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fruitFRUIT  作者: チル
6章 命奪う
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fruitFRUIT6章天界編

fruitFRUIT6章天界編


  すっかり体調が回復した一行はこの村でさらに武具なども整えた。

空という特殊環境は地上には残っていないような技術が失われることなく続きなおかつ空の陸地にしかない物が独自の武具文化を生んだようだ。

 オリハルコンという金属で出来た武器は金の合金で地上では制作不可能、仙竜族にしか作れない最高品質の武器の素材だ。

 金属としては柔らかすぎて武器には向かない金を特殊な金属と混ぜ打ち込みどれだけ使っても威力が落ちず、手に馴染み使い込めば使い込むほどより威力が増す不思議な武器だ。

 地上の金銭は使えないとの事だったが代わりに地上の変わった物と物々交換してもらった。

防具も同様に空の不可思議な素材を用いて作られたものを中心に着替える。

 フィーネとウチワの自動で身体を守る弱い結界を出すアクセサリーも交換した。

空で採れる宝石というスカイアレキサンドライトという綺麗な透明感のある青の宝石に長い年月をかけて莫大な精霊エネルギーをこめ軽く殴ったらそのまま跳ね返されるほど強い防御結界を張るようにしたものをつけた綺麗な足輪と首輪だ。

 また精霊と人との繋がりを強める媒介になるらしい交じりの勾玉という物も交換した。

 実際村の外の獣と戦闘してみた所精霊覚醒を起こしやすくなりさらにフィーネとロケット以外もさらに精霊融合までいける事がわかった。

 フィーネロケット融合体の覚醒時の光がウチワたちの心身に影響を与え、特異点つまりダカーポのような天性的に異常なほどな強さがなくとも融合が行えるようになり、精霊覚醒を強く行えるという能力もあり、そして道具がさらに介助してくれて全員最後のステップを踏むことが出来た。

ちなみに仙竜族はこれを使って簡単に強い精霊術を使って生活しているそうだ。

一般人が使う分にはちょっとした便利グッズの感覚なのだろう。

 以下が装備一覧になる。


 フィーネ→天使の指揮棒・雲の盾(精霊融合時はロケットスティック、フィーネシールド)、晴れ空の羽衣、空の首輪

 ロケット→雷の杖型ハンマー、雷雲の冒険服

 ウチワ→スコールハンティングワールドガン、貴婦人の服、空の足輪

 イクシア→仙竜包丁・岩雲の大盾、嵐の荒くれ服

 タートル→雪雲の鎧


 優しくして貰った村人たちに一旦別れをつげ、ダカーポのいると思われる場所へと旅立つ。

「で、どこにいるか検討はついてるのか?」

 イクシアがそう言うとタートルが頷き地図を出す。

「このあたりの地図とダカーポらしき黒い影を見たという情報を照らし合わせてみたぎゃ。」

 タートルが言うには目撃情報は同じ方向へ飛んでいくのを見て、さらにその先は一つの所があるそうだ。

 村を出てぐるりと雲山を避けるように平野を使って迂回すればすぐに見える所。

 昔地上との交流に使われ、1000年以上使われない事実上放棄された都。

「そこにダカーポが逃げ込んだのはきっと理由があるぎゃ。まーけど、何があるかまではわからないぎゃ。それに町を囲む結界はこの大陸も固定しているらしいぎゃ。偶然、ではきっとないぎゃね。」

