fruitFRUIT6章死闘編
fruitFRUIT6章死闘編
本気のダカーポの攻防は凄まじかった。
変身をせずにその変身時の能力をそのまま使い攻撃を仕掛ける。
獣型のように強靱な脚のバネで跳ね回り牙と爪をエネルギーの固まり、オーラで作り出して高速で攻め込む。
獣のような鋭い直感で攻撃を寸でで回避しあらゆる方向からの攻撃にも対処し続ける。
さらに悪魔形態のようにより強力な術を使う。
ダカーポの術の強さは3から1、そして0があるらしく0はここでエネルギーを得て発動できるようになったものだ。
一つ一つが神がかった力でフィーネたちに攻め込む。
傲慢という術は先ほどの大技で連続しては使えずスキも大きいため剣技を交え展開している。
暴食は自ら食らいつこうと意志を持つ爆発の炎。
色欲は細かく鋭い氷の群れによる引き裂く力と同時に氷のエネルギーによる体温と体力を奪う術。
憤怒は雷の巨大な槍。
通常のガードを無視し文字通り雷の速度で動き一度狙った相手は跡形無くまで追い詰める。
怠惰は気まぐれに動く風球。
誰も追わずひたすら気ままに動きトラップとして触れたものを切り刻み風のエネルギーが過呼吸を起こさせダメージ以外にグロッキーにも陥らせる。
嫉妬はどんなものもすぐに作り出す岩の術。
頑丈な盾でこちらの大技を防ぎ、相手を岩雪崩で押しつぶそうとし、岩のエネルギーが命を持ち岩で出来た巨人として襲う。
強欲という術は全てを飲み込もうとする激流。
蛇のような水はだだをこねるかのごとく大暴れし弾き飛ばされた者に付いた水は身体を蝕む猛毒となる。
フェイの回復とタートルとイクシアの守りが追いつかなくなりかけた頃にやっとロケットが回復する。
ボロボロ立った身体も戦える程度には回復し、意識も完全に回復した。
まず前線に出ていたイクシアとイベリーが精霊覚醒しイクシアがやっとダカーポとちゃんと剣を交えれるようになった。
その間にタートルは後ろに下がり水化、補助精霊術をトマトに指示する。
ロケットが獣型になって前線に出てダカーポの攻撃を誘って避け、イクシアは引き続き盾を使って守りつつ切り込む。
ロケットは攻撃よりも味方の精霊術の増幅を優先する。
獣型なら味方精霊術を遥かに強く、全体化できるため回復と補助の強化には欠かせないからだ。
ダカーポもただ指を加えて相手の体勢が整うのを待ってはくれない。
巨人形態のように大剣を作りだし、妖形態のまま軽々と振り回す。
避けに集中しなければ致命傷を負うのでなかなか体勢を整えさせてはくれない。
また妖魔形態のように折角強化した防御や力をすぐに弱体で上書きしようと仕掛ける。
多数の妨害術は避け回るロケットの大敵で動こうとすれば足を取られ跳べば着地点に罠の術で麻痺を起こす。
変身せず全ての力を使いこなすダカーポは想像よりも遥かに厄介だった。
戦いは進み全力のぶつかり合いは続く。
ダカーポは全力で“ゲーム”に挑みクリアするために戦う。
力を増し、なお全力で戦える相手がいるのはダカーポにとって喜ばしいことこの上無かった。
ロケットたちもそんなダカーポに蹂躙されるばかりではなく、徐々に仕掛け出す。
タートルとトマト、ウチワとウメが同時に精霊覚醒を行い、ロケットとイクシアが距離を取って戦闘し精霊術中心で攻める。
水の波を塔の窓ガラスごと破壊するほど強く勢いよく何度も打ち出しダカーポへと当て、雷の弓矢を作り、矢を放って貫きロケットが悪魔形態になってまるで地の底に眠る怨念を呼び出ているかのような恐ろしい音を出す闇のエネルギーをダカーポの足元から一斉に撃ち込んで攻める。
だがダカーポはそれだけではまだまだ倒れない。
火力不足なのはダカーポが隙間無く攻め続けるせいでまるで押し返せないからだ。
前回の戦いではダカーポも息を整えるため攻撃を止め敵の攻撃を透過させて休んでいたが今回はそれを一切していない。
フィーネとフェイになるべく被害がいかないようにイクシアとイベリーが常に状況判断しつつ立ち回るがそれでも積極的にフィーネの指示やフェイの詠唱や行動を狙いに来る。
ロケットも巨人形態でなるべくフィーネを隠しつつ戦うがそれでも巨人形態のパワーを打ち破るほどの力で大剣を振るい、ハンマーごと叩き切る。
ダカーポからの攻撃を治して回るのにフェイは手一杯でジリ貧は目に見えていた。
