扉
私は歩いていた。
鳥が鳴き、花が咲く、少し靄がかかった
薄暗くて鬱蒼とした森の中を
私は歩いていた
ひたすら歩いていた。
何故私はこんなところを歩いているのだろう。
困ったことに、さっぱり分からないのだ。
何故なら私はある日突然この森に現れ
ただ歩いていたのだから。
目的地はどこなのか
ここはどこか、この場所に名前はあるのか
全くわからない。でも歩くことになんの疑問も沸かないのだ。
ついでに恐怖とかもない。だからひたすら歩いている。
あ。
ただ歩いていて不思議だなと感じる点はいくつかあるけれど。
まず、どれだけ歩いても疲れないこと。そしていつまでたっても朝が来ないこと。お腹がすかないこと。
…ここに来るまでの記憶が…無いこと。
私は何者なのだろう。
どうやってここに来たのだろう。
そんなことを考えながら、来る日も来る日も‥(朝が来ないのだから何日たったかどうかなんて数えようがないけれど)私は歩き続けていた。
…この前までは。
というのも、ついさっきまでいつも通り通常運転していた私の
ハッピーウォーキングライフ
の展開が変わったのだ。何故なら出口も見えない森を歩いていた私の前に現れたから。
…扉が。
どこからともなく現れた扉… 私の倍はあるかという高さで、アンティーク調の黒色をした、いかにも古臭いやつ… が、私の行く手を阻んできたのだ。
その時、初めて私の足が止まった。
止めざるをえなかったと言ったほうが正しいけれど。 ぶつかったらイタイもんね。
これ…開けるよね。
開けたほうがいいよね。
開けないと進まないよね?話が。ねぇ?
…ふぅ。
私は重く、重厚な扉のドアノブに手をかけた。
ガチャリ。
鍵はかかっておらず、ドアノブはすんなりと回った。が、重い。この扉、とてつもなく重いのだ。 運動嫌いなのにな。まったくもぅ。
愚痴を吐きつつ全体重をかけて、私はこちらの場所と向こうとの隙間を広げていった。
ゆっくりと。ゆっくりと。
見た目通り錆びていたんだろう。
時間はかかったがようやく向こうを覗けるくらいには開くことができた。
汗が額を流れ、私はその場に座りこんだ。 わ、汗なんて久しぶりにかいたなぁ。 歩いていても汗なんてひと粒も流れなかったのに。なんだろう。 よかった。なんだかホッとした自分がいた。
生きている実感を感じつつ、再びドアに視線を戻す。
よし。まずは覗いてみないとね。いきなり入るなんて怖いもの。
私はドアの隙間から少しだけ向こうを覗いてみた。
………………
…………………………?
…………………………………あれ?
変わらない。変わっていないのだ。私が今立っている場所と。
景色が全く変わっていない。何なら匂いとか、鳥の鳴き声のタイミングすら変わっていない。
ただの飾りだったのか?この扉は!置いてあるだけなのか!?
こういう時は外の世界に通じているとか別の異次元世界へいけるとか、好きな子のお風呂を覗いちゃうとかそういうドキドキハプニング展開ではないのか!?
何なんだ一体………………!
怖がって損した。何で現れたんだろうこの扉…
私は明らかな脱力感を感じつつも、体の中にこみ上げてくる笑いを感じていた。。
ふふ、なんだろう。ここに来てからただ歩いていただけだったからこんなことでも笑えてくるな。
まぁ、ちょうど何を考えながら歩こうか考えていた時だったからいい暇つぶしになったしね。
クスクスと笑いながら私は立ち上がった。
…とりあえず先へ進もう。どうせ歩く以外にやることはないのだから。
くるっと回っていきたい方向を決める。よし。こっちだ。
私は扉を迂回して、更に森の中へと進ん……………
「ちょっとまったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」