 タートルは地図をしまい、向こう方角を調べる。

「それか、一回目?の時に偶然捕まったのを確認して二回目?も同じ時間に結界を張ったのかもな。」

 イクシアの推測にタートルは同意して頷く。

 雲山を越えるルートも考慮されたが雲山はやたら切り立っていてまた道というものがまったくなく地元民でも危険との事なので素直に平野を迂回した方が早くつくからだそうだ。

 とは言っても雲平野にいるのは見たこともないような生物が数多くいる。

村近くのは凶暴性は少ないのが多いがそれでも特殊環境のため地上で見かけた獣たちよりも手強い。

 整えた装備で戦闘しつつ都を目指す。


 平野はそこまで広くはないが雲だからかかなり高低差があり、山よりはマシだが平野なのに雲を大地が切り別れていたり段差が多く合ったりと移動するだけでも苦労した。

それでも30分ほどの距離でその都というのがはっきりと見えてきた。

「あれが……。」

 ウチワはその都を見上げる。

『でかあー。』

 ウメたちが見上げる先にある都。

薄暗い水色で雰囲気を統一された、まるで、近未来のような建物が高く並び高く空へと伸びている。

近くへ行かなくては分からなかった理由はその都が雲を纏い雲山の景色と同化していたからだ。

似たような雲は周囲にどこまでもあるため雲の切れ間から覗くその姿はどこまでが全貌かはわからない。

 高く、大きくどこまでも。

幸いな事に都市の一部は結界の外のようでダカーポはきっと結界の内側にいるだろうから特定は難しくなかった。

どこまでも伸びていく雲と都市。

その最も高い位置にある巨大な鉄塔。

ダカーポが潜むとしたら恐らくそこだとタートルたちは判断した。

 鉄塔とは言っても都市全体がなんの素材で出来ているのかが分からない。

 謎の金属で出来ていて空という異世界の中の近未来都市という異世界だった。

 平野の獣たちを退けつつさらに30分近く歩いてやっと近くまでこれた。

 近寄ると良くわかるがとにかく都市全体がどこまでも広がるほど大きい。

下界の町の数十倍はあるだろう。

結界のおかげで随分と探索範囲が狭まったのは助かったが、長い間の放置で獣たちがすっかり自らの住居にしているようでその中に立ち入る事はそれらの獣との戦いにもなるということだ。

 さらにタートルが聞いた所によるとこの都市は警備ロボや清掃ロボと言った地上では考えられないほど高度な自律型の機械が自治を行っているらしい。

獣とロボの対立そのものも危険だが友好関係が入力されていない4人と5匹はそのロボたちにも敵対視されるそうだ。

そこにダカーポの思惑が加われば遥かに危険な事になっているだろう。

「みなさん、準備は良いですか?」

 フィーネの問いかけに全員頷いた。



 おまけ休憩所

ロケット『随分とこの雲どこまでも続いてるんだなー。』

ウメワ「だいぶ高低差あったり切れ目が多かったりそこまで曇り空という雰囲気は無かったんだけれどね。」

タートル「普段は風の吹くまま大陸ごと雲にまぎれ位置とかも大きく変わるそうだぎゃ。普通の人間は都以外足を踏み入れても激しすぎる気候によってそのまま空から落とされてまうぎゃ。」

イベリー『今まで誰にも見つからなかったのも納得ですね。』


──────



 都は壁があり進入するための入り口はいくつか決まっている。

平野正面にも大きな出入り口がありその中を進む。

 中はさすが近未来都市と言ったところで、歩く地面もコンクリートのようなものでビル群が立ち並びそれらの材質は一切わからないが全体的に青の雰囲気がある。

それぞれ特徴的な形をしたビルにはエネルギーを送る為なのか血脈のように光が壁に沿って走っている。

ロボットが操縦しているのか空中を車のようなものが走り回ってビルの間を行き来している。

 そうして1000年以上都市の環境を整えそして今も侵入してくる獣たちを退治している。

 近くにロボがやってくる。

ロボの足は無く低空飛行して移動しているようだ。

 こちらを見つけるとロボはけたたましい警告音をかき鳴らし突撃してきた!

「話通りやっぱり私たちも侵入者扱いみたいね!」

 ウチワたちは武器を取りだし、ロボとの戦闘を始める!