フィーネとフェイも妨害されつつも何とか精霊覚醒し、ロケットも精霊形態へと戻ってすぐにフィーネと精霊覚醒する。
二重に精霊覚醒を行っているとフィーネの能力と精霊術が底上げされて強力になるためイクシアも少し守りから攻めにシフトする。
「ロケットさん強化頼みます!」
『分かった!フェイ!』
『やられてばかりじゃないよー!』
フェイの精霊術に合わせるロケットの強化。
フェイから強く光が瞬いて全員に俊敏さを強める精霊術が強く掛かる。
「当たらねえな!」
イクシアが盾で剣を二つ同時に受け流し、隙を剣で二連撃切り裂く。
ダカーポの血が僅かに流れるが直ぐに止まり、痛みすら押し殺すように直ぐに反撃する。
ロケットとフェイはちょくちょく飛んでくる敵の魔法を避けつつとにかくひたすら味方を強化しダカーポの弱体を上書きしていく。
さらにロケットが最初倒されたせいかロケットは自らの内の力が強まるのを感じる。
『フィーネ、いける!』
「分かりました!精霊融合!」
フィーネとフェイが強い光に包まれ二つの光は合わさり一つになる。
「ダカーポ!これ以上は好きにさせない!」
光から融合体のフィーネが出て来てダカーポから正面にぶつかる。
盾を構え剣とぶつかり合い右手のスティックが大きく変化しまるで普段ロケットが扱うような棒状の鎚へと変化、片手で軽々と振り回しダカーポへと二回打ち当てる。
ダカーポが少しバックし距離をとる。
「僕とお前の格の違い、見せてやろう!」
ダカーポが叫び再び衝突、そのまま炎の魔法を正面に使い爆発する炎の牙がフィーネを飲み込む!
そのまま強く奥へと押し込まれるもフィーネが何とか爆発の勢いを相殺し消火する。
「ここまでの実力差が……。」
フィーネは全員の精霊融合を終えないとまるで押し切ることなどできないと判断し鎚をスティックに戻しフェイに再び指示、自身も同時に精霊術を詠唱し味方全体を癒す術を使う。
「どうやら急いだ方が良さそうね……!」
ウチワはフィーネとイクシアが前で戦う間に自身の精霊融合のため精神統一を行った。
ウメの存在を心の内から感じ取り、またウメにも感じ取られるように一糸乱れぬ集中を行う。
『いまだー!』
雷の鑓が飛んできた瞬間、強い光がウチワとウメを包み一つとなる。
雷の翼をもつ六つの翼とエメラルド色の煌めきの服はもはや人間のそれを越え一種の神々しさがあった。
雷の鑓は正面から受け、なおそれを掴む。
雷が徐々にウチワに吸収されていき、全身に強く雷をウチワが纏う。
「この状態なら雷はゴホービみたいなものよー。」
おまけ休憩所
ウメ『まえー、ちらっとはなしでたけどー。ほんきだしたらーぼくはそもそもまちをふきとばしちゃうんだよねー。』
フェイ『あー、だいぶ前にキャラ紹介文でちらっと。あまり気にして無かったけど。』
ウメ『だからーふだんはウチワがかんぜんにせいぎょーしてるんだー。』
フェイ『精霊覚醒や精霊融合時はそのコントロールしやすさが増すから強くできるって事なの?』
ウメ『うんー。せいれーゆうごーのときのほんきはーピンポイントにまちをふっとばすかみなりのちからーうちこめるよー?』
フェイ『フィーネの精霊融合とはまるで違って歩くバクダンだ……』
───────
ウチワとウメの精霊融合により二つの精霊融合を同時にしている事になる。
それなのにダカーポはまるで勢いが衰えなかった。
ウチワの撃ち出す弾丸は全て弾換えなしの雷弾を超高速弾速で撃ち出し高確率でダカーポに当たる。
だが当たっても即死は当然するわけなく血が少し出る程度で少しずつダカーポの体力を奪うのみだ。
そのダカーポの体力もこの都市のエネルギーを吸収した影響なのか塔の上の時とは比べものにならない。
攻め込みかなり攻撃は当たるのにそれを受けてなお攻撃し続けるせいでかなりやりづらかった。
剣の太刀筋は闇のエネルギーになりそのまま剣の攻撃のように飛び、剣で切り裂いた後詠唱し詠唱した後フィーネたちからの攻撃を防ぐ。
一人しかいないのにその一人がこちらよりもずっと強い。
数の優位を考慮してもこのままではフィーネたちに勝ち目は薄かった。
ウチワは空中で立ち回り接近してくるダカーポから距離を取りつつイクシアとフィーネのカバーを待ってから攻撃する。
猟銃の先端に雷のエネルギーを最大に溜めてから空とダカーポを結ぶ向きで放つ!
