1章 解決編
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(考えるんだ、この事件での重要そうな謎を…!)
額に汗を浮かべ真剣な眼差しで自分の書いたメモを振り返っていく。
(……!そうだ!話が前に行きすぎていたんだ!)
フィーネ「ウチワさん、ウチワさん!」
ウチワ「ひっ!」
フィーネ「もしかしたら身を潔白する事が出来るかもしれませんよ、だから真剣に答えてください!」
主人「ここまで来て、そんなに事があるのか?」
フィーネ「言え、私たちは先走りすぎていたんです。一度原点にまで戻る必要があります。」
娘「事件の始まり?」
フィーネ「そう、正確には第一発見時の事です。」
ウチワ「あっ……!」
ウチワは先ほどまでの余裕の無さから一転、みるみる生気かま戻っていく。
フィーネ「話してくれますか、なぜあの場所に行き、そして何を見たか。」
ウチワ「そうよ!そうそうそうそうそうよ!」
フィーネ「私には謎なんです。宿泊客には用がない場所ですから。」
ウチワは肩で息をし、全身に汗をかいて立つのがやっとのようだ。
ウチワ「ワタシの部屋にはあの場所の近くの通りも窓があって、ゴミのためているらへんは見えないけどその近くまでは見えるの。」
この宿は二階縦の小型の宿で一回がロビーや厨房、宿屋一家の居住スペースで二階が5部屋の宿泊施設になっている。
ロケットの部屋が一番奥でここからのみ裏のゴミを集めているところが見えるが他の4部屋からは見えない。
裏に繋がる道は正面から一旦大通りに出てすぐに宿の建物を迂回、建物と建物の間のやや細い道を通るか、厨房から繋がる裏口を使って直接出るかだ。
この建物と建物の間の道はフィーネの部屋の反対側、廊下を挟んで隣のウチワの部屋の窓から見れば真下の位置だ。
フィーネの部屋の窓は一本の道路で、その道路を通っても高い壁で塞がれているので中は見えない。
ウチワ「ワタシの大事なものがいつの間にか無くなってることに気づいて、探していたら外に落ちている事に気づいたの。」
フィーネ「大事なものって?」
ウチワ「万年筆よ。普段は机の上に置いてあるんだけどなぜかその日は窓の下に。」
ウチワは部屋に戻り、その大切な万年筆を持ってきてくれた。
金細工や宝石、それに全体に彫られた不思議な紋様にプラチナ制のペン先と見るもまぶしい明らかな高級品だ。
娘「うわ、本物初めてみたよ。それ一本100万はするって。」
ウチワ「バカ言わないで頂戴、これはそれを元にしたオーダーメイド品、100万なんて吹けば飛ぶ程度の品よ。」
持っているフィーネの手か震える。
丁重にウチワにお返しし、話を続ける。
ウチワ「で、これが落ちていたから慌てて取りに行ったわ。ロビーにはその時宿屋の社長がいたと思ったけど。」
主人「ああ、確かに駆けていくウチワさんを見かけたな。特に気にはしなかったが。」
フィーネ「その万年筆、いつから無くなっていたんですか?」
ウチワ「さあ……、少なくとも昨日の夜には使ってから寝たわ。朝起きて朝食を取りに部屋から出てその後使おうとしたら無かったわね。少し探していたら外からの反射した光に気づいて直ぐに取りに行ったけど。」
万年筆は確かにキラッキラとしている。これ全てで一つの宝石と言っていいくらい強い輝きを放っているので確かに目立つ。
フィーネ「そして拾いに行ったら……。」
ウチワ「奥からやたら臭ったわけよ、異臭が。あまりにも臭いから文句でも言ってやろうと向かったらそこでもう死んでいた。」
フィーネ「そこらへんの時間で私が外からロビーに入り、宿屋のご主人と悲鳴を一緒に聞いて……。」
主人「俺とフィーネちゃんたちと一緒に正面から向かったわけだな。」
そういえば、と何気ない質問をフィーネはぶつける。
フィーネ「なぜあの時確かに裏から聞こえたのに厨房から抜けて裏口から出なかったのですか?私は知らなかったらしょうがないけど……。」
主人「! ……いやなに、あまりにもな絶叫で気が動転してたんだ。」
フィーネはこの時の宿屋の主人の僅かな反応を見逃さなかった。
(あ……れ……?何だろう、今の、いきなり答えを言われてしまったときのような、そんな驚きの反応……。)
フィーネはこの事をさっとメモに書くと思考を重ねる。
(けどまだ遠い、きっとみんな意図的かそうでないかに関わらず隠し事がある。ここでもっと考えないと!)
