タイミング
「スペル、ターゲットオン」
兎双がスペルを発動する。
ターゲットオン。攻撃が命中した際にダメージを増加させる単純なスペルだ。
効果時間は60秒。ある程度余裕がある分、効果は薄い。
相手はナイフと弓を使い分けて銀と渡り合っている。
パッシブスペルのダブルウェポンを加えているのだろう。
AIならばこのような戦い方は難しいだろう。
この二人、デュオは初めてだと言っていたがもしそれが本当ならば天才だ。
「スペルディスピアっす!」
スペルの発動と同時に、ライアーラビットの目の前で相手の妖精が姿が消える。
認識阻害だ。
兎双は二択を迫られる。引くか、攻めるか。
駆け引きを間違えば、また手痛い攻撃を受ける事になる。
判断が遅れるが、それより先に銀が直感で大きく退いた。
「流石は銀色。勘だけは凄まじいわね」
ディスピアの効果時間は短い。
相手はナイフを構えてまま、待ち受けていた。
「勘以外もすごいわよ」
兎双は息を吐く。
こちらが勝つ手段はあるにはある。
だが、一回だけ。
バレてしまえば、勝利は大きく遠のく。
確実なタイミングが必要だ。
「銀」
「分かりました」
名前を呼んだだけで、理解する。
銀は妖精使いとしても優秀だ。
おそらく兎双の考えは言わずとも理解しているのだろう。