ウチワよりも大きな雷のビームが放たれ、危険を感じたダカーポはできる限り早く黒い岩で盾を作り身を隠す。
一瞬でダカーポは雷に飲まれ、空に向けて放たれた雷が空に止まりウチワが精霊術陣を遠隔から作り出す。
周囲の空気、雲から電気を生み集め再び大きな雷のエネルギーとなってダカーポからウチワへと結ぶように雷が落ちる!
下に集中し雷を防いだダカーポは空からの返しに反応が遅れ、なおかつ盾を使っても全身が雷により強く痺れていたため二回目の攻撃を盾を作るまでは出来ず直撃する。
たまらず地面へと落ち、床に当たる直前体勢を立て直し受け身を取って直ぐに地面を蹴ってウチワを切る!
しかしウチワは先ほどの雷を自らに吸収していて僅かに放電することでダカーポの剣の動きを一瞬止めその隙に飛んで距離を離す。
雷の翼は他の翼と違いスムーズな加速と減速が可能で細やかにかつ素早く空を飛ぶ。
「あれでも倒れないかー。厄介ねー。」
ゆったりとした口調に似合わず高速で攻め込みつつダカーポの氷の術を避け切り裂かれる前に撃ち落として行く。
ダカーポは先ほどの雷を食らっても何ら問題がないかのように剣を振るい続ける。
もちろん大きなダメージにはなったはずだがそれでもまだ直ぐに焼けた皮膚は新しい皮膚に生まれ変わり血は生み出され続ける。
体力が人間そのものと根本的に違う。
それが今のダカーポだった。
イクシアはフィーネをフォローする形で切りつつ盾で剣をきちんと受け、イベリーが岩を鉄塔から作って足場にし空中での戦闘も地に足つけて有利に運ぼうとする。
「そろそろ俺たちもいけるか!?」
『いいえ、まだ融合に必要なエネルギーが貯まっていません。』
横回転でそのまま切り込んでくるダカーポを盾で止め、剣で打ち込むがダカーポが左手の剣で受け、右手の剣はイクシアが盾で受け力を競る。
「マジかよかなり辛いぞ!」
『凌ぐしかありません。』
ダカーポが鍔迫り合いに勝ちイクシアをよろめかせるがイベリーが素早く足元から岩の柱を作りダカーポの剣は柱を切り落とす。
直ぐに次の柱がダカーポの足元付近に飛び出すので一旦距離をとる。
「どこにあんな力あるんだあいつは!」
イクシアが姿勢を立て直して一旦地面へと降りイベリーのサポートでダカーポへの道を作りその上を駆け再び衝突する。
タートルがトマトと強力して水の渦を作りだし、ダカーポへと投げつける。
ゆっくりと空中に漂い行動を制御するようにいくつも投げる。
ダカーポが避けるのは造作も無いことだが、道を塞がれると自然と戦う場所が決まりイクシアたちが立ち回りやすくなる。
『よし、だいぶノってきた!』
「これで最後にするぎゃよ!」
水の渦を投げてダカーポの接近を回避する。
光が強まり、一つに重なる。
精霊覚醒したタートルは2m越えの大きなロボットのような全身を頑重な甲殻が覆う。
ダカーポが接近させないために嫉妬の術でタートルより大きな岩の生命体を作り戦わせる。
天井まで大きくとってあるこの空間でも6mほどのため5m近い岩の巨人が出現すると途端に空間が狭く感じる。
上から殴りかかる岩の巨人の攻撃を、全身の重たそうな甲殻をものともせず軽々ステップで回避する。
「遅いッ!」
あっという間に懐に入り込み、両手で目にもとまらぬ早さでラッシュパンチ!