フィーネ「そうそう、裏口と言えばなぜ看板娘さんやご婦人さん悲鳴を聞いた時に動かなかったんですか?多分厨房かどこかにいたと思うんですが。」
婦人「あっ、そういえばまだその時の事話して無かったですね。」
娘「わたしたちは確かにあの時片付けのために厨房にいたよ。悲鳴が聞こえたときにすぐ裏口から出ようとしたんだけど。」
婦人「ええ、その、開かなかったんです。」
フィーネ「開かなかった……?」
婦人「鍵はかかっていなかったんですが、おそらく向こう側に何か引っかかっていたんだと思います。」
ウチワ「!そういえば!」
今まで静かに聞いていたウチワが何かを思い出した。
ウチワ「あの時最初に見た時、確かに扉にはたくさんのゴミが積んであった。」
主人「ゴミが、扉に……。」
婦人「結局私たちの力では開けれなくて。あの後、フィーネさんたちの悲鳴や主人の声が扉から聞こえてきて。」
娘「パパが『そこを開けるな、見ちゃダメだ、人が死んでる!』って言ったから驚いて開けるのをやめたの。」
フィーネもだんだんとその時の事を思い出す。
そうあの時確かにゴミはなぜか奥ではなく扉を塞ぐように連なってて、そして何かナイフのような、メスが血濡れで落ちていて、そしてロケットが血を流して死んでしまっていたと。
(あれ……?メス……?)
フィーネは急いでメモを振り返り、ウチワに訪ねる。
フィーネ「ウチワさん、あの時落ちていた凶器は思い出せますか?」
ウチワ「それは当然彼を殺したメスでしょう?」
フィーネ「いえ、それではおかしいんです。現場に落ちていたのは包丁のはずなんです!」
ウチワ「包丁…!?そういえば落ちていたのは包丁なんだっけ……。でもおかしい。ワタシは今ならはっきり言える、あそこに落ちていたのは包丁じゃあなかった。」
フィーネ「ええ、私も同意見です。今なら確かにあれはメスだったと言えるんです。」
ウチワ「でもおかしいじゃない。なんで包丁がないの?」
主人「……。もしかしたら見間違えたのでは?」
フィーネ「私一人ならそうだと言い切れますが、二人も見てるんです。」
主人「しかし俺は気づかなかったな、凶器がどうのとか。」
宿屋の主人が先ほどからヒゲを触るのが止まらない。
フィーネ「……ウチワさん、見たあの後。私たちが来てどうしたんです?」
ウチワ「アンタの悲鳴を聞いてもっと怖くなってはってでもその場から逃げたわ。」
フェイ「わたしも怖くってフィーネを置いてすぐ逃げちゃった。ごめんね。」
フィーネはメモに簡易図を書いて一人、また一人と現場から立ち去らせて行く。
主人「俺は……。娘たちを止めた後直ぐに気絶したフィーネさんを運んで警察と救急に連絡した。まあどちらも電話は通じなかったんだが。」
フィーネ「いいのよフェイ、私だって起きてたら直ぐに逃げるわ。けど、私と宿屋のご主人が帰ってくるまでにどのくらい掛かった?」
フェイ「私はすぐに部屋に帰ったけど、結構長い間震えてたと思う。そしたら帰ってきたの。」
ウチワ「5分よ。」
ウチワがロビーの壁掛け時計を指さす。
ウチワ「ワタシはロビーに逃げるまでが精一杯だったからそこでずっと時計を見ていた。怖いものを見た後ずっと同じ動きをしてる時計とか見てると少し落ち着いてくるでしょう?だからずっと見てたの。10時5分から10時10分まで誰も入ってこなかった。」
宿屋の主人の顔が強ばる。
ウチワ「あそこは何か重いものを持っていても5分も掛からないわ。特にアナタのような巨人の用な体格の人間が小娘運ぶなんて造作もないはず。腰がひけててもね。」
フィーネはロケットよりも遥かに軽い。宿屋の主人は2mほどのがたいの良い体格でロケットですら何ら重そうな顔一つせず軽快に運んで行った。
フィーネ「現場で5分間も何をしていたのか、お聞かせ願いますか?」
主人「そんな……こと。」
宿屋の主人の顔がよりこわばっていく。深く、影を刻みながら。
主人「そんな事で人を疑うのかお前等は!!」
突然の吠えるような大声で周囲にいた人全員が気圧される。
主人「まだだ、まだこの女の容疑が晴れていない!」
宿屋の主人はウチワを指さし叫び散らす。
