2章 事件編
fruitFRUIT2章後編
キャラクター説明
イクシア・アイアン2
とても戦闘能力が高く小柄に見合わず盾で大物を吹き飛ばすという芸当もできる。
緑の鱗は敵の攻撃を受けるたびに頑丈になっていき、発色の良さはその頑丈度により増していく。
ロケットたちが会った時食べた猪はイクシアが仕留めた。
剣と盾をよく使うが実は一通り使える。
妖2
深くかぶったフードの奥には常に笑顔を絶やさない謎の存在。
いきなり現れていきなり消え、獣を町へ放ったり時には生死をかけたゲームを与え敗北者には直接手をかけて殺す。
本体はどこでなにをしているのか、誰にもわからない。
4話【喜びの望み】
死体解剖記録は以下の通りだ。
“死亡解剖記録 発行日時 エメラルド/10 午前十一時四十二分
被験者 ウチワウスイ
変翼型有翼鳥類
死亡推定時刻 エメラルド/9 午後二十一時ほど
死因 胸部に二本太い刺し傷が内臓まで貫通しており即死 円形でナイフなどではないと見られる
死因以外の備考欄 守備リングに最近の使用跡有り 攻撃を受けたさいに発動し使用者へのダメージを和らげた模様
服に多数の傷有り 死亡前に争った形跡と見られる
身体に複数の軽傷あり 守備リングにより和らげられ大きなダメージには繋がっていない”
「うーん、大事な事が載ってるような載ってないような。」
フィーネは解剖記録を読んで頭を悩ます。
ロケットもほとんど同じ感想だが、フィーネよりもわからない気もする。
『フィーネ、とりあえず早く調べちゃおうよ!』
フィーネは頷いて目を閉じ、フェイが輝きをましてフィーネの頭の中へと飛び込んだ。
「観察強化!」
イクシアとヌールも話し合いがついたようだ。
「イクシアと自分はここではない所で殺人事件の探索をする。ここは任せた。」
「そういうわけだ、オレが犯人を追いつめてやる!」
そう言うとヌールとイクシアは勢いよくマンションにあいた穴から跳んでいった。
ここは相当な高さなのだが、彼らならあらゆる地形を利用してこんな所からも安全に降りれるのだろう。
フィーネが観察強化で探し当てた場所をロケットも探索を手伝う。
ポイント1 ウチワの遺体
「基本は解剖記録通りって感じだね。」
フィーネが解剖記録とウチワを見比べながらつぶやく。
「フィーネ、何か気になる所ある?」
うーんとフィーネが呟き、そしてウチワの手を指す。
「何か、軽く握ってるようだけど……?」
ロケットがウチワの手を開いて見ようとするがとても固い。
無理矢理こじ開ける。
「あれ、何もないぞ。」
ロケットは息を整える。
「いや……ちょっと待って、ここの下濡れてる。ちょうど手から落ちるように。」
フィーネが言うには血とは別に液体が見えるらしい。
「でも水自体はウチワさんも外へ行くときは持ち歩いてたし、水筒から飲もうとしたのかな。」
ロケットが考えてみるがわからない。
とりあえずウチワの水筒は空のようだ。
ポイント2 ぶち抜かれた壁
外から部屋まで無理矢理ぶち抜かれており、この部屋は少しそこから移動した奥まった部屋だ。
「そう言えばこのマンションから向かいのマンション、穴の位置がだいたい同じだね。」
フィーネがそう言うので見てみると確かにだいたい同じに見える。
「でも、向こうのマンションとは数メートル離れてて関係があるとは思えないなあ。」
ポイント3 フィーネの話
「さっきからちょっと気になってて。この二本の穴を開けるような太く鋭い凶器がこの部屋にはないの。視てもこの部屋自体そこまで特徴があるわけじゃあないし。私の独断だけど、この部屋はあまり重要じゃない。そんな気がする。」
ひとまずロケットたちは凶器を探すために部屋を出る。
