銀 あかり
「それで、またどうしてここなんだよ」
二人が教室を出て向かった先は、出会った場所であった。
彼女は兎双に屋上の扉を開けさせる。
鍵持ってること話すんじゃなかったと、早速後悔した。
「高校生のお昼と言えば、屋上だと聞いたけど?」
「どこの幻想世界だよ。というか、普通に屋上立ち入り禁止になってるから」
彼女は適当な場所にハンカチを敷くと、その上へと座る。
そして隣へ座るように手招きする。
兎双は諦めたように、大人しく腰を降ろした。
多少変わってはいるが、こんな可愛い子と並べてお昼を食べれるなら兎双も男子だ。
嬉しくないわけではない。
「先輩、私。サンドイッチ作って来たんです。食べてください」
「いや、俺。自分のお昼あるんだけど……」
手に持っている菓子パンを見せた途端、それをひったくられる。
「先輩も女の子の手料理の方が嬉しいですよね?」
「何その押し付け願望。まぁ、何でもいいけどよ」
「流石、先輩。扱いやすいですね」
「おう、後輩。今なんて言った」
彼女は自分の弁当箱を開け、その中にあるものを取り出す。
色鮮やかな野菜が綺麗に挟まれたサンドイッチだ。
「はい、あーん」
「何でだよ。普通に自分で食うよ」
「デュオを組むなら、お互いのこと知っておいた方がいいと思いませんか?」
「俺はお前の名前すら知らん」
「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。これはうっかり」
全然うっかりしたという表情には見えない。
「銀です。銀 あかり」
「しろがねって珍しい苗字だな」
「私にピッタリですよね」
「自分で言うのか……」