50. 愛の夢
部屋に入ったとたん、まばゆい光がレギオンの目を射た。
あまりのまぶしさに、まともに顔を上げられないほどだ。
そんな中で彼は、なぜか自分の心から、ハラートに対するむき出しの敵意がすっと消えていくのを感じていた。
光の中にルシータの顔が浮かぶような気さえし、懐かしさと正義の心が、憎しみに代わって胸を占め始めていた。
(ここはどこだ、この光は――? おれは……おれは、何をしたんだ? おれはハラートを殺そうとしていたのか? ああ、何ということだ)
レギオンはため息をついて、すっかり重くなった兜を脱いだ。
そこからこぼれ出た金髪が光に照らされて輝く。
『――レギオン!』
そのとき、懐かしい声がした。
『レギオン!』
「アルタミラ?! アルタミラか? ――いや、違う。アルタミラであるはずはない、彼女は死んだ」
『レギオン――しっかりするのです。光の戦士、レギオン』
レギオンはうろたえ、頭を抱えた。
「やめてくれ、アルタミラ……もう、君を忘れたい」
「わたしはここにいるわ、レギオン」
その声に振り向くと、そこにはまばゆい光に浮かび上がるように、赤いローブをまとい、ヴェールを頭にかけたアルタミラが立っていた。
彼女の笑顔も、美しさも、昔のままだ。
「アルタミラ、本当に君なのか?」
「――そうよ。そしてあなたは、『金の車輪』。負けてはだめよ」
そうして差し伸べられた彼女の両手を、レギオンはつかんで顔を埋める。
「わたしを許して、レギオン。あなたを愛しているわ。あなたを想わない日は一日もなかったのよ」
「おれもだ。おれも忘れられなかった。愛している、この命、懸けて」
レギオンは顔を上げた。
そしてアルタミラの瞳に真実を見た。
「おれを許してくれるか? 君を捨てて、ブライトキングダムを出た、このおれを」
「……ええ。だから負けないで。闇の力なんかに負けてはだめよ。あなたはもっと強い。光はきっと、取り戻せるわ」
『光の石』はますます強く輝き、あたりを幻想へといざなう。
それに流されまいとするかのごとく、レギオンがふと聞いた。
「なぜ君はここにいるんだ……今、おれの前に? 君は幻か?」
すると、アルタミラはレギオンの手をそっと握り返し、
「そうね、幻かもしれないわ。でもわたしはわたし。
あの遠い日に二人で見た森の木漏れ日のように、わたしは変わらないの。
いつまでも、あなたの中で生きているから」
そう言った。
不思議なことに、レギオンの持っていた剣が再び金色に輝き出していた。
レギオンはそれをしっかりと見、
「おれにとっての光は君だ。
ようやくわかった。一度失った光も、再び輝き出すことができる――。
もう大丈夫だ、アルタミラ。おれは君のために闇と戦う。そして光を取り戻して見せる」
どんどんと、光は増していく。
もう互いの影しか見えない。
「迷わないで」
「迷わない」
「信じて」
「信じよう――きっと」
光は最大限となり、一瞬にして闇に変わった。