「俺はやっぱりさっき妖が言った獣が殺した可能性も気になるな。獣の牙の形とそっくりだし、それなら争いの形跡の理由もわかる。」
フィーネも考えながら頷く。
「確かに気になるけれど……取りあえず結論を出すのは早いから、次々見ていこう。」
フィーネの観察強化はかなり強力ではあるがその分精霊にも本 にも負担がかかる。
休み休みマンションの部屋を開けては視て出て、フィーネが休む間はロケットが虱潰しに探す。
しかし、大した収穫は得られず。
先程と探してるものは違うとは言え一度見た場所、早々新しい発見があるわけではなかった。
遅めの昼食を取りながら次の調査を決める。
「今度は怪しそうな獣を倒して何か出てこないか見てみよう。」
ロケットの提案にフィーネも同意した。
戦闘となると当然相手を直接倒せるロケットが頑張るしかない。
牙が鋭く尖ってるものを石で出来た棒状の鎚で退治する。
フィーネはそれをサポートし出来るだけ傷つかないように努める。
「……よし!太めの牙がいくつか手に入った。戻って検証してみよう。」
マンションのウチワの遺体に再び向き合い、早速牙と穴の位置を照らし合わせる。
「うーん、違う。これも、多分違う。」
フィーネが観察強化で穴の位置などを見比べる。
「そもそも私たちが倒せるようなのにウチワさん倒されるかな。」
フィーネがそう呟く。
「うーん確かに。だとすると一人では辛い危険な相手……?」
ロケットがそう返すと、フィーネのたれ耳が少し持ち上がる。
「うん、きっとその可能性が大きい!私たちだと多分危険だからヌールさんたちに頼もう!」
ヌールたちは割とすぐに見つかった。
言っていた通り向かい側の瓦礫の中で調べていた。
観察強化やプロの刑事でもないから効率良く調べるというわけにはいかず、また獣たちが多いのでどうしても調査に集中できないようだ。
「分かった。強力な獣だな。イクシアここの探索は任せた。」
ヌールがそう言うとすぐにどこかへと跳び去った。
「あっ、マジか!?この量を一人で……き、気合いで乗り切るしかない!」
ロケットたちはイクシアのそんな背中を見て、気の毒な事してしまったなと感じた。
『怠けたら私が指摘するのでそのつもりで。』
「イベリー容赦ないな……。」
凶器すら見つかる事なく日が暮れてきた。
これ以上のこのエリアでの捜索は獣たちが危険になるので早めに撤退するとして、続きは公民館へ帰ってからにするとした。
もちろん道中もそれらしい獣はいないか、凶器が隠されてないか、見ながら行ったもののあまりそれらしいものは無かった。
公民館についてまずしたことは、見張りのシャムに連絡することだった。
シャムは公民館の中にいた。
事情を説明し外で話すことにした。
「そういえば、中にいても見張りが出来るんですか?」
ロケットが少し気になった点を聞く。
「ああ、僕は精霊の力で一定範囲内の空気に干渉した何かに気づくことが出来るんだよ。」
『おう、俺様の力でな!』
突然どこからともなく現れた小熊の精霊。
かわいいが口調は荒々しい。
「こいつは空気の精霊コヨーテ。クマだけどコヨーテ。」
『まあ俺様にとってはどちらでもいいんだがな!』
ロケットたちも取りあえず挨拶を交わす。
『じゃあ俺様は仕事があるからまた後でな!』
そう言うとまた突然消え去る。
しかしフィーネがここで少し気づく。
「あ……、もしかして彼、空気に入り込むんですか?」
精霊はあらゆるものに対し入り込むことで大きな効果を引き出す。
今までもフィーネの頭にフェイが飛び込んだり、ウチワの精霊ウメが地面に飛び込んで電気のトラップを仕掛けるように。
「そうだよ、空気に干渉してここらへんの空気そのものを自分の物にしてしまう。だからほら。」
ニンニン、ふざけた感じで構え胸の前で適当な印を結ぶと蜃気楼のようにシャムの姿が消え去る。