ウチワ「ううっ、まだワタシを……。」
フィーネ「いいえ、ウチワさんはあまり犯人だとは思えないんです。」
主人「どうしてそうなる!」
娘と婦人は主人の突然の変化にすっかり驚きすくみ上がっている。
フィーネ「まず、怪しい根拠の一つとされていた“PS.明日こそウチワさんに怒られないようにしたいなあ。”の部分。あそこはそもそも追伸、前の文とそのまま繋げて読むものではありませんし、ウチワさんはしょっちゅうロケットさんをしかっていました。もちろんこの日記の書かれた前日も。」
ウチワ「そう、そういえばロケットはあんまり上手くお茶を淹れれないからよく叱ってやってたね。」
ウメ「そーいえばー、なーんであのかみがあそこにー?」
ウチワ「! そういえばなぜあの紙が私の部屋の中に!しかもこのウメが見つけるくらい、わかりやすい所に!」
フィーネ「そういえば、あのメスも、手帳もロケットさんの部屋にあまり隠す気もなく置かれてた……。」
ウチワ「もし犯人がワタシをハメる気ならワタシにあの紙片を見つけさせるはず……。まるでワタシが千切ってきたように!」
主人「!! だがそれはどうした!俺を疑う理由にもこいつの容疑を晴らす事にも繋がらないぞ!」
また宿屋の主人が叫び散らす。
(今の、叫ぶ直前明らか様に反応した!きっとここに大きなヒントがあるはず……!)
フィーネはもう一度メモを見つめ、そして宿屋の主人を見つめる。
明らかに興奮した様子の主人。
何が彼をここまでに興奮させるのか。
(彼しか持っていないもの、彼しか出来ないこと。)
フィーネはメモの一つの点に注目する。
フィーネ「ウチワさんにはこのメモをちぎってくることはかなり困難なはずなんです。」
主人「なにぃ!」
フィーネ「それは……部屋の鍵です。」
ウチワ「部屋の鍵!そう、ワタシの部屋には鍵がしていた!」
主人「うっ!?」
フィーネ「もちろん、ロケットさんの部屋も私の部屋も全て。けれどこれら全てを一括で開けれるマスターキーが存在します。」
主人「マスターキー……!しかしもしかしたら勘違いで開いていたかもしれないじゃないか!」
フィーネ「いいえ、私がマスターキーをあなたから受け取ってロケットさんの部屋を確かに開けましたし、ウチワさんの部屋も鍵が掛かっていました!」
主人「は、犯人がロケットの鍵を盗んだのかも……!」
フィーネ「それならウチワさんの部屋が開けられないですし、今ロケットさんの所へ行って鍵の所持を確認してきましょう!」
主人「うっ!イヤ、俺の持ってたマスターキーはその時は盗まれてて……。」
フィーネ「それじゃあ私がマスターキーを受け取れないじゃないですか!」
酷く脂汗を玉のようにかく宿屋の主人、鋭い視線を投げかけるウチワ、流れる汗を拭うこともせず真剣な眼差しを向けるフィーネ。
主人「俺は、俺は家族を守らなくてはならないんだ!!」
フィーネ「この事件をはじめから振り返って、それではっきりさせましょう。」
まず犯人は私の話を聞いてロケットを森から自分の宿へ運び、ロケットに治療を受けさせてロケットを自分の宿で住み込みで働くように言った。
この時点で悪意があったと思う根拠は、この時から医者の鞄からメスを盗っていた事。
医者の鞄をロビーで受け取っていた犯人には、盗むのは容易かったはず。
数日間は普通に過ごさせ、その時の客であったウチワさんの気性の荒さを利用してロケットをわざとウチワにあてさせ、何度か叱られさせた。
初給料をロケットに渡しそれで手帳を買う事を提案し、日記を書くのように誘導する。
ロケットの記憶喪失を利用して「記憶が戻る手助けになるかもしれない」等と言えば直ぐに納得しただろう。
犯人の思惑通り手帳に日記を書き始め、また日記にウチワの名前が登場する回数が増えるのを、隠れ見てた犯人はある日裏路地に朝早く来る用にロケットに言う。
ロケットと犯人の関係性が部下と上司なら簡単に呼び出せたはず。
そして犯人は犯行を実行した。
メスでロケットの腹部を一刺ししたのだ。
しかし、犯人はこの時に少しミスを犯した。
犯人はこの一撃で殺せずに動こうとするロケットを見て焦ったはず。