たまらず岩の巨人が怯みそのまま拳の力で浮かされ、最後に強く左ストレート!
岩の巨人は低い悲鳴を上げながらバラバラになり、岩がダカーポへと吹き飛ぶ。
「デカいだけのウスノロじゃあ相手にならない。来い!ダカーポ!」
おまけ休憩所
フェイ『前から思っていたけれど、イクシアとイベリー仲悪いの?』
イベリー『あら、どうしてでしょうか。』
フェイ『なんか基本的に淡々とツッコミしてるだけのイメージが。』
イベリー『まあ、事実ですね。』
フェイ『いつもああなんだ。』
イベリー『でも言われるほど仲が悪いとも思ってはないですね。気が置けないという相手だからこそですし。』
フェイ『熟年夫婦の域にまで達しているということなんだ……。』
───────
精霊融合したタートルとトマトは水化しなくとも水化したのと同じ以上の早さで、なおかつより強く頑丈に大きく行動が出来た。
ダカーポが岩の巨人召還での退治を諦めウチワの射撃の威力を水の結界で緩めつつタートルの弱体化を試みる。
「させない!」
フィーネがダカーポの速度低下魔法に気づき同時に速度上昇精霊術をぶつける。
「アップル!」
ダカーポ次々と弱体化魔法を使うがフィーネが強化精霊術で相殺し続ける。
「フォローするからお願い!」
タートルが術同士の撃ち合いを避けながら精霊術を高速で使っていく。
まるで隙がないかのようにずっと連続して術を発動出来るのもタートルトマト融合の強さだった。
水のエネルギーは一度攻撃になればなにもかもを壊す物量ダメージだけでなく、体力を奪いあらゆる体液を薄めて機能不全を起こしさらにはうまく酸素を取り込めず陸にいても溺れて最後は何もかも溶かすイメージよりも凶悪なエネルギーだ。
それを精霊術として立て続けにダカーポへと浴びせる!
二つの水流が螺旋状に飛んで喰らわせ、水で出来た巨大な二つの手が強く拍手して潰し、滝のような水を召還し頭上から落として空から叩き落とし、水の龍を作りだして地面が抉れるほどに強く浴びせた。
さらにダカーポが体勢を完全に崩している隙に自らにそっくりな水の分身を作り出す。
立て直しが遅れたダカーポはふたつの巨体の接近を許してしまう。
フィーネの援護でより威力の高まった拳をダカーポの身体を捉え殴る!
反動で浮き移動したダカーポをさらに水の分身が殴り返す。
隙無く高速のラッシュをしさらに最後は両方のタートルの右ストレートで挟み撃ち!
