姉?
「気分はどうだ?」
「そうですね、こう。動きたいときについ身体も一緒に動きそうになるのだけは何ともなりませんね」
デュオをやるうえで最も注意するべきだがことだが、五感を奪われるということではないということだ。
リンドヴルムにはある程度、思考を読み取る技術も用いられている。
だが、それも完璧ではない。
コントロールを誤れば、自分の身体も一緒に動いてしまう。
なのでデュオの公式の大会や、ゲームセンターなのでは安全で遊べるようにそれ専用の設備まであるぐらいだ。
「ふふ、どうです。私可愛いですか?」
兎双の目の前でライアーラビットが華麗に回転して見せる。
「いや、AIのままの方が表情豊かだったな」
中身が銀なのか、妖精の表情はずっと仏頂面のままだ。
「私の表情筋が硬いせいでしょうか」
自分でも自覚はあったのか。
彼女が妖精としての身体を確認していると、兎双の後ろで扉が開く。
「こんにちは~」
「あ、どうも。こんにちは」
入って来たのは、銀よりも少し年上に見える女性だった。
「えっと、あかりさんのお姉さんですか?」
「あらやだ。そんなに若く見える?」
どこからどう見ても、歳が少し離れた姉にしか兎双には見えない。
「あ、お母さん」
「……若いっすね」
「あらやだ、ありがと。普段からお肌には気を使ってるのよ」