夏休みといえば?
皆が思い思いに口を開く、騒々しい空間。けど、こことも暫くお別れ。淋しくなるなぁ...なんてね。
「夏休み、どっか行こうよ」「カラオケ行こうぜ」「アタシ海行きたい!」「花火大会どうする?」
そう、この教室とも暫くお別れ。夏休み!
そして今日は、終業式。
窮屈な式が終わって高まる気持ちは爆発。誰が大人しく先生を待ってられようか、いや、待てない!皆が楽しみで仕方ない。勿論、私もそのひとり。早く学校終わらないかなぁ~
「リン、夏休み一緒にどっか行こうよ」
「うん、勿論!」
アユミちゃんとどこに行こうかな~
夏といえば、海?あと、花火大会とか!ショッピングとかカラオケもいいかも。うーん、ここ田舎だしな。あんまり行ける所も無いんだよな...。あ、...
「肝だめし...」
「え!?」
「わ、なに!?...もしかして声に出てた?」
「うん。バッチリ。てかアンタ肝だめしって、本気?」
いや、肝だめしに行きたいというわけではない。夏といえばで浮かんだってだけなんだけど...。あゆみ、目が輝いてるのは気のせいじゃないよね?私がビビりなの知ってるよね。怖いの本当に無理だから!
──なあ、お前ら肝だめしすんの?
ギク!
ユージ君にトモ君にカズキ君。
「俺らも混ぜてよ!なあ、いいだろ?」
どうしよう、行くって一言も言ってないのに。
そんなに笑顔で言われたら断りにくいじゃないの。
「いいね!行こ行こ!」
「ふぇ!?」
ちょっと待ってよ、アユミちゃん。私、まだ...
「いいでしょ?」
「う、うん...」
負けた。完全に負けた。あの笑顔は反則でしょ。
本気?って聞かれたときにすぐ返事をすれば...いや、私が「肝だめし」なんて声に出すからいけないんだ。
悶々と思考回路を広げていると、アユミちゃんが少し気にかけてくれた。多分、本当に大丈夫?って意味だと思う。私はもう遅いと項垂れるように首を縦に振る。
彼らはというと、私たちを他所に満面の笑みで話を進めている。
「8月12日午後5時にトモの家に集合。噂の廃校舎に行こう!」
どんどん話が進んでいたようでスケジュールが完成しつつあった。そして、私たちの返事を待つ前に先生が戻ってき、自分の席へと戻っていく。
(あ、決定しちゃった...よね?)
HRが終わり、彼らはそそくさと帰ってしまった。
「リン帰ろー!」
「あ、うん!」
...アレ、決定したんだよね?うん、分かってる。決定してるし、メンバーの中に私も入ってるんでしょ。もう既に泣きそう。
夏休みだというのに、私の足取りはいつも以上に重かった。




