6. 話の変更内容は大体主人公で決まる。
日が開いてしまいました。すみません。前回のあらすじを一言で言うと「ドラゴン現る」です。簡潔に纏めるとスッキリしますね。ではでは、お楽しみください。
ドラゴンだよ、ドラゴン。
夢見る少年少女の憧れ、絶対的な強さの象徴であり、長寿で賢いという設定が鉄板なんだ。...こんなとこでドラゴンに御目にかかれるとは思ってもみなかったぜ。
流石異世界❗マジでここに来て良かった。想像を裏切らないでかさだな、凄い。
「おーい、コンテラントウェアーラナトスクウィンディランティア!何時までも遊んでないで、さっさと降りて来いよ!」
名前長すぎないか!?今、グランが何て言ったのか、理解できなかった。俺が頭上に?マークを浮かべていると、グランが俺の方を向き、こう言った。
「あぁ、あいつのことは、コーランディアって呼んでやってくれ。」
「どーいう略し方したらそーなるんだよ!?」
ははは、と乾いた笑いを浮かべるグランの横に、ゆっくりと降り立つコンテラント(以下略)もといコーランディア。
ヤバい、感動しすぎて泣けてきた。かっこよすぎでしょ、コーランディア。
青い艶やかな鱗が太陽の光に照らされて、まるで深海のような美しさを強調させる。金色の瞳は細められ、俺を値踏みするように見つめる。左目の瞼に大きく縦に刻まれた傷跡は、痛々しくも感じられるが、同時に、戦いを制したものの強さを表しているようにも思える。大きな翼を大地に伏せ、前足をクロスさせている様は、さながら、強者の威厳を醸し出しているようだ。
「王者の風格だな。まるで、王様みたいだ。」
俺は独り言のように呟く。そして、コーランディアにゆっくりと近づいていく。コーランディアは俺から目を逸らさず、じっと俺だけを見ている。
俺は、コーランディアの前まで進むと立ち止まった。無意識に手を伸ばし、コーランディアの鼻の上の鱗にそっと触れる。すべすべで、冷たい。この感触も想像通りだ。
『私が、怖くないのですか?』
突如、美しい声が聞こえたような気がした。俺は慌てて鱗から手を放し、辺りを見回す。
しかし、俺とグラン以外には、人はいない。こんな綺麗なソプラノの声を、俺やグランが出せるはずない。俺はゆっくりとコーランディアの方を見る。その間、グランは俺の一連の動作を興味深そうに見ていた。
「今の声はお前なのか、コーランディア?」
俺は再びコーランディアの鱗に触れた。疑問形で聞いたが、確信はあった。
『そうです、異世界からの使者よ。我が名はコンテラントウェアーラナトスクウィンディランティア。水を守護する竜族のものです。以後、お見知りおきを。』
「あぁ、俺はリチ・ホノセだ、よろしくな。...なあ、つかぬ事を聞くようだが、お前の声が聞こえるのは、もしかしなくとも俺だけか?」
『正確には、あなたの頭に直接言葉を送っている、と言ったようなものです。このような行為が可能なのは、異世界からの使者だけなのです。』
所謂トリップ特典ってやつか。転生特典でチートになる話はよく聞くが、トリップ特典は珍しいな。ってことは、このトリップ特典によって、過去の勇者達もドラゴンと会話できてたってことになる。だから、コーランディアの声が俺に届いた=俺が異世界から来た人間って分かった訳か。
『それで、先ほどの質問なのですが...』
「あぁ、お前が怖いかって話だろ?別に、怖いとか俺、思わねーよ。逆にかっこよすぎて羨ましい、とか感動したりはしたけどな。」
俺は穏やかに微笑み、コーランディアの鱗を撫でた。
『そのようなこと、初めて言われました。私を見た者は、皆ひどく怯えたようになります。...まぁ、グランの場合は、いきなり切り掛かってきましたが。...感動されたのは嬉しいのですが、私は、性別的に女なので、あまりかっこいいと言わないでください。少し、嫌でした。』
そう言ったコーランディアの顔は、少しだけ、不満そうに見えた。何だかそれは俺にとって、凄く新鮮で、ドラゴンにも感情があることを知れて良かったと思ってる自分に気づいた。
俺は、無邪気に笑って言った。
「じゃあ、訂正。コーランディアは、俺が出会った奴の中で、断トツの美人だよ。...スゲー、綺麗だ。」
あれ、でもコーランディアはドラゴンだから、美人って言うよりも美竜って言った方が正しいのか?でも、それだと今までドラゴンに会ったことないから、俺、結構無神経なこと言ったんじゃあ...?
『嬉しいです。ありがとう、リチ。私は、あなたを歓迎します。この先、何が起ころうとも私だけは、あなたの味方であることを、ここに誓います。』
あ、凄く喜んでる。目がさっきよりもかなり穏やかになって、雰囲気も心なしか明るい。あれで良かった...のか?そして、何故か会話が若干重い気が...。
「何、今までコーランディアがこんな柔らかく笑ったの、俺見たことないんだけど。クリ、お前凄いな。コーランディアは、スゲーガード硬くてよ、俺なんか仲間にすんのに3年かかったんだからな。」
今まで傍観を決め込んでたグランが感心したように言った。...ってか、3年って長いな。
「それって、お前がいきなりコーランディアに切り掛かったのが悪いんだろ?」
俺は呆れながら言った。するとグランはきょとんとした。
「何でお前がんな事知ってんだよ?確かに俺は、こいつに切り掛かって、目に傷を付けちまったけどよ。」
「この瞼の傷の元凶はお前かよ!?...なぁグラン、コーランディアは女の子なんだからさ、もっと優しく接してやれよ。」
『リチ...』
不安そうなオーラを放つコーランディア。俺は安心させるように、ゆっくりとコーランディアの傷のある瞼を撫でる。
「女?コーランディアが?嘘だろ?」
何言ってんだこいつ、やっぱ頭大丈夫なのか?みたく本気で思ってるような顔してんじゃねーよ。
「本人が言ってんだ、正しいに決まってんだろ。」
「マジか...。俺、知らないまま、こいつに接してたからな...。悪かった、コーランディア。許してくれ。」
おぉ、綺麗な土下座。この世界にも土下座文化はあるんだな。
...って、もしかしなくとも、俺のいた世界から来た奴が勇者だった場合、スライディング土下座とかジャンピング土下座も存在するのか...?
『全く、本当ですよ。この傷のせいで私、嫁の貰い手に困ってるんですからね?』
...ドラゴンにも、嫁の貰い手とかっていう概念があるもんなんだな。
異世界と言えばドラゴン!という考えの強い自分ですが、読者さんはいかがですか?...まあ、今回は、ドラゴン大活躍回というよりは、リチの特殊能力(?)発覚回と、リチの天然タラシ炸裂回でした。少し内容を変更したので、サブタイトルも、そのようにしました。
この作品を書き始めて日が浅いにも関わらず、もうブクマが3件に!感謝感激雨あられです!!ありがとうございます。これからも引き続き、白もやしこと、リチをよろしくお願いします。