水の分身はタートルと重なりタートルは水を身に纏った。
いくらダカーポが化け物じみた能力でもガードすらさせてもらえない大技を立て続けに喰らっても平気というわけではなかった。
しかしそれでもなお直ぐに立ち上がり怠惰の風球を撒く。
大きなタートルの身体が災いしいくつか風が当たりえぐり弾き飛ばす。
再びダカーポから距離を取らされ、さらに水を纏って軽減していても身体の甲殻を深く切る。
フェイが直ぐに治療術を始め甲殻が徐々に戻っていく。
「これでも油断何てしたら一瞬で死んでしまうかッ!」
タートルは風を受けた足を押さえつつダカーポからは目を離さないようにした。
ダカーポはまとめて全員を攻撃する強力な魔法術が凶悪だが、本当に危険なのは二つの剣だった。
特に前とは違い常に攻撃を仕掛けている。
魔法と同時に剣を振るいたとえフィーネタートルイクシアに囲まれても同時に捌く技量。
数百年磨き上げたその技は誰も寄せ付けない究極の我流。
大きく空中をスライドしながら切り動き弾丸を剣を回転させて弾いてそのまま投げて回転刃として周囲のフィーネたちを切り裂きまるでブーメランのように手元に戻す。
鮮やかで隙がなく無駄がない。
フィーネは動きがそれなりにわかってもそれに完全に対応出来ているわけではない。
力の違いでどうしても押し切られている。
相手の与えてくる攻撃はどれも致命傷に繋がる攻撃でいくら数的優位でも攻撃を喰らえば下がって回復を強いられる。
ほんの少し間違いが起こればダカーポに皆殺しにされてしまう、そんな戦いだ。
『精霊融合可能。』
イクシアがフィーネとの協力してダカーポを一歩下がらせる一撃を加えれた時、イベリーがイクシアに時を知らせた。
「来たか!さあ!俺たちの番だ!」
イクシアとイベリーの光が強まり、一つになる。
身体の鱗が一部綺麗な石へと変化し自由に動くマントを身につける。
マントがなびき、虫の羽のようになって素早く飛ぶ。
地面は荒れ果てているため出来ることなら空中の方が戦闘はしやすいためダカーポも基本空中で戦闘している。
それに追いつき先回りするためにはこちらも空中に行ける手段は大事だった。
イクシアとイベリーも戦闘融合した事に直ぐに気付いたダカーポは瞬間移動してダカーポ背後へと回る!
「そこ!」
イクシアが見る前に反応してマントの形を変え剣のようにしダカーポの剣を受ける。
一瞬落ちて直ぐに羽根に変形し今度はイクシアからダカーポへと攻める。
右手の剣で相手の剣の上からガンガン叩き切り押してから不意をついて盾で大きく殴り崩す。
イクシアはそもそも剣の技術は一般的な剣士以下だ。
しかし持ち前のパワーを生かした攻め方と大盾を武器として使った場合は別だ。
相手の攻撃ごと盾で潰し剣で切って吹っ飛ばす。
型破りな戦法ながらそれが強い効果を発揮する。
先ほどまでは荒れた床に空中での戦闘と不利な面が大きかったが今はマントが羽となり浮力を得ている。
先ほどまでの防戦一方でたまに倒れてしまってはフィーネに回復してもらうような姿はなく、さすがのダカーポも4人の精霊融合相手には苦戦へと持ち込まれる。
イクシアの攻防が効いてダカーポの腕に痺れが走る。
一瞬の緩みを見逃さずイクシアは剣を切り上げて二つの剣をダカーポの手から落とした。
そのまま一回切り殴り大きく怯ませ地面へと盾で殴り落とす。
巨大な岩を空に召還しマントでおちないようにそれを持つ。
地面に立って大きく体を後ろに反らしマントも同じように動いて大岩に勢いがつく。
「いい加減に、しなさい!」
頭突きでもするかのように身体を前へ倒しマントとそれに掴まれた大岩もダカーポめがけて落ち、割れ崩れた。
おまけ休憩所
フィーネ「ロケットさんは前の性格にぱっと変えたりとかは出来るんですか?」
ロケット「うーん、なんか演じるって感じになっちゃうかな。元の性格と考えばアップルの時のが素なんだろうけれどやっぱり今の性格になったのは戻せないしなあ。」
フェイ『へぇー、面白そうだからちょっとやってみてよ!』
ロケット「えー、ごほん。」
アップル『フィーネさんフェイさん今日は何をしますの?』
