ゲーセン
「それにしても君が、あーちゃんが言ってた兎双君ね。結構いい男の子じゃない」
「お母さん、その先輩の前であーちゃんは恥ずかしいです」
この二人のやり取りに、兎双はどことなく懐かしさを感じていた。
彼の両親は幼いころに既に亡くなっている。
「先輩、どうしました?」
「あ、いや何でもないよ。それに確認終わったならもう帰っていいか?」
「連れないこと言わないで。せっかくだし、ゲーセンまで遊びに行きません? 先輩はもっと対戦して注目度を高めないと」
なぜ、そんなことをする必要があるのかさっぱり分からない。
だが、兎双にとっても銀に取っても初めてのことは多い。ならば対戦して慣らしていくのも重要になってくる。
「分かった、どうせ今日は一日開けてあるしな」
「わーい。先輩とデートですね」
「何がデートだ。ほらさっさと行くぞ」
「はーい。あ、ちょっと準備していくんで先に行っててください」
女性の準備というのは長いものだと、叔母から聞いていたので兎双は何も言わずに先に近くのゲームセンターへ赴こうと、銀家の扉を開けた。
「ねぇ、兎双君」
「何ですか?」
「その、あーちゃんのこと。強引なところはあるけど、悪い子ではないから」
「分かってますよ。俺は少しぐらい強引な方が好きですしね」
母親はその返答に軽く微笑む。
「それじゃあ。お邪魔しました」
「えぇ、また来てね」