「あれ、シャムさんまで消えちゃった!」
そしてロケットたちの真後ろにいつの間にかシャムが立っていた。
縞模様の毛並みはここらへんでは目立つはずだがまるで姿を消してしまう。
「空気で光の屈折を弄ることでまるで誰もいないようにしてしまう。音すら空気が伝えなきゃ誰にも聞こえない。どう?結構すごいようちの精霊。」
ロケットはただ感心するばかりだったがフィーネは気になったことがあったのかメモへと書き残していく。
「あ、そうそう事件当時の事だね。」
メモ書きするフィーネを見て思い出したのか、話を変える。
「ええと21時ごろだっけ。その時も見張ってたけど猛然と突っ込んでくる獣もいなかったし、いたとしても小型の獣や誰かの往来くらいかなぁ。」
ロケットが気になる点を話す。
「その誰かっていうのはわかりますか?」
うーんと頭を悩ますシャム。
「流石に直接見た訳じゃないからね。あ、でも来た方角ならわかるよ。」
方角を地図に照らし合わせると、どうやら犯行現場の方向のようだった。
「もしこれが犯人だとすれば、この時に帰ってきた人になるとするけど……。」
フィーネがそう呟く。
フィーネとロケットはこの時間は互いに近くにいて何度も見ている。
つまり自然にシロとなる。
「シャムさんはその時誰かみました?」
ロケットがたずねるがシャムは首を横にふる。
「その時は焚き火の側にいたけどだあれも。11時ごろには火も消して寝ちゃっただけだし。」
シャムも他の人もいまのところアリバイは無いという事だ。
ロケットはお礼を言って次の所へ探しに行くと事にした。
「ありがとうございます。それじゃあまた夜に。」
「うん、僕もできる範囲で調べてみるよ!」
公民館の中の人たちにも話を聞いてみたが、300人以上いてもそれぞれがそれぞれの生活で手一杯という感じであの三人の姿を見たという情報は入らなかった。
それどころかストレスの捌け口にされたり理不尽に怒られたりと散々だった。
骨折り損のくたびれもうけ、もはやすっかり日は沈んだのに自分たちの得られた情報は僅か。
夜に全員で情報を持ち寄る。
その時のみんなに期待するしかないが、妖の言葉が本当ならその中に犯人はいる。
犯人による情報と善意によって集められた情報。
果たして何を信じれば良いのか。
ロケットもフィーネも頭を悩ませていた。
おまけ休憩所
フェイ「悩んでる時は甘いもの!」
ロケット「やっぱりチョコ!」
フィーネ「うーん、キャンディに和菓子、それにミルフィーユも捨てがたい……。」
フェイ『甘いものに悩んでたら意味ないね……。』
─────────
シャム・シール
縞模様の狸族青年。
精霊との協力で辺り一帯の広い範囲の空気を我が物にして、侵入してくる者を感知することができる。
また蜃気楼のように光の屈折の調整をして消える事も出来る。
彼はまとめてこれらを“エアーコントロール”と読んでいる。
コヨーテ
小熊の精霊だが名前はコヨーテ。
能力は空気関連で特に辺り一帯の空気を操作する技術に長けている。
口調はわりと粗暴。
────────
夜21時。
ウチワが死んでからおよそ24時間。
タイムリミットの72時間までまだ時間があるが取りあえず最初の議論が始まった。
ロケット「それじゃあまず死因についてはっきりさせます。」
フィーネとフェイ、ロケット、ヌールとトッポ、イクシアとイベリー、シャムとコヨーテ。
全員そろったところでロケットが仕切り始める。
フィーネ「死因そのものはこの死体解剖記録に書かれている内容そのものだと思います。」
イクシア「ええと?昨日の午後9時ごろに二本の太い刺し傷が内臓を貫いて即死、か。」
イクシアはイベリーにも死亡解剖記録を見せる。