そしてロケットを慌てて手近にある鈍器で殴った。
小型の燃えないゴミ袋だ。
これが重く殴打できてしかも事前にこれがあるって知っている者じゃなければこれは出来なかったはずだ。
しかも思ったより重く、ウチワや私などでは鈍器としてつかうのにも一苦労。
けれど犯人は大柄で男性なら。
思いっきり縦に振り下ろすことは楽にできる。
犯人はその後、ゴミ袋を扉の前に詰めて封印した。
これならもし裏口から宿屋の看板娘さんや婦人さんが出ようとしても出れず、第一発見者にも悲惨な光景を見せる事にもならずに済んだ。
犯行時に使ったメスをそのまま置いて一旦その場を離れ、自分に付いた血を取りロケットの部屋に行ってエプロンとバンダナ、それに手帳のページを『ウチワ』と『呼び出された』事が書いてある事を確認しちぎった。
もし自分の名前が書いてあったらそれはそれで部分的に利用したり最悪燃やしてしまえば良い。
今回はまさに犯人の理想通りの事が書いてあった。
犯人はその後普通に過ごし朝食を提供するためにウチワたちを呼び出した。
その間自分は誰もいない二階に行き、千切ったメモをマスターキーで入ったウチワさんの部屋に、さらに机の上にあった目立つ万年筆を盗んだ。
朝食をウチワさんが食べ終える前にウチワさんの部屋から見える位置に万年筆を置き、またその場所からもはっきりと異臭がする事を確認してから戻った。
正面から何度か出入りする事になるけどそもそもここは宿屋。
誰かが来ても客はあまり気にしないし、犯人がここのオーナーなら店員である家族もそこまで気にしない。
私の方がウチワさんより先に来て先に食べ終わったけど私はそのまま外へ行ってしまった。
ウチワさんは後からきて食事を終えた後部屋へ帰って行った。
ここらへんの行動も普段から知ってるのが犯人なら利用しやすかったはず。
犯人の思惑通りウチワさんは路地裏に行き、偶然帰ってきた私と一緒にウチワさんの悲鳴を聞いた。
この時点で犯人はさらに良い方法自分から目をそらす方法を思いついていた。
それはあえて凶器を自分の厨房の包丁と入れ替える事。
犯人の言葉を借りるなら「この犯人は色々と考えている」「自身が不利になるようなことを自分から出すはず無いと思わせたかった」。
凶器は最も目立つところ。
そして真の凶器も隠しているようであえて見つかりやすい場所に置くことで操作を攪乱させる作戦。
包丁を隠し持ち、真っ先に現場に飛び込む。
私が偶然帰ってきて、さらに追いかけその場で気を失ってしまったのは想定外だと思うけどある程度は犯人の計画通りだった。
けれどこれも犯人には結果的には致命的だった。
裏口が封鎖されているのを知っている犯人は正面から出たから、後々疑われるきっかけを作ってしまった。
犯人は他の人が逃げ帰るのを確認して扉が開けようとされているのを確認しそこから出ないように警告。
気絶した私を少し避けてからメスと包丁を交換し、包丁は血だまりで赤く濡らした。
ある程度乾いていても事前な包丁を濡らすなりしてたっぷりと付けたんだ。
わざとらしく、柄まで濡らして。
それからゴミ袋を元々の配置に戻し、殴打に使った燃えないゴミ袋は最も分かりづらい奥へと隠した。
それから私を抱えて宿の正面から戻り、宿の私の部屋へ。
その時も犯人にとって不幸があった。
ウチワさんがずっと時計の針を見ていたからいつからいつまで帰ってきていないか確認されることになってしまった。
犯人は私を私のベッドに運んだ後、再びロケットの部屋へ。
先ほどのメスを丁寧にロケットの部屋のシャワー等を使って洗ってから紙で包み机の引き出しに入れた。
そして犯人は出るときにきちんと鍵を閉めた。
これが自分の首を“締める”なんて知らずに。
そして何食わぬ顔で警察や救急に連絡しようとした。
いや実際はこの時点で外の様子を知っていて連絡すらするフリをしただけだったのかも。
「どうなんですか、宿屋のご主人さん、違うなら違うと言ってください!」
先ほどまでの怒り顔だった宿屋の主人はすっかりとしょぼくれた顔をしていた。
ただ、黙って下を向いていた。