 ロボたちは警告音で直ぐに仲間を呼び寄せるので素早くそのロボを壊さないと次々強力なロボが来てかなりやっかいだった。

獣たちは警告音がするとむしろ逃げるため、ロボを倒し次のロボに見つからないように逃げた先で獣に見つかることも多く、休むこともなかなか出来ない。

都市は何度も改修、破壊が繰り返された跡があり、鉄塔にたどり着くのにさえかなりの迂回を強いられる。

また、町にはロボたちがセキュリティーシールドを奥へ進むために設置していてその結界のような壁を無くすためにビルにも登り発生させている装置を止めて先へと進む。

 機械的な都に住み着いている自然の獣たちの織りなす妨害がフィーネたちを苦しめた。

精霊覚醒と強敵には全員精霊融合すらも使い突破する。

 ウチワはウメと精霊融合しさらに雷で出来た翼が覚醒情報よりも一対増え、腕を変化させれば合計6枚の羽で空を舞うようになった。

雷の翼はよりスムーズに加速減速が行え空で自由に動けるようになった。

 イクシアはイベリーと精霊融合し身体が鱗の他に綺麗な石も浮かび首にマントを巻くようになった。

マントは意思通りに動き、低空飛行する翼になったり瞬間的に盾にもなる生きたマントだ。

 タートルはトマトと精霊融合し精霊融合時の全身の甲羅がさらに増大し全身を覆う2m以上の大きな歩く甲冑となる。

それ以上に強くなったところは内面、そんな巨大な身体をものともせず動き回ることができさらに水の精霊術をほぼ時間をかけず連続で使い続けることが出来るようになった。


ダカーポの作った塔のように意図してつくられたダンジョンよりもかなりやっかいな迷宮になっていて上へ下へ何度も行き来し、最も高いと思われる鉄塔までなんとかたどり着いた。

 ダカーポの結界もこの鉄塔より奥はもうあまり張られておらず、ロボたちのセキュリティーシールドもなぜかこの鉄塔を中心に守るために設置されているのが多かったためダカーポが起動させておいたと考えるならなおさらここが怪しかった。


 空を突く巨大鉄塔の入り口のセキュリティーシールドを解除し、いざ鉄塔の中へと向かおうと近寄ると、中から人影。

「ロボか!」

 ロケットたちは武器を構える。

が、中から出てきたのは見たことのある面影だった。

「うわっ、撃たないでくださいよ!?」

 塔の下でロケットたちに出会い羽根と謎の刺激をロケットに残した自称一般人の鳥族の男性だ。

紺と灰の混じった翼を上に上げホールドアップ状態になってる。

「ほら、武器なんて持ってないですから。」

 フィーネたちは武器をしまう。

が奇妙な事に変わりはなかった。

ここにはさっきまでセキュリティーシールドが張られ進入出来なかったし、そもそも塔から離れ帰った彼がここまで来れる訳はなかった。

「もー、そんな怖い顔しないでくださいよ。別に幻覚とか妖の変身とかじゃないですって。」

 一応一定距離を取りつついつでもガードできるように構える。

「ある程度ロケットから話は聞いてるが、結局お前は何者なんだ?」

 イクシアが武器に手をかけながら尋ねる。

突如現れ結果的にロケットを目覚めさせたきっかけを作った人間。

そして今、ありえない所から出てきた事からも味方のようではあるがそれ以上に謎の人物だった。

「うーん、それは時期にわかるよ。それよりもさ、ここを進むって事は追い詰められて本気の妖を相手にするって事だよ。さらに妖はここにある物を使い力を増している。それに挑むということはもう帰れないかもしれない。」

