25. 雪の中の旅立ち
結局、バールの小屋でも寝泊まり可能なルシータの小屋を建てるのが最後になったが、雪が積もる前に全員新しい住居に移ってくることができた。
もう森は真っ白で、まともには歩けない。
それでも六人は、森での生活を存分に楽しんでいた。
今、みんなはバールの小屋の外にいる。
昨夜の大雪もすっかりおさまり、よく晴れた朝だ。
「雪が反射して、まぶしい」
ベルナデットはすっかりハラートがお気に入りだ。ずっと側から離れない。
レギオンが聞いた。
「先日闇の軍勢に破壊されたリディアバランの町だが――何か情報はないか?」
早耳の異名にふさわしくブラツキーが答える。
「ああ、あそこはもとブライトキングダムの人間が多く潜伏していたようなんだ。バールが封印を解いたことでみんながそれを思い出し、大騒ぎになったらしいぜ」
「そう、か」
眉をひそめ、ルシータが無念そうにつぶやいた。
「それで光の国の復興を願う声が大きくなって、ダーク王に見つかったのね――何てこと」
すると後ろで、バールがヒステリックに声を上げた。
「だからといって、ちょこちょこ封印を解く、というわけにはいかんのじゃ。……しかし、せっかく救った命じゃったのにのう」
ベルナデットが、落ち込んだバールを「よしよし」と慰めだした。
そのとき、ルシータがレギオンを見て言った。
「他にもあるかもしれないわね。そんな町が」
「捜すか?」
「いえ。むしろ、騒ぎが起こらないように忠告しなくちゃと思って。リディアバランの話が伝わってればいいんだけど」
肩をすくめると、レギオンは言った。
「どうせ冬の間は北へはいけないんだ。じっとしてると体がなまる、いっそ町々を巡ってみないか」
「そうね――いいかもしれない。ハラート、あなたは、どう?」
このところ、ハラートはよくぼんやりしている。
さすがに剣を握っているときは研ぎ澄まされたオーラを出しているが、こうやって雑談の場にいるときなどは、ひとりどこか別の世界へでも行ってしまっているようだった。
「あ、ああ……。わたしは君たちについてゆく――どこへなりとも」
バールがうなずき、
「わしも賛成だね。たとえ戦いに参加できなくても、多くの人の気運が高まれば、ダーク王を倒す力にはなるじゃろうて」
一瞬、ハラートが顔を歪め、ルシータにはハラートが苦しんでいるということがわかってしまった。
ダーク王を倒すことを、彼はまだ迷っているのかもしれない――。
ふとレギオンの方を見ると、彼も神妙にハラートを見下ろしている。
おそらくレギオンも、自分と同じように、ハラートの迷いに気づいたのだろう。
ルシータにはレギオンが、まだハラートに対して完全に心を許しているふうには見えなかったが、それでも感情的にならず、まっすぐに闇を討とうとしている姿勢を見なおし始めていた。
けれどハラートがこの調子では、いつレギオンが爆発するかわからない。
小屋を建ててしまって、とりたててすることもない今、二人の気を紛らすためにも旅に出た方がいい。
そういうわけで、彼らはあえて雪の中を旅立つことになった。