開幕
兎双の妖精が真っすぐに鎧へと飛び掛かる。
鎧とダガーぶつかり合い、火花が散る。
それと同時に僅かだが、銀の妖精のヒットポイントバーが減少する。
あの程度の攻撃ならば、盾で受けるのはわけはないはずだ。
AIは妖精使いの戦い方やクセから学習する。
つまり、これが普段の彼女の戦い方ということになる。
兎双の頭の中には、彼女の戦術に合わせたスペルが何枚か思い浮かんだ。
自身のヒットポイントが少ないほどに効力が高まるスペル。
言うならば、こちらを削りに使っているのだろう。
「スペル、ポイズンダガー」
開始30秒。初めてスペルが発動される。
毒々しいエフェクトが短剣を覆う。
スペル名はポイズンダガー。自身の攻撃で相手にダメージを与えた際に2%の確率で1分の間スリップダメージを発生させる。
手数で押す兎双の妖精とは相性のいいスペルだ。
兎双の作戦に変更はない。相手のスペルが発動される前に倒す。
鎧を何度も傷つけているうちに、銀の妖精の横に状態異常のマークが表示される。
ちらりと銀の顔を見るが、焦っている様子は見えない。
ここまでは慣れていると言った感じだろう。
「スペル、リチャージ」
兎双はどことなく嫌な予感を感じ取り、新たなスペルを発動させる。
リチャージ。一定時間能力値が減少するがその間他のスペルのクールタイムが短くなる。
このスペルがデッキに組み込まれているとは、銀も思っていなかったらしい。
「先輩の妖精さんにしては珍しいスペルですね」
「そうでもないよ」