小市民根性
「でっけー……」
あの日から、数日後の休日。
兎双は相棒に早速呼び出されていた。
指定の場所は高級住宅街。
兎双には縁がない場所だったので、少しばかり緊張で身体が固くなっている。
「一応、手土産とか持ってきたけど大丈夫かな」
紙袋には最近話題の洋菓子店のケーキが入っていた。
だが、兎双には不釣り合いなぐらい。というよりは屋敷と表現するのがいいほどに目の前の家は大きかった。
「深窓の令嬢とか住んでそうだな……」
勿論そんなものは住んでおらず、いるのは来たばかりの学校でピッキングで不法侵入をかます女性なのだが。
震える手でインターホンを鳴らすと、向こう側から間延びした返事が聞こえる。
「あ、すみません。あかりさんの友人の兎双と申します」
「あ、はーい。あかりお友達ね。中に入ってちょうだい」
そう言って、目の前の門がゆっくりと開いていく。
「(うおおおおお。超怖い)」
凄まじい場違いを感じながらも、兎双はバロック様式の扉を叩く。
「あ、せんぱーい。遅かったですね」
「遅かったですね、じゃねーよ。休日にいきなり呼び出したうえに、こんなところとか。俺の小市民根性が限界突破寸前だったわ」
「まぁまぁ。文句は後で聞きますから、上がってください」