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21. 王女を守る光

 ようやくルシータの質問に、ハラートが答え始めた。

 バールも杖を抱えたまま、じっと聞いている。


「アルタミラ王妃が斬られたとき、巨大な光の玉があらわれてライレーン王女を包んだそうだ。

 ダーク王が王女をつかもうと手を伸ばしたが、光の膜に触れると体中に痛みが走り、手を引かざるを得なかった。


 ――それ以来、王女は光の膜に包まれたまま、玉座の下の隠し部屋で眠っている。

 誰も王女を光の膜から出せず、また目覚めさせることもできない。


 この十年、闇の賢人たちが王女を目覚めさせる方法を試みてきたが、みなその強い光に塵となって消えていき、昔十三人いた賢人も、今は四人を残すのみとなっているんだ」


 言いながらハラートの頭の中に、あのギャアギャアというカラスの鳴き声にも似た四賢人の声がよみがえっていた。

 きっと彼らは、黙って消えてしまった闇の戦隊長を責めて、王の側でまたひとしきり騒いだに違いない。



 ハラートの瞳が(かげ)る。

(――そう、自分は黙ってダークキングダムを出てしまった。アリーナにも、何も言わずに)


 アリーナ……ダーク王と前妃の娘であり、誇り高きダークキングダムの王女。

 彼女は、美しく、しなやかで、強い。

 数年前ハラートを、自分の守り役から戦隊長の地位にと、王に強く進言したのはアリーナだった。

 ハラートとて気づいていた。

 いつのころからか、アリーナが自分をただの守り役として以上に慕ってくれていたことを。


(だが、わたしの半身はブライトキングダムにある。

 このペンダントの意味することが明らかにならぬ限り、わたしにはアリーナを幸せにすることができない)


 彼女から薔薇のような微笑をかえされるたび、(とげ)ある侮蔑の言葉を投げられるたび、どれほど心は痛んだことだろう!

 何もかも、ダークキングダムもブライトキングダムも、自分自身さえ、消えてなくなくってしまえばいいと願った夜が、どれほど続いたことか――。



「では、王女様に触れることはできぬのじゃな」

 ほっとしたように、バールが言った。


「王女を目覚めさせる? それが目的なの? 殺すことじゃなく?」


 ハラートは水の色の瞳でルシータを見ると、うなずいた。


「王女が光の力で目覚めると、すべての光の精霊たちの力が完全に復活すると言われている……何より王は、それを恐れているのだ。

 闇の力で王女を目覚めさせたあとは、王女を従え光の精霊を支配する――これがダーク王の目的だから」


(――ああ、ライレーン! 早くあなたを救い出してあげなければ)


 ルシータが祈るようにそう思う横で、レギオンが唸った。

「まさに、闇も光も支配する気だな」

「それも闇のためだけにだろ? そんなことになったら、世界は真っ暗になっちまう」

 口を尖らせたブラツキーが同調するのを嫌そうな視線で見やりながら、以前、北の空の黒雲を見たとき自分も同じことを思ったのを、レギオンは思い出していた。 



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