 男の問いかけにロケットは頷く。

「ここまで来た時点で、とっくに出来てる。」

 男は翼を畳み、少し微笑む。

くちばしなので目で少し分かる程度だが。

「ロケットさんはあの悪夢を思い出し、なお立ち向かおうとするんだね。きっとその強い心はこの後必要になるさ。さあ、町を、世界を妖から救ってくれ!ご武運を!」

 翼を羽ばたかせ、一瞬空へと飛んだかと思うと光とともに何処かへ消える。

 残された翼は光の粒子となってロケットたちの身体を包む。

不思議とロケットたちの疲労が無くなって行き健康になった。

「一体誰、だったんでしょうね。」

 フィーネは考えてみるが心当たりは無かった。

「誰でも良い、味方ならね。」

 ウチワの言葉に全員同意した。

 誰かはまだわからなかったが回復をしてくれた事から敵意はないんだろう。

鉄塔の中はエレベーターと階段があるが、エレベーター上に固定されたままなぜか降りてこないようだ。

獣もロボットもいない鉄塔内部。

観光用に整備はされていたらしいが今はすっかり使われていない。

 ロケットたちは最後の戦いに気を引き締め、階段を一歩一歩登りだした。



 おまけ休憩所

フェイ『最終決戦!』

トマト『ながかった……ぐう。』

ウメ『かえったらーおいしいもの、いっぱいーたべるんだー。』

イベリー『絶対に生きて帰りましょうね。』

フェイ『やめて!フラグ乱立やめて!』


───────



12話【それでも生きていく】


 鉄塔の階段はひたすら単調に上へと続く。

本来はメンテナンスや非常時に使うもので観光用ではないのだろう。

 上へ上へと登り、足がつかれ挫けそうになったころに観光フロアへとたどり着く。

観光フロアは鉄塔からの眺めを見れる一般客用の場所らしく、先ほどの下に繋がるエレベーターともう一つ、プレミアム展望台行きと書かれたさらに上に繋がるエレベーターがあった。

 鉄塔からの眺めは絶景としか言い様が無い。

光走る高層ビルが下に見え、さらに遠くは雲の大陸、そしてその切れ間から下界が小さく霞むほどに遠く見える。

 観光に来たわけではないが4人と5匹はその光景に心奪われた。

「出来ることなら、こんな形じゃあなくて遊びに来たかったですね。」

 フィーネが窓からの景色を眺めて呟く。

「どこにあるのか分かったんだから、いくらでもこれるじゃないの。」

『みんなですめたらいーねー。』

 ウチワとウメが高層ビルのデザインを観察しながら答える。

 その言葉にタートルは首を横に振って否定した。

「いや恐らく、ダカーポの結界が無くなったらこの場所は風に乗ってどこかへ運ばれてまうぎゃ。今のうちにちゃんと見ておいた方が良いぎゃよ。」

『ちょっとみとこ……ぐう。』

 トマトも鎧の中から出てきて腕のハサミの間から外を見渡す。

 イクシアは下界の町の外の方を見ようと雲の切れ間をのぞき込む。

「にしても勿体ねーなあ。これほどの技術とか物がありながらまたどこかにいっちまうなんて。俺たちがここに来たなんて言っても誰も信じないかもな!」

『お土産はいくつかありますけれどね。』

 イベリーがひらひらと舞いイクシアの鱗に覆われた指先に止まる。

『この上にはダカーポ。ここからでもプレッシャーを感じる。俺が過去に止められなかったからこそ今度こそ絶対に止めなくちゃいけない。町のためにも、俺自身の決着のためにも。』

