お久しぶり
銀邸から少しを足を延ばしたところに、兎双の住む街で一番大きなゲームセンターがあった。
拡張現実技術が普及する前、ゲームセンターは衰退の一途を辿っていた。
スマートフォンの普及。オンライン環境の充実。
原因は時代による進化だったがそれが息を吹き返したのは、Desireの存在がやはり大きかった。
仮想領域生成システム。
領域生成自体は本来は都市開発などに用いられる技術だったのだが、それを流用したものだ。
シャーロット・エイヴリルが戦っていたあの巨大な街のように、通常街中では行えないような場所でのプレイを可能にした。
「あ、兎双君じゃない。やだ久しぶり。2年振りぐらいだっけ?」
「まだここで働いてたんですね。美亜さん」
兎双が店に入って早々、声をかけて来たのは佐藤 美亜という女性だった。
彼女と最後に会ったのが、兎双が高校に入学する前だった。
そのころは、彼女は大学の四年生だったはずだ。
「就活がねー。厳しくてねー……。こっちで正社員雇用してくれるっていう話もあるんだけど……」
どうにもこの手の話は彼女のネガティブスイッチを入れてしまうらしい。
どんどん声が小さくなっていき、目が虚ろになっていく。
「そ、それより。ちょっと、デザイアのタッグで遊びたいんですけどお願いできますか」
周りの視線が痛くなってきたので、兎双はさっさと話題を変えることにした。
「あぁ。うん、りょうかーい。じゃあ、先にスペースに行ってて」