩前へ出ると、思い切って言った。
「ライレーン王女様。わたしはルシータです。あなたのお母さまの妹です。
ダーク王は去りました。どうか、お目覚めください――」
すると、目を覆うまぶしさがだんだんと落ち、光の幕の中に眠っているライレーン王女が姿をあらわし始めた。
もう少女にまで成長した王女は、全身を自らの長い髪に覆われて、眠っている。
アルタミラの面影を呈し、だがその髪は天使ソワールを思わせる、光り輝くプラチナ・ブロンドだった。
だが完全に光がおさまり、王女の体が白い花の上に横たわっても王女は目覚めなかった。
安らかな寝息を立てて眠ったままだ。
「どうしよう? どうやったら、彼女は目覚めるのかしら?」
ルシータは、そっと王女の額にキスしてみる。
「だめだわ。ね、レギオンやってみて」
「いや、おれは無理だ」
「何慌ててるのよ。アルタミラ姉さまがそれを望んでるかもしれないじゃない。さあ」
「む……」
観念したレギオンが、やはり王女の額に口付けたが、やはり王女は目覚めない。
ハラートもやってみた。
だめだった――。
「うーむ。肝心の王女が目覚めてくれなければ、どうにもならないな」
レギオンも腕を組んでため息をつく。
「みなさん、わたしを忘れてるわよ」
そのときベルナデットがえへん、と鼻をこすった。
そして意外そうな顔をした三人の真ん中を通ると、王女の瞼に露をひと塗りする。
「お目覚めください、王女様。光の妖精たちが、王女様を待っています」
すると何ということだろう!
ライレーン王女が、ぱっちりと目を開いたのだ。
綺麗なライトグリーンの瞳――森の色の瞳は、ルシータ似だ。
「おおっ!」
三人は声を上げた。
まるで人形のように愛らしい王女は、上半身を花の上に起こし、四人を見つめた。
そしてにっこりと笑うと、鈴を転がしたような声で言った。
「おはよう、みなさん」