とりあえずこれで
話してるだけで、頭が痛くなってきた……。
「あー、それで。なんだ。世界チャンプと戦ってみたいかだって? 面白い冗談だがどうする気だよ」
適当に話を合わせて帰ろう、そう考え話題を進めることを選択する。
「あぁ、そうでした。その話でした。先輩って反応がいいからイジりたくなりますよね」
「後輩が堂々と先輩イジるって宣言してんじゃねーよ」
「それでなんですか、デュオに出ませんか?」
ツッコミは華麗にスルーされたが、話が進むので兎双は何も言わない。
「断る」
「即答ですか」
「見ず知らずの人間と組めるか」
「それはお互い、これから知っていけばいいといいますか」
「とにかく断る。悪いな」
そう言って荷物を持ち上げ、足早に屋上を後にしようとする。
「理由は本当にそれだけですか?」
その言葉に兎双の足は扉の前で止まる。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味ですよ。私と組めない理由は本当に知らないってだけなのかなって」
一度大きく息を吸い、兎双は振り返る。
「それだけだよ」
それだけ言い残し、彼は屋上から姿を消した。
「……嘘っぽい笑顔」
一人残された白銀の妖精は、空を見上げる。
「貴方はきっと、戻ってきます。貴方はこんなところで朽ちるべき人間ではないんですよ。兎双先輩」
彼女の言葉は誰にも聞こえず、ただ霧散するだけだった。