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話の流れは大体主人公で決まる。  作者: 櫻井 千桜
1章 物語の始まりは大体場所で決まる。
8/69

8. 話の感覚は大体主人公で決まる。

日を開けずして投稿できました!やりました。

そんなことはさて置き、今回、ファンタジーにはお約束の戦闘シーンをお送りします。さて、決着は付くのでしょうか...?

 草原に吹き荒れる風。日が沈みかけ、草はその光を浴びてオレンジや赤に染まる。


俺は何も言えず、立ち尽くすのみ。


俺の目の前にいる一人と一頭は、それはそれはファンタジー小説さながらな殺気を放っていた。



こいつら、本当に仲間なのかと疑いたくなるような光景である。俺が近づいた瞬間、巻き沿い食らって俺の人生即フェードアウトだからな。

しょうがないから、ぬるくなったオレンジジュースを飲みながら、傍で胡坐書いて観戦することにする。


ここでの戦闘は、昔の武将よろしく名乗りを挙げてから一騎打ちらしい。


「俺は戦いに人生を賭ける男、グラディール・サイフォン!別名〈戦闘の鬼〉。ドラゴンとの語りは、やっぱどー考えても拳以外に考えられねー。今日こそ、お前との決着、付けさせてもらうぜ?コーランディア。」



『この世の全ての水を守護する竜、コンテラントウェアーラナトスクウィンディランティア。別名<水竜のコーランディア>。そこな戦闘狂を消す存在にして、今後、リチを生涯守護することを誓う者。こちらこそ、私たちの前から消してさしあげます、グラン。覚悟なさい!』


グア――――――――!っとコーランディアの雄叫びが大地を轟かせる。


俺は、蓋を開けたままだったオレンジジュースが零れないようにしっかりと抱きかかえる。マジでビビった。地震並みの揺れだったぞ、今の。




...俺、確実外野だな、所謂蚊帳の外ってやつだ、これ。...一応主人公なんだけどな...。


「食らえ!!必殺《豪雨よりも虹をみたいver.8(トーレンシャルレインオールザフリーアンドクリエイティブアクアラインレインボーアタックバージョンエイト)≫」


おい、ちょっと待て!?ルビが迷子になってるぞグラン!?しかも技名ダッサ!!




...さっきから薄々思ってはいたんだが、コーランディアの略し方と言い、必殺技の名前と言い、もしかしてこいつ、ネーミングセンス皆無なのか、そうなのか?探偵みたく推理ができる男ではないが、ほぼ核心突いてると思うぞ、今の俺。


だが、名前の割にはスゲー綺麗な技だな。澄んだ水が竜巻みたく天高く伸び、グランの大剣の動きに合わせてコーランディアへと襲い掛かる。しかし、そこは腐っても水竜、此方もグランに引けを取らぬ華麗な水球で、水の竜巻を粉砕する。雨粒のようにキラキラと輝きながら降る雫の影響でできた大きな虹が、俺たちを神秘的に包み込む。



『フッ、そのような技、必殺技と呼ぶには、まだまだ弱すぎますし、命中率に欠けます。こんなちゃちな技でこの私が負けるはずありません。リチ、見ていて下さいね?一撃で終わらせますから。』


「どーでもいいけど、取り敢えず俺のオレンジジュースがなくなりそうだから、手短に済ませて早く町に行こう。俺、本気でお腹空いてぶっ倒れそうだから。」


「本当にお前って自分主義だよな、クリ。」


大剣を右肩に担ぎ、あきれ顔を浮かべるグランに物申すようだが、さっきから俺の腹は自己主張激しすぎて、正直スゲー困ってんだよ。今まで生きてきて、こんなに煩い大合唱は初めて聞いたぜ。


作詞作曲俺、歌俺の腹、曲タイトル【腹が減ってマジヤバい】ってか。そんな歌、誰得だよ。


『私得ですね!』


勝手に人の心を読むんじゃありません、コーランディア。この世界にはプライバシーの尊重という言葉は存在せんのか。全く、けしからん世界だな。


「まぁ、クリも腹減ってることだし、そろそろマジで日が落ちてきたみてーだ。おい、一時休戦にして王都に行くぞ、コーランディア。」


『仕方ありませんね、リチが倒れてしまっては元も子もありませんから。分かりました。リチ、私の背に乗って下さい。』


また俺置いて勝手に話が進んでるんですけど。何これ、新種のいじめ?俺、ちょっとやさぐれても良いですか良いですよね。


「おい、何ボーっとしてんだよ。さっさと乗れ。」


体育座りで地面に逆のの字を書いていた俺の襟首をグランが軽々と持ち上げ、コーランディアの背へと吹っ飛ばす。


コーランディアの背に当たった瞬間、グェとかいう潰れた蛙みたいな声を出してしまったが、その原因は絶対にグランだ。


「さーて、王都へ向けて、いざ出発!」


「クリ、お前がそれ言うなよ。」


何だ、グラン。こーいうものは主人公である俺の仕事だろ?何でまだあきれ顔がフェア展開中なんだ?


...訳分からん。


かくして、俺たちを乗せたコーランディアは、王都を目指して翼を大きく羽ばたかせたのでした。






「そうですか、グランが異世界からの少年を連れて此処を訪れると...。分かりました。その少年を私の息子として保護した方が、後々楽でしょう。すぐにその用意を。」


傍に控えていた従者を下がらせ、男は窓へと近づく。

夕日に照らされたロングストレートの銀髪がサラサラと風に揺れる。一瞬女性と見紛う中性的な顔をした

この男が、後にリチの人生を大きく変える存在となろうとは、コーランディアの背で寒さに震えるリチに、知る由もなかったのである。


ようやく大草原エリアからの脱出に成功したリチ。おめでとう!自分もいい加減、魔王城前の大草原の描写に疲れていましたから、これで一安心です。

次回の『話の流れは大体主人公で決まる。』略して〈話主(ハナシュと読んで下さい)〉は、謎の美青年現る!です。お楽しみに!

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