 ロケットが展望台の窓から上を見上げる。

あるのは雲、そして頂上。

『きっとロケットがしなないでも倒せるよ!なんとなくそんな気がする!』

 フェイがロケットに笑いかけ、ロケットは頷いた。

ロケットに対する精一杯の慰めだとロケットも分かっていたからだ。


 ロケットにとってダカーポは生まれつきの相方でもあり、そして全てを奪い去った怨敵でもある。

だがロケットはその過去がはっきりと分かった事でむしろすっきりと割り切る事が出来た。

そんな過去の為ではなく、今、“ロケット”として生きるために戦うと心に決めれた。

 例えこの戦いがどうなろうと自分がロケットとして生きた証を自分自身の魂に刻むために。


 イクシアとイベリーは旅の仲間を奪われ、そしてその仲間の想いと生きている仲間たちのために戦い抜くと決めていた。

もはや完全には日常は戻ってこない。

それでも自分がその穴を少しでも塞げれるのならその仲間たちのために戦う。

亡くなった者たちの魂を背負ってダカーポへと戦いを挑む。


 ウチワとウメは罠にはめられ無実の罪をかぶせられかけなおかつ一度命も落とす事になった。

酷い目に合わせられる原因、ダカーポはウチワたちにとって己の魂をかけて取り除かなくてはいけない汚点だった。

魂に土を付ける下衆に鉛玉の鉄槌を下すために最後の戦いへと挑む。


 タートルとトマトは精霊ホライズンが閉じこめられた結晶を解放するために戦う。

王子ブレイヴから託されたのはその使命だけではなかった。

自ら前線に行かないことを選んだブレイヴは、そのかわりにこの結晶とその強い想いも託されていた。

最初は戸惑いながら戦っていたがそれはいつしか自分の魂にも深く繋がっていた。

必ずホライズンを助け、想いに答える。

そのためにタートルとトマトはダカーポへと挑む。


 フィーネとフェイは、多くの死を見てきた。

友の、親の、そして見知らぬ誰かの。

そして自らも戦いの最中で死を作り出してきた。

どれだけ言い訳してもその死の数だけフィーネは想いを背負う事になった。

そしてそれに潰されそうになったときに周りの人々が助けてくれた。

 一緒に支え歩いてくれた仲間たちの魂に力を分けてもらえた。

だから今度はその仲間たちを支え、守るために最後の戦いの場へと立つ。

自分の魂で少しでも多くの想いを果たせるように。


 エレベーターのスイッチを押すと今度のは素直に下に降りてきた。

扉が開き、全員が乗り込む。

エレベーターが動いて上へ上へと運んでいく。

ダカーポは隠す気のないプレッシャーを放ち鉄塔の上からロケットたちを誘っている。

ゲームを勝って終わらせる為に。

 エレベーターが止まり、扉が開いてその場所へと足を踏み入れる。

先ほどよりもさらに高い位置からの展望台。

 奥でダカーポが座っている。

鉄塔内部のあちらこちらから大量に光のラインがその椅子に伸びていき、ダカーポへとその光が走る。

まるで都市全体のエネルギーを吸い取っているかのように。

 フィーネたちは武器を取りだしダカーポへと近づく。

 ダカーポもエレベーターの音で目を開け、ロケットたちを見る。

「遅かったじゃないか。」

 ダカーポは椅子に座ったままロケットたちに話しかける。

『誰かのせいでな!』

 ロケットはフィーネの前に出て戦闘体勢を取る。

「あまりにも長いからこちらも力を手に入れさせて貰ったよ。せいぜい俺を楽しませてから、散ってくれ。」

 ダカーポは立ち上がり、指を鳴らすと椅子が消えた。

顔に、全身に光のラインが走り、異常なオーラが漂っている。

「アップル!例えお前も特異点であろうと、僕はそれすら超えてお前をまた消し去る!本気で遊びそして全員殺してからまた遊んでやろう。そう、今度は世界で!」

 深くフードを被り剣を両手のローブの裾から出して右手の剣をロケットへと向ける。

ローブの下から浮き出る光の道筋と、そのエネルギーの影響か輝く瞳が浮き出て以前よりも不気味さが増した。

 人間を完全に捨てたかのようなその姿はフィーネたちに恐怖を生む。

それでもフィーネたちはその恐怖すらも勇気に変えるかのように一歩も引かず、ダカーポの動きに注目する。

 ダカーポは瞬間移動してロケットの目の前に現れる!

ロケットは精霊状態なので武器がなく防御が出来ない。

人間時の防具の能力や鍛えた分の防御力は引き継がれるようだがそれでもガードそのものがあまり出来ないのはかなり辛い。

 剣がロケットを挟むように上から二本同時に切り裂く!