「あったよ、ロケットのポケットにロケットの部屋の鍵!」
先にロケットの遺体へと向かっていたフェイがロケットの遺体からロケットの部屋の鍵を持ってきた。
「チェックメイト。」
「あなた……」
「パパ……?」
座り込んだ宿屋の主人は重々しく口を開く。
「……ああ、違うさ、ぜんぜん違う。」
「ううっ……」
「事実はもっと凶悪でもっとクソみたいなものさ。俺は初めから全て知っていたんだ。」
全員の視線は今、宿屋の主人に向けられていた。
「俺は脅されていた。命令通りにしなければ家族を殺すと。そこには事細かく殺害計画とそして家族の写真をたくさんな……!」
ポケットから封筒を取り出すとそれを机に叩きつけた。
中から大量の看板娘と婦人の写真が出てくる、ありとあらゆる時間場所、そしてプライベートなシーンですらとても近く大きく写り込んでいた。
「脅迫…!」
「警察に言うって考えなかったの?」
宿屋の主人は大きく首を横に振った。
「ダメだ、言っても殺すと書かれている。これほど大量に撮られているのに気づけなかった。いつでも殺せるという意味でこれを送りつけてきたんだ。」
実際、この写真はありえないほどあらゆるシーンで写している。
恐怖を感じるほどに。
「最初から……彼が行き倒れてしまう所から?」
「ああ、なぜかフィーネさんが見つけて連絡しに来る所まで事細かく書かれていたよ」
フィーネは自分すら殺害計画の枠組みに加わっていた事に恐怖や憤りを感じ、拳を握りしめる。
「そしてその計画を実行する日に燃やせと書かれていた。それが合図になると。後その手紙には奇妙な事が書かれていたんだ。」
「奇妙な……事?」
宿屋の主人は顔を手で覆い俯いて話す。
「バレる危険を避けたいならさらにここから考えろ、存分に保身に走れと。」
声がだんだんと鼻声へとなってくる。
「だから俺は考えた、考えて考えて考えてゴミ袋で裏口を塞いだり、メスを事前に盗んでおいて犯行に使う凶器を包丁からメスに入れ替えたりしたんだ……!」
フィーネは疑問に思っていた。
計画した犯人が緻密に練り上げた計画をなぜ宿屋の主人に計画を崩させたのだろう。
実際ボロが出たと思われる所こそが彼が考えた犯行の部分だった。
「そして今日のまだ日も登らない頃、眠っていた俺の精霊フレアの所へ行って早めに点火してもらったんだ。手紙を燃やすためにな。そして手紙を燃やしたら最悪な事に二通目が届いた。いつの間にかこのロビーの机の上に置いてあったよ。」
ウチワはだんだんと憤りを感じていた。
宿屋の主人に対してもだが最も大きいのは自分を利用しハメようとした計画班にだった。
「その二通目には、実行おめでとうだのこの瞬間からブロックは封鎖されたから警察は来れない、安心して殺せだの意味の分からないことが書かれていた。外へ行って確認したら驚いたがな。」
フィーネは早い段階から宿屋の主人がそこまで知っていた事に驚く。
だからある程度大胆に動いたのかもとも。
「そしてその手紙は殺したら燃やせと書かれていた。そしてその後は知っての通り。彼には酷いことをしたと思っている……。」
沈黙とも言える重苦しい空気が辺りを包む。
「その手紙はもう燃やしてしまったんですか?」
「ああ、言われた通りにな。」
精霊フレアたちが燃やしたと言っていた新聞以外の二枚の紙、それにロケットの殺害動機もこれで判明した。
しかし、すっきりと解決なわけがなかった。
ここまでの事をしておいてその計画犯が未だ不明なのだから。
その計画犯がどうしてもロケットをこんな形で殺したかったワケさえも。
そして長かった一日はここで終わろうとしていた。
おまけ休憩所
フィル「おつかれー!一章はこれにて閉幕だよ!」
ロケット「俺はなんだか倒れていただけのような気がするよ。」
フィーネ「私は無我夢中でした。」
ウチワ「ワタシは扱いがずさんだった気がする。」
ウメ「ボクはでばんがおおかったなー」
フレア「一番少なかった気がするよ……?」
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2章へ続きます