表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

4-逃走

ーーー走る、走る。とにかく走る。

息が切れても走る。

何かにつまづいても走り続ける。

なにせ、後ろのあいつに視認されたら死ぬから。



「ーーーハッ、ハッ……ハッ」



呼吸が乱れる。走り方がめちゃくちゃになる。

でも、そんなものには構ってられない。

後ろを見る暇さえない。

しかし、幸いなことに人が多く、あいつはうまく俺を狙えていない。

そのおかげで俺はまだ生きている。



「ハッ、ハッ、ーーーッッ!!」



突然、俺の頬を擦り、矢が前の人に突き刺さる。

ついに、ついに撃ってくれたか!!

俺は、この時を待っていたんだ!



『キャアアアァァァァ!!』



街中で弓を撃った事により、騒ぎになる。

いくらファンタジーといえども人を殺されて平気な訳が無いだろう。

こうなれば俺の勝ちだ。

騒ぎになれば市民はそこから逃げ出そうとする。

それも、この多人数だ。

ただでさえ人が多くて狙いにくかった的が、騒ぎになりごちゃごちゃすると余計狙いにくくなる。

それが俺の苦し紛れの作戦。


だが、もしも最初の一発で致命傷になったら、俺は終わっていた。

それと市民の人にも悪い事をした。

けれど、もう騒ぎは起こってしまったので、後は俺が逃げるだけ……なの……だが……。

な……んだ……これ、からだ……がうまく……。


その場に転ぶ俺。

色んな人に踏まれるが、今は気にしてる場合じゃない。

体がだるくて痺れる。

いきなりこんな事が起こるはずがない。

となると、さっき矢で頬を擦った時に何かをされてしまったのだろうか。

気だるい体で鑑定を発動。



………ああ、やっぱり。

状態が、麻痺、睡眠、沈黙、能力低下になってる。

さすがは選ばれた者……。

俺と違ってチートだ。


だが、俺もやすやすと殺られる訳にはいかない。

最後の力を振り絞って『魔物』を発動。

スライムとなる。

気分が変になるが、気にしてられない。


そして、スライムのまま逃げ出す人々の足の間を抜け、近くの民家に入る。

幸いすぐ近くにベッドがあった。

そして、ベッドの下に潜り込む。


これで、元の姿に戻っても、スペース的に体が壊れるという事態は免れる事ができる。

あとはあいつに見つからないよう祈るだけだ。

逃げ惑う人々に紛れて逃げたのだが、もしも見られていたらお終いだ。

しかし、祈る間もなく俺の意識は眠りに落ちた。



………。




……………う、む…

………うん?

目が覚める。

場所を確認すると、俺はスライムの姿のままベッドの下にいた。

どうやら無事だったようだ。

それにしても、スライムの姿のまま寝れるなんて、予想外だった。

これなら狭いところでも寝れるな。


と、そこで思い出す。寝る前の事を。

あの後どうなったのだろうか。あいつは?もう諦めたのか?外はもう静かだが……。

そう思い、人に戻って外へ出る。


やはり、既に騒動はおさまっていて人はいなかった

しかしーーー


「……ーーーうっ!」



俺はそこにあるものを見て口を押さえる。

さっきの表現は少し違った。

確かに人はいないが、あいつに射たれたであろう死体がそこには大量にあった。

ーーーそして、その事態を作った張本人。山吹 沙織の死体もあった。


吐き気はしない。

いつかこれを見る時がくるだろうと覚悟はしていたから、激しく揺すぶられる事はない。

だけど嫌だ。

死体を見るなんて初めてだし、ましてやそれがクラスメイトのものだなんて。


口を押さえながら山吹 沙織だったものを見る。

右肩から胸の中心へ切り口がある。

うちのクラスに左効きはいなかったから、恐らくは油断したところを背後から殺られたのだろう。

山吹が持っていた弓が無いことから、クラスの誰かが殺した事が分かる。

武器二つは厄介だ。


ともかく、俺はここから離れた方が良いだろう。

山吹を殺した奴が近くにいる可能性だってある。

街は危険だって事がこれで分かった。

むやみやたらに入らないようにしておこう。

シリアスで死ぬってこれで分かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