26. ブライト村
ルシータたち一行は、行く先々の町や村で歓待を受けた。
もとブライトキングダムの人間とも多く出会い、ついて来たいと言う者も中にはいたが、大半は、自分たちの生活をしながらブライトキングダムの再興を祈り、それが叶った暁には家族ともども光の国へともどり、ライレーン王女を祝福したい、と言うのであった。
「ダークキングダムの攻撃には用心して。彼らはとても非情だと聞いているから」
残念なことに、西、南と回った最後の東の地方では、ダークキングダムの軍勢を恐れた住民が元ブライトキングダムの人間を追い出し、その人たちによる新しい村ができているということだった。
だがその村がどこにあるのかについては誰もが口を閉ざし、ブラツキーが苦心して集めた情報で、やっとその村をつきとめることができた。
新しい村は、深い森の中にひっそりと作られていたのである。
村の名は『ブライト村』といい、セルディンという壮健で意思強固な男が長だった。
「ようこそ、同志よ。雪の中をよくぞ来られた。どうぞ心ゆくまで、ゆっくりご滞在ください」
そうしてひとりの娘を呼び、
「娘のクラウディアです。彼女に案内させましょう」
と言った。
父親は硬い黒髪をしていたが、クラウディアは透き通るような金髪である。
年齢は、十七……ルシータの五歳年下であった。
彼女は、ルシータ、レギオン、ハラート、そしてブラツキーの前に出ると、スカートを軽く持ち上げておじぎをし、
「まずは、長老のところへご案内します。誰よりもあなた方に会いたがっているんです」
そう言って、春の花がほころぶように微笑んだ。
こうして五人は、長老が住んでいるという石造りの聖堂に向かって村を歩いていった。
光の国再興を願う彼らにとって、たとえ小さくとも聖堂を建てることは必要だったとクラウディアは説明し、そこに長老が守り人として住むことになったのだと言った。
「教会の神父様みたいなもんだな」
ブラツキーが顔を赤らめているのは、どうやら寒さのせいではないらしい。
「ええ。長老は、ブライトキングダムのことを村の誰よりもよく記憶しているの。聖堂には一番ふさわしい番人でしょう?」
クラウディアのふわりとした金髪に見とれているブラツキーを見て、ルシータとレギオンは目を合わせて笑った。
外に出ている村人たちが、クラウディアと見知らぬ四人の旅人に気軽に挨拶をする。
即席にできあがった村とはいえ、ブライト村の住人たちは、もう何十年も一緒にいるかのような親しみを持ちあって過ごしているようだった。
「クラウディア……君たちは、君たちを追放した人間を恨んではいないのか?」
唐突にハラートが口を開き、だがクラウディアは振り返ると、
「いいえ」
と答えた。
「私たちは誰も恨んだりしません。私たちはみんな、ブライトキングダムの人間であることを、誇りに思っているのだもの」
ルシータは微笑んだ。
「それを聞いて、とても嬉しいわ。クラウディア、ありがとう」
聖堂は、聖堂というよりは墓のようだった。
重々しい木の扉を開くと、中にひとりの老人が座っていた。
かなり高齢で、人間というより、水晶宮のドワーフのように見える。