イベリー『やはり凶器が書かれていませんね。』
シャム「多分わざと書いてないんだな。僕らを試すかのように。」
うーん、とイクシアが唸る。
イクシア「でもこんな特徴的な傷口、ほぼ獣しかいないだろ。」
ヌール「その件だが、周囲の強力な獣を狩って牙をもいできた。」
ヌールが頑丈そうな袋からずらりと牙を取り出す。
ヌール「上顎、下顎、それぞれの牙はセットにして縛ってある。」
トッポ『ちゅちゅ。』
ヌールがトッポを撫でる。
フィーネ「私が少し見ておきます。議論は進めておいて下さい。」
フィーネは観察強化を使い牙を穴の特徴を書き記したメモと見比べ始めた。
ロケット「それじゃあ次は第一発見時の事ということで。」
ヌール「お前が見つけてくれたんだったな。」
ロケットは頷いて話を進める。
ロケット「まず僕はフィーネとと にあのマンションの中を捜索していました。フィーネとあの部屋までたどり着いた後俺はさらに奥の、少し曲がった所にある小部屋まで辿りつきました。そこには既に息絶えたウチワさんがいました。」
ヌールが解剖記録を見る。
ヌール「発見時はこの解剖記録が発行された日時とほぼ同じ昼、ウチワが死んだのは昨日の午後9時。ロケットが見つけ次第に殺したとかいうわけでは無いことを、ちゃんとこれは示してる。ロケットが犯人の可能性は薄いな。」
ロケット「俺は殺されることはあっても人を殺したりはしませんよ……。まあ最近は獣を殺さなきゃならないのは辛いですけどね。」
これまでに何度も死んだことがあるロケットにとって死の恐怖がどれほどのものか良くわかっていた。
ロケットはぐっと拳を握りしめる。
シャム「何か第一発見時に気になることがあった?」
ロケット「あ、はい。まず凶器が見当たらないこと、それにウチワさんが何かを握っていたような、そんなポーズを握っていたことですね。」
ヌール「何かを握る、か。何も握ってなかったのか?」
ロケット「残念ながら、犯人が持ち去ったのか何も。」
シャム「銃とかはどうなんだろう。」
ロケット「銃……銃!そういえば、ウチワさんの猟銃が見つかってない!」
ロケットはフィーネの話を思い出していた。
この部屋はあまり重要ではないという話だ。
あのときの部屋の違和感は、凶器だけではなく彼女が狩りのために持っていた銃すら無くなっていたということだった。
イクシア「ああ、銃なら確か……ほら。」
イクシアが思い出したように取り出す。
銃口が完全に壊れてしまってる石の銃だ。
イクシア「これ、俺が渡した銃だよな?何でこんなに壊れてるんだ?」
ロケット「これはどこに落ちて?」
イクシア「ウチワの遺体があるマンションと、その向かいにあるマンション、まあ俺とヌールが探してた付近のマンションの事だな。で、その二つの間の瓦礫の中に埋もれてたよ。俺だけになったあと少し移動してイベリーにどやされながら探してやっと見つけた唯一のものだな。」
イクシアが自慢げにその銃を掲げる。
フィーネ「傷口と牙の検査、終わりました。」
フィーネが観察強化を解いて報告する。
フィーネ「適合すると思われる牙はありません。近いものもありますけれど、どれもちゃんとした一致にはいたりませんでした。」
ヌール「あの辺りの獣はすべて狩った。別の線を考えるのが妥当だ。」
再び振り出しに戻る議論。
妖は今の状況をどこかでみて笑い転げているのだろうか。
フィーネ「あ、その銃ちょっとよく見せてください。」
イクシアが持っていた壊れたウチワの銃を、フィーネが受け取る。
フィーネ「これって、もしかして……。」
ロケット「何か分かった?」
フィーネ「多分これ、ウチワさんの大技のレールガンってのを使った後だと思う。」
レールガンというのは銃に電気の力を無理矢理ためて電気の力で数倍の速度で弾丸を飛ばす荒技だ。
