fruitFRUIT7章 カーテンコール
ほんの少し、この世界の非日常と日常に触れただけの
fruitFRUIT7章カーテンコール
13話【エンディング】
「新リーダーお疲れさま!」
黒の毛並みハイエナ人のイクシアの所属するキャラバン隊副リーダーがイクシアに肩を組む。
町の酒場を貸し切っての祝いの席だ。
『全くあなたは変わってないですね。サバサバした性格そのままで。』
イベリーはひらひらと舞いながら二人の様子を見守る。
「全くだ、ヌールが死んじまった事に変わりはないんだからな?」
イクシアの言葉も気にせず明るい調子で副リーダーは話続ける。
「なあにヌールなら悲報に沈む姿よりお前が英雄となって帰ってきてくれた事を喜べって言ってくれるさ。」
イクシアは肩の力を抜いて溜め息をし、窓から空を見上げる。
「そう、かもな。」
Cブロックに残り赤ん坊を守り続けた狸人のシャムも同席し、赤ん坊を抱いて見せて回ってる。
イクシアたちの席にもやってきてきすっかり元気になった赤ん坊を見せつけてきた。
「どう?新しいメンバー!」
「これがウワサの?どことなくヌールに似てるような……なんてな!」
副リーダーはおどけてシャムも軽く相槌を打つ。
イベリーが赤ん坊の上に止まると赤ん坊の精霊が興味深そうに見つめている。
イクシアはそんな様子を見ながらシャムに聞いた。
「名前はもう、決まっているのか?」
シャムは頷いた。
シャムの精霊コヨーテも空気中から出て来て赤ん坊を喜ばそうと色々と顔を作って遊んでいる。
シャムは赤ん坊を揺らしながら名前を言う
「この子の名前、それは──」
町から出て3人3匹、ライオンの子ブレイヴとトンと猿人のロックとライム、そしてタートルとトマトの3人で次の目的地へと向かう。
「こんなに早く町から離れてしまって良かったので?」
ロックの問いかけにタートルとブレイヴは頷く。
「ああ、もうこの町はダイジョウブだからな!」
タートルは町を振り返り、そしてまた歩く。
「目的も無事達成したぎゃ。それにきっとまた彼らとはすぐ会える気がするぎゃよ。」
宿の中ではウチワが趣味の音楽を綴っていた。
想いの消えない内に、その想いを形に残すかのように。
「本当にありがとうございます!」
宿の娘と婦人がウチワへ頭を下げる。
「もう分かってるって。ワタシが買い取って借金も払ったし経営も計画たてるから問題ないぐらいで大袈裟なのよ。」
『みんなとのおもいでーだいじにしたいからねー。』
ウチワとウメが宿屋の二人にそう答え、ウチワがウメの頭をなでる。
「余計なこと言わなくて良いの。
」
そういえば、と宿屋の婦人がポストに入っていたウチワ宛の手紙を渡す。
中にはたった一言綴られていた。
──必ず帰ります。 フィーネ、ロケット、フェイ
手紙は三人と三匹の元にまったく同じ物が届く。
手紙を配り終え、青い小鳥は蒼と紺の鳥族の男の元へと帰る。
「手紙配達代わりにやっていただいてありがとうございます。」
『少しでもやれることがあったらやりたいですから。』
青い小鳥、ホライズンの胸には未だに小さな刃物が差し込まれたままだ。
「それ、やっぱり抜かないんですか?」
『良いんです、固定されちゃって痛くもないし、それにこれは私の罪をいつまでも忘れないように見ていてくれますから。』
翼でナイフの持ち手を触り、目を閉じる。
そんな様子を代理人は興味深そうに見ていた。
とある遺跡の中、光の渦が別の世界へと繋がる。
その前で二人は手を繋ぎ、一匹はフィーネの鞄の中にいた。
「きっとここからが長いんですよね。」
ロケットは人型で頭を横に振って答える。
「ううん、フィーネとならきっと直ぐだよ。」
光の渦の先はどこに繋がっているのかはこちら側からは見れないようだ。
フェイは鞄から顔を出す。
『ここまで来るのにすんごい大変だったのにまだあるかもなんて勘弁してー!』
フィーネとロケットは笑い、フェイが笑い事じゃないと怒る。
もはやあの事件からどれくらいたったのだろうか。
手紙を出し、帰りを待ってくれている人たちの元へ帰るために頑張り続け、今一つの可能性の前に二人は立っている。
まだ彼等は僅かな可能性を手に入れただけだがそれでも二人はきっと可能性の先へと進めるのだろう。
ただ遠い故郷へと帰るために。
光の渦の中へ二人は歩んでいく。
彼等の道を選び歩むかのごとく。
そして姿は消えどこかへと旅立った。
──なあアップル?
──何も生き返りはお前や精霊たちだけの特技じゃないぞ?
──お前の力を貰ったからな。
──楽しみに待ってろよ。
読んで下さりありがとうございました!




