2. 話の進み具合は大体主人公で決まる。
主人公は「白もやし」です。本名は保之瀬 栗です。本編では、まだ、自己紹介していませんので、ここで紹介します。(何せ、まだ草原でボッチですからね、主人公は。)
嫌いなものについての考えを消し、足元の草を見る。
おぉ、どうやらこいつは俺の苦手な、あの細長い緑色の植物とは違うようだ。
何というか、黄色い猫じゃらしのような...、あれ、ちょっと待て。さっきから俺は「見渡す限り緑の草原」だの、「草原」だの「草原」だの...。
俺、結局草原としか言ってない。俺のボキャブラリーの無さが垣間見れる瞬間...。って、そうじゃなくて。何故、如何にもアルプスにありそうな草原の中に、一本だけ蛍光ペンの黄色みたいな色した猫じゃらしがあるんだよ。怖えよ、逆に。いくら俺が腹空かせてるからって、さすがに蛍光色の草食べようとか、思わないから。食べた瞬間、俺、変な意味でちょっと危ない男認定されるから。「白もやし」という最悪の称号以外にも、「キチガイ男」とかいうレッテル貼られた日には、俺、本気でヒキニートのサボタージュになってやる...絶対に。
それよりも、何でこいつだけ黄色なんだ?しかも蛍光色って...。
さっきから歩いていたが、こんな色してたら普通はすぐに気づくもんだろ。
...まあ、俺は気づくの遅れたが。
俺は、しゃがみ込んで猫じゃらしを人差し指で突いた。ごく普通のそれと同じ感触だが、何故か、指に大量の粉が付着した。色は蛍光の黄色。あれ、猫じゃらしってこんなに粉付きますっけ?しかも、粉の感触がモロ小麦粉。
あり得ない、こんなこと、あり得てたまるか。世界広しといえど、俺が暮らしていた場所には、蛍光色の植物なんて存在しなかった。やはり、異世界とは俺の想像を遥かに凌ぐ何かがあるんだな。驚きだ。
これは、元いた世界に帰った後、友人に速攻連絡だな。...てか、俺、帰れるのか?
まあ、恐ろしい考えは早々に切り捨て、俺は手に付いた粉をどうするかについて、考えることにした。もしかしたら、これはこの猫じゃらしの種なのではなかろうか。だとしたら、俺はこの猫じゃらしに対して、申し訳ないことをしたことになる。
すまない、俺のせいでお前の子の未来を変えてしまった。許してくれ、蛍光猫じゃらし...。いや、本気で、この粉取れねぇな。感触は小麦粉なのに、何か、擦れば擦るだけ指に残るっていうか、下手したらこれ、取れないんじゃない?とか、思えてくる。
何それ、怖っ!。俺の右手は一生蛍光色の黄色なのか?...そんなの、嫌だ!どうするどうする?、どうしたらこの黄色取れる?ヤバい、今の俺、軽く蛍光色に対する恐怖と殺意しか無い。何か、水みたいなものがあれば、この黄色落とせるかもしれないのに...。
...左手のオレンジジュースは、ノーカンな。オレンジジュースは水みたいなもんだろ、とか、思った奴いるだろうがな、俺のオレンジジュースは、聖なる飲料水なのだよ。
これはあくまで、俺が家族からの解放を祝して、意気揚々と駅前のコンビニで買った、非っ常に、貴重な代物なんだよ。そんな神聖な物を、俺の右手なんかに垂れ流しとか、お前、今すぐスライディング土下座したって許されることじゃないぞ。意味もなく垂れ流しにするくらいなら、いっそこのまま蛍光黄色の右手で俺は生きていくぜ!
...何一人で力説してんだろ、俺。これは、もしかしなくても、早々に「キチガイ男」のレッテル貼られる日が来るんだろうな。やだな、それは。ただでさえ、「白もやし」で俺のHPは限りなくゼロに近かったのに、そんなレッテル付いたら、俺、此処に存在してないかもしれない。いっそのこと、灰になって何処か遠いところにでも飛ばされたいかも。その方がかなり楽だ。
次回、ついに人、現る!?です。取り敢えず、蛍光色の手をどうしようか、迷い中ではありますけど(苦笑)。