フィーネ「ふつうの銃で私たちみたいに武器の強度を強化することが出来ないと、確か一回で完全に壊れちゃうらしいです。」
前一度タマムシ相手に使ったときは壊れないようにフィーネに武器強化してから使った。
ロケット「これがレールガンによって壊れてるとしたら、何かかなり強い相手に向けて放ったって事か……。」
フィーネがもう一度観察強化を使う。
フィーネ「ちょっと貸してくださいね。もっと詳しく調べてみます。」
イクシア「ああ、俺の見つけた証拠だ、ぜひ隅から隅まで調べてくれ。」
ロケットは次に何を進めるべきか、手帳を振り返りながら進める。
ロケット「それじゃあ、次はウチワさんが死んだ時間、つまり午後9時ごろに何をやっていたか教えてくれますか?」
シャムが手を挙げる。
シャム「じゃあまず僕から。僕はあの時間焚き火をしていて誰も見てないし誰とも会ってないよ。」
コヨーテ『まあその間に一人には気づけたな。ただそれが誰かはわからねぇ。』
小熊らしく指をなめながら言った。
ロケット「その一人が多分犯人何だけど あ。」
コヨーテ『俺様にも分からないものはわからん!諦めてくれ!』
ヌール「それでは次、良いか。」
ヌールがまわりを見渡してから話す。
ヌール「自分はトッポと共に戯れていた。夜にあまりする事はないから、月でも見ながらトッポと会話していた。誰かを見たりはしてない。以上だ。」
トッポ『チュチュ。』
ロケット「うーんやっぱり誰とも会ってないですか。それじゃあ……」
イクシア「俺の番だな!」
ロケットに言われる前にイクシアが言った。
イクシア「俺はその夜は早めに寝てたな。暇だし公民館の屋根で一人月光浴よ!」
イベリー『私たち以外には誰とも会ってません。』
ロケット「うーん……。」
ロケットはますます分からなくなってきた。もう少し絞れれば良かったのかだがむしろ広くなっていってる気がする。
フィーネ「あ、みなさんちょっと聞いて下さい。」
銃の調査が終わったらしくフィーネが声をかける。
フィーネ「この銃はレールガンを使ったのもそうなんですけど、高いところから落ちたような、そんな傷も付いてるんですよ。」
ロケット「高い所……確かにマンションの上から落ちれば高いだろうけど、どんな状況だろう。」
シャム「謎が謎を呼んで謎だらけ……。」
ヌール「謎と言えばこの死体解剖記録の変翼型有翼鳥類とはなんだ?ウチワは翼は無かった気がするが。」
ロケット「ああ、それは彼女は腕が翼に変わる特殊な種族らしいんです。」
フィーネが何かに気づき、発言する。
フィーネ「もしかして、彼女は空から何かをねらった……?」
シャム「空から?でも腕が翼に変わるんじゃあ撃てないんじゃあないかな。」
フィーネが首を横に振る。
フィーネ「あの種族は片手だけ翼でも滞空だけならできるそうです。ウチワさんは猟銃の扱いには長けてましたから、きっとそう言うことも出来たのではないかと思います。」
ロケットも考える。
ロケット「うーん、だとすると空中からどこを狙ったんだろう。」
イクシア「確かここに書いてあるのだと、死ぬ前に何かと争ってたんだよな。」
フィーネ「身体にもいくつかダメージが入ってたみたいですね。」
イクシアが緑の頭を掻いて解剖記録と睨めっこする。
イクシア「うーんだとするとだ、何かと戦って最後の手段の空中レールガンを使ったが相手の方がわずかに早く吹き飛ばして殺したって事か?」
ロケット「確証はないですけど、その可能性も考えれますね。」
フィーネ「そういえば……。」
フィーネがメモを開く。
フィーネ「確かあのマンションに開いた大きな穴、こちら側のマンションとあちらがわのマンション、ちょうど直線上に開いてたのですが、こちら側の穴は外から破られたものだと思うんです。」