フェイ『うーんそこで荒い息づかいで期待の目でフィーネを見ないと。』
アップル『そこまで戻すのは難しいですーっ!!』
────────
手応えはあった。
と同時にまだそれでも駄目だとその手応えで感じた。
予想通り岩の中から土を被ったダカーポが現れ、外れた左肩を軽く入れ直している。
無抵抗で喰らってなお立ち上がる。
今の衝撃でも凹む程度の床の材質がまるでダカーポの全身を覆っているかのようだ。
だが骨が外れ痛みを露わにしているということは効いていないわけどはないことも示していた。
後少し、押し切る必要があった。
ダカーポは空を舞い、あくまで地上有利なイクシアやフィーネたちを牽制しつつ魔法術を連続で放ち全体を削っていく。
互いに余裕はなく、ギリギリの戦いで興奮し叫びアドレナリンが体中を巡る。
イクシアが切り込めば身を翻して首を狙い届く寸前にフィーネの武器を棒状に変化させ防ぎ弾きもう片方の刃がフィーネの足を狙えば水流がダカーポを襲い流され、直ぐに抜け出し強欲の術で水の蛇を召還しその流れを食らいつつ精霊術を使った隙が出来たタートルへと突進しウチワが雷で出来た巨大カッターで当たる直前に蛇の首を切り落とし形が崩壊しその刹那ウチワの背後に瞬間移動したダカーポの振り下ろす剣をイクシアが直感で察知して飛び盾で防ぐ。
長く長く感じる僅かな時間のやりとりは拮抗し、どちらが倒れるかはまるでわからなかった。
切り、砕き、撃ち、殴り、燃やし、凍り、そして光と闇のエネルギーが再び全員を襲う。
傲慢はダカーポの奥の手。
連続して使えないしダカーポへの負担も大きくさらにはダカーポ自身が隙を持つ事になるのと引き替えに、一撃で全員を死の淵へと追いやる猛攻。
盾で防ぎきれずフィーネが蹴り上げを食らい地上から立ち上る光と闇のエネルギーがダカーポ以外を無差別に攻撃する。
空に集まるエネルギーに捕らわれ焼かれるフィーネ。
トドメのために二つの剣にエネルギーを込めていき、そしてフィーネの元へと飛ぶ。
そして一閃!
『そこ!』
その時隠れていたフェイがダカーポの背後から体当たりする。
唯一フリーで動けた精霊でなおかつフィーネにより事前にダメージ無効化の結界と一撃だけ強力にする精霊術を自分自身にかけていた。
その衝撃で集中が削がれたダカーポは、つい空中にいたフィーネを捕らえていたエネルギー球を緩めてしまう。
「なっ!?」
フィーネの賭けは成功し、フィーネはエネルギー球を無理矢理棒鎚へと奪い付ける。
ダカーポをステンドグラスを通した光のような美しい輝きの三角形刃で連続で刺し上へ上へと飛ばして行く。
空へと運びフィーネと同じ高さになったところで天から光のエネルギーを降り注ぎ今度はダカーポが光に焼かれ抉られるダメージを負っていく。
精霊術を唱えていきフェイが巨大な光の輪を作っていき、7つの輪が取り囲む。
光のエネルギーの攻撃のせいで動けないダカーポへとフィーネは先ほどのエネルギーが込められた鎚を構える。
大きく振り回し天に掲げ両手でふりかざす。
「これで、トドメ!」
同時に輪が収縮し鎚の一撃と同時にダカーポへと触れ光のエネルギーとダカーポが作ったエネルギー球が爆発し、ダカーポをエネルギーの藻屑へと消し去ろうと輝きどこまでも光が広がって行く。
鉄塔の上の光は街を照らしまるで灯台のように光が届く。
輝きは仙龍人の里からも雲山を通して見え、奇妙な現象として記憶に刻まれた。
光が収束し消える頃、全員の姿はそこに無かった。
一撃は確かにダカーポを打ち砕き消し去ったはずだった。
どこまでも続きそうな赤い光の渦の中あるのかどうかもわからない床に足を置いて4人と一匹は立ち尽くしていた。
目の前に何かの欠片が集まっていく。
収束し大きな球となってバラバラになって展開して行き、身体を形作っていく。
正確には身体と呼べるかもわからない。
手も足もなければ顔と呼べる部分もなく、真っ赤に体表に黒く縁取らた模様はありとあらゆる生物のようにも見え、獣にも植物にも人間にも見える。
見るだけで狂ってしまうような恐怖のその存在は大きな体が奥へと長く続いており、通常の生物としては成り立っていないのに目の前に存在する。
声が鳴り響く。
