サプライザル
「銀、遮蔽物の多い場所へ」
「了解」
銀は近くの路地裏へと逃げ込み、相手の射線を切る。
弓矢の射程は武器次第だが、こちらが近づいて来てから射たことを見るとそこまで長いとも思えない。
予想通り裏路地に入ると矢の攻撃が止む。
「とはいえ、相手に時間を与えるのもまずいか……」
「スペル、サプライザル」
「銀飛べ!」
兎双の指示が一瞬遅れると同時に、ライアーラビットの背後から相手の妖精が姿を現す。
そのまま、ライアーラビットに深々とナイフが突き刺さる。
「ぐっ……」
ライフバーは6割ほど減った。
おそらく、スリップダメージが発生するスペルも発動済みかもしれないが運は兎双たちを味方した。
「軌道分身なんていつ置いたんだよ……」
スペル、軌道分身。
簡単に言えば設置攻撃であり、自分が行った行動をそっくり10秒後に発動するスペルだ。
だが、このスペルは扱うのが難しい。
単純な話だが相手が思い通りに動いてくれるわけがないから。
「髪色に似合わず、とんだ策士だな」
「ハハ、それ褒められてるんっすか?」
相手のスタイルは軽戦士よりさらに速く動く、アサシンタイプ。
しかも弓とナイフのダブルウェポンだ。
「どんなステ振りしてんだか……」
銀はすぐに迎撃し、凄まじい攻防を繰り広げる。
おそらく防御力は皆無に等しい。
一撃当てられれば、一気に勝負を持って行くのはこっちのはずだ。