ヌール「外から、つまり向かい側のマンションからか。」
フィーネ「断定はできませんが、コンクリートの間の柱やパイプなどが内側を向いていたので。明日は向こう側も調べないと。」
シャム「その向こう側のマンションの穴は調べてないの?」
イクシア「俺は中まで探せるほどうまく捜索とかできねえよ。」
ロケット「もしあの穴が直線上に開いていたとしたら……。」
ロケットは想像する。
空中にいるウチワを何者かが強大な力で向こうの壁の奥まで吹き飛ばす。
それほどの力を持った人が犯人だとすると、やはりシャムかイクシア、そしてヌールのうちの誰かだとしか思えない。
シャム「ああちょっと待ってよ。確かロケット君たちから聞いた話だとウチワさんはさらにその奥の曲がった先の小部屋で血を流して亡くなっていたんだよね?」
ロケット「確かに、ウチワさんの位置がおかしいなあ。」
ヌールが銀白の頭髪を揺らす。
ヌール「抜かなければ良い。凶器を。」
フィーネ「凶器を刺したまま……?」
ヌール「犯人が使った凶器と吹き飛ばした時に使った物が同じなら、抜かなければ出血は抑えられる。少し出ても、その程度なら拭える。」
フィーネがメモへと書き込む。
ロケット「でもそうすると、壁を壊すほどの威力でマンションの外壁に叩きつけられたのに、この解剖記録には載ってないなあ。」
フィーネ「軽傷……で済むとは思えないですものね。」
イクシア「うーん例えばの話だが。もしその牙みたいな穴をあけつつ吹き飛ばすのなら俺なら獣のような岩を投げつけるかな。」
イクシアが何かを書き出す。
イクシア「こうこうこう、でこんな感じ。これで下顎に刺さるならまずこの岩が先にぶつかって本人にはそこまで当たらないはずだ。」
イクシアがかいた絵を見せて貰う。
ロケット「……あの。」
フィーネ「……ちょっと、ね。」
イベリー『一体何が描いてあるかわかりません。』
イクシアがショックを受ける。
イクシア「ええっ、でもなあ……。」
ヌール「実際作った方が早そうじゃないか?」
ロケット「じゃあちょっと外行きましょうか……。」
イクシアが作り出したのは獅子の顔だった。
牙を向き、下顎にも鋭い牙。
「これを思いっきり吹き飛ばして向こう側まで叩きつければ先に頭が当たって壁が壊れるんだって!」
まるで自分が絵に描いたものと同じだと言い張るイクシアを横目にロケットとフィーネはメモをとる。
「凶器がこういう精霊術なら絶対名残がある!明日はあのマンションの中の調査だ!」
イクシアが誰も話を聞いてくれないので仕切り出す。
「僕はここで見張りをしてなきゃいけないからイクシアたちに任せるよ。」
シャムが眠そうにそういうとポケットから懐中時計を取り出す。
「眠いと思ったらもうこんな時間。」
ロケットたちも時間を確認して、今日は一旦中断して明日の捜索で犯人を探し出す事にした。
「フィーネ、大丈夫なのかなこの事件。」
ロケットが寝る間際フィーネに尋ねる。
「うーん正直まだわからない。けれどきっと突破口はあるはず。何だか、私のカンになっちゃうけど、まるで二つの意思があるみたい。それが互いに邪魔しあって、事件が複雑化しているんだと思う。」
ロケットも考えてみる。
「二つの意思……、犯人とウチワさんとか?」
フィーネも首を捻る。
「うーん何とも言えないけどそれに近い何かが、きっとある。」
あまり遅くなると明日に支障が出るので、考えるのをやめて眠りについた。
おまけ休憩所
イベリー『精霊の性格も色々ありますね。』
トッポ『ちゅちゅ。』
コヨーテ『俺様ほど個性的な精霊はそうそういないだろうがな』
ウメ『うーん、ぼくはわりとーいそうー。』
フェイ『どう考えてもみんな個性的すぎるよ!』