声帯の声ではなく、頭の中に直接響かせるようなテレパシーのような物のようだ。
「群と個、その壁を越えるにはその概念すら捨てて尚生きるほどの力が必要だった。そう、殺されても尚ありあまる力を解放させる必要が。」
フィーネたちは全力の戦いをした。
その力のぶつかり合いの上でダカーポが死んだ時の最後の策。
そしてそれこそがダカーポの最後の目標でもあった。
塔の上で逃げたのはまだそのための力がたまっていなかったため。
またフィーネたちも群れとしての限界点に達していなかったためだ。
ダカーポはその限界の二つの力がぶつかり合いなおかつ自らが蓄えた力が解放された時に神に匹敵する力を手に入れれると考え、そして今思惑通り力そのものなほどの力を手に入れた。
「改めて名乗ろう。我が名は妖、世界ごと一度消し、そして我が遊び場を新しく創り出そう。その前に貴君等に感謝を、そして別れを。」
フィーネたちをビームのような雷が空から貫き水の拳が四方八方から殴って大岩が空から落ちてきて地面へと叩き潰し光エネルギーが天から降り注いで焼き8つの輪が発生して収縮しそして光のハンマーがまとめてなぎ払いつつ光の輪が爆発。
ここまできて、後一歩の所であまりにも強大な力が何もさせずに全員を倒した。
もはや立ち上がれるものはいない。
ギリギリで耐えてはいるが、もはや立ち上がる力は無く後はこのまま置かれれば死んでしまう。
やっとここまで来て最悪の存在を生みだし倒れてしまう。
死の淵の消えかけた意識の中フィーネは、フィーネたちはもはやすがるしかなかった。
誰か、この相手を止めて欲しいと。
ただ虚しく神頼みするしかなかった。
暗闇の中何か音が聞こえる。
思考が巡り身体の痛みがまだ生きてると証明する。
フィーネは声の方へ顔を上げ目を開けるとそこには妖とそれを抑えようとしている光り輝く人。
『起きたか、我が子らよ。』
聞いたことのある声。
光の人は尾を揺らし、服というよりは光の衣を身に纏っている。
髭を蓄えた顔をこちらへと向けつつ両手は妖へと光を浴びせ続ける。
『世界はそのものたちに託すのが掟、しかしこいつはもはや別格。だが私が関与できるのはこの程度だ。』
光が空から降り注ぎフィーネたちの身体が癒えていく。
自然と他の人も目を覚ましていく。
「精霊王、ですね。」
精霊王はゆっくり頷く。
抑えていた妖が震え今にも動き出しそうだ。
『打開する道はある。だがそれはお主等にしか出来ない。生きる者の使命は死を全うすること。そして死を全うする事とは自ら選び取った道を生きていく事。ロケットはそれに最後に気づき直してくれたようだな。』
フィーネが肯定し頷く。
ロケットは一度は正しく死ぬことこそが生きる者の使命だと結論づけた。
しかしさらに記憶を思いだし改めて自分が最後の場に立つ理由を考えた時自分が自分として生きるためにつけなければならない決着があると考え魂をかけて戦うことを決意し直した。
『もはやダカーポなる人物はいない。ロケット、お前は精霊としてフィーネを選び宿主としてもフィーネへと変わった事告げておこう。もはや自らの死を賭けて戦う必要はない。』
フィーネとロケットは気付いてなかったが、ダカーポを倒す前から、ロケットはフィーネへと生命のやり取り宿主関係も変わっていた。
その証拠にダカーポへの深いダメージがロケットに一切跳ね返る事無く戦えていたのだ。
精霊が宿主を変えれるという前例は聞いたことがだれも無かったがそれは元々生まれつきの関係をここまでこじれさせる前例がなかったからだとタートルたちは推論づけた。
『人と獣を隔てるものは元々はない。それは今まで見てきたもの通り。精霊が選んだものが人となり成長してきた。そしてこれからもその関係が続くことを、私は願う。』
抑えていた光が消え妖から闇の波動ビームが放たれ精霊王を貫く。
光の塵となって精霊王は消えてしまった。
声がどこからともなく聞こえてくる。
──神の頼みを。生きる道を掴み取ってくれ。
武器を構え、神すらも越える力の塊へと戦いの準備を整える。
この世界そのものを消してしまおうとするほどの相手へ希望だけを頼りに駆け出す。