身体を捻っても毛皮も引き裂かれるがなんとか肉にまで入らないように避ける。

しかしそのまま容赦ない連撃。

 下からの返し切り、蹴り上げ、空中上昇スパイラルカット、剣先にエネルギー溜めてからの爆発。

 ロケットは反撃しようとするがあまりの猛攻に変身すらできない。

また空中なのでウチワの弾丸か術でないと届かないが早すぎて詠唱が間に合わず弾丸は丁寧に剣で弾かれる。

 さらに攻撃は止まらない。

大きく怯んだロケットを3回切ってそのままさらに空へ投げる。

「はあああっ!!」

 地面全体から光と闇のエネルギーが入り乱れて空へとのぼる。

回避できず全員身体に痛みが走る。

塔での戦いで使われた瞬間凍結よりも危険な力だが対策はしてありあらゆる術や技によるダメージは減らし、即死するような大技もごく僅かで耐えれるように身代わりになってくれる道具も用意した。

 それでもなお身体を抉るような勢いで地面からエネルギーが立ち上り地面にいる全員が大きくダメージを喰らう。

空に集まったエネルギーはロケットを中心に大きな球のようになり光と闇の反発するエネルギーが生む力がロケットの身体を焼く。

「灰塵傲慢零!」

 ルシファーゼロと叫び、ダカーポか剣にエネルギーを込め強く輝かせるとそのままロケットの元へ飛んでエネルギーの球ごと両方の剣を鋏のように一閃!

爆発が起きロケットを飲み込んだ。


 地面へと落ちてきたロケット。

身体はなんとか繋がっているし息もあるが気を失っているようだ。

切られる直前、僅かに身体を逸らし力の向きを変え真っ二つになっての即死を避けた。

 いくら精霊とは言え気絶からの回復には時間を使う。

フィーネがすぐにロケットを回収しイクシアとタートルが前に出る。

 フィーネはロケットの回復より身体へのダメージを受けた全員の回復を優先する。

 フェイに指示を出して強い範囲回復を行い、光の雫が全員の身体を癒して行く。

 光のエネルギーによる焼き切るようなダメージと闇による奪いつくすようなダメージ。

どちらも共通しているのは強く消し去ろうとするその力だ。

凍結は身体の体温を奪い直接壊すのに対し今の技は身体の一片も残さず消し去ろうとするエネルギー状の攻撃。

表面的なダメージに見えなくても身体の内面からバランスを崩され壊そうとする。

実際今の一撃で全員出血は薄いが精霊すらも立っているのがやっとという顔だ。

前衛のメンバーは防具や鍛え方が本格的に違うので多少は良いがそれでも辛いものはつらい。

立っている人を先に回復しなければあっという間に倒されてしまうためあえてロケットは後回しにした。

 今回は最初から人だけでなく精霊をも巻き込む大技をいきなり使ってきて危険だと判断したロケットを攻撃した。

最初から一切の妥協なく本気ということだろう。

 ロケット復活まで一分かからないだろうがその間の猛攻を防ぎ巻き返すのはまるで前とは力が違うこの相手にどこまでやれるか全くの未知数だった。



 おまけ休憩所

ロケット『うずうず……』

フェイ『あれ?どうしたのロケット。』

ロケット『こうさ、アップルとしての振る舞いとロケットとしての振る舞い、ぜんぜん違いすぎ俺でもどう振る舞えば良いかわからない感じがあってさ……。』

フェイ『逆とまではいかないけれど、確かに話を聞く限りかなり違うもんね。』

ロケット『たまにさ、すごく撫でて貰いたいとか、顔をなめてあげたいとか思うけどさ、それは人としての自分のイメージがあると完全に気持ち悪い……!』

フェイ『思いっきり振る舞えないとか、そういえばそんなの考えた事ないなあ。』

ロケット『俺の表向きの正確と裏向きの性格、きっとずっと俺を悩ませる問題になりそうだ……。』

フィーネ(たまたま聞いちゃったけれど、やっぱり記憶通りの性格だなあロケットさん……。)

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