fruitFRUIT4章心傷編
fruitFRUIT4章傷心編
キャラクター紹介
Aブロック突入組
たれ耳白黒犬人のフィーネ・光の白猫精霊フェイ、白たてがみが尻尾まである犬人ロケット、黄色の羽根と羽に変化する腕を持つウチワ・額の赤い宝石とエメラルド色の体毛の雷のカーバンクル精霊ウメ、綺麗な緑の鱗を持つトカゲ人イクシア・赤茶の羽根の岩の蝶精霊イベリー、蒼の体と甲羅の亀人タートル・水色の蟹で甲羅に緑の海星がひっついている湖の精霊トマトの5人と4匹の仲間たち。
彼らは妖の場所を目指して挑む。
この一連の悲劇を終わらせるために。
39話【最後の祭り4】
イクシアが盾を構えてフィーネとロケットの前に飛び出す。
「逃げるぞ!アヤカシが渡した銃なんて食らったらどうなるかわかんねえ!」
ワービーストは銃を無茶苦茶に撃ちまくる!
狙いどころか誰を狙ってるのかわからないほどあらゆる所に穴をあけていく。
イクシアの盾や脚の鱗が弾く。
『敵の射撃軌道が予測できません。周囲のワービーストにも撃ち込んでいます。』
弾丸は近くのワービーストたちにも飛んでいき貫通していく。
倒れるわけではなく直ぐに塞がってしまうが注意は引く。
フィーネはロケットの胸から離れ一息ついてから装備を出す。
「防御強化、全員へ!」
『分かった!』
フェイが5人の周りを飛び回り光をかけると体が白く淡く光る。
弾丸がタートルの頭に当たるが貫く事なくそのまま落ちた。
「いてて……でもこれで何とか戦えそうだぎゃ。」
ロケットがフィーネを心配して声をかける。
「フィーネ、もう大丈夫?」
フィーネは頷いて術をかけていく。
「ありがとう、正直まだ辛いけれど。」
スティックを振るとフェイが輝き光の輪を作りだしワービースト達を囲んでゆく。
「けれど私は私が辛くて苦しいって事が分かったから、だからこそ越えられる。」
光の輪はワービーストたちを縛り上げその足元に精霊術の陣が広がる!
「今立ち向かえる。光の柱よ!」
ワービーストたちの足元から光の輪の内側を通るように光の柱が立ち上り、浄化するかのようにワービーストたちの肉体を滅する!
どこまでも昇っていき天井すら貫いて空へと昇って遮られていた空の闇すら貫き、滅する。
「どうか、安らかに眠ってください。」
空の闇が晴れて太陽が覗きAブロックに光が戻る。
光の苦手なワービースト達は慌てるように屋内へと姿を消していった。
教会内の大聖堂のワービーストたちは纏めて光により文字通り消され、その光景をフィーネとフェイ以外は驚きの表情で見ていた。
『すごいよフィーネ!こんな術が使えるなんて!』
妖は急に入ってきた光が眩しいのか目をこすっている。
「いや凄いなんてものじゃないでしょ、精霊覚醒ができる身とは言えそれもせず纏めて光で消すだなんで力業よほどのセンスと覚悟、それに自身の力の限界を何らかで打ち破らないとさー。」
フィーネは毅然とした態度のまま妖を見つめる。
「私は私がやれることをするだけ。みんなの思いも力も全部私に繋がる。それが全てを守る力になっていく。アヤカシ、私たちはこの事件を終わらせるために必ず貴方に勝ちます!」
妖は首を横へと振り、呆れた様子だ。
「やれやれ、まだやる気があるんだねえ。ま、とりあえず今回の報酬置いてとんずらしますか。」
そう言うと妖はその場から消えてしまった。
妖が消えた所にあったのは縛ってある羊皮紙だ。
解いてフィーネたちは中を読む。
《なぜ個人の力を超えて個人が力を持つことが出来るのか。
それは個人の力は人々が思うほど弱いものではないからだ。
人は人の限界を超え精霊と自然と一体化しさらには人自身が交わる。
そんな群れの力こそが最も強いかというとそうではない。
なぜなら神も一つの個人としての力だからだ。
特異点は世界の異分子だがそれは同時に神である事の証明。
群れと個、それはどちらも力の限界点は同じだ。
ならば神を越えるには、特異点として神を越えるには群れと個それ以外にも特異点ならではの何かが必要なのだ。》
「……何なんでしょう、これ。」
全員唸って考えるがさっぱりと要領が掴めない。
「分からないものは今考える必要はないかもね。とりあえず頭の片隅に置いておけば。」
ロケットの提案にタートルが頷く。
「分かったぎゃ。おいらが覚えておくから問題無いぎゃね。」
羊皮紙は再び縛ってフィーネは鞄にしまう。
石に光を宿しに儀式の部屋の台座へと戻りロケットがトッポの石をはめ込む。
光り輝き、飛び出した石を掴むと前と同じように台座は消えてしまった。
「さすがにまた罠へ挑むのはこの状態じゃあ辛いし、帰ろうか。」
全員頷いて、教会の扉へと向かう。
扉は未だ瓦礫によって動きそうにない。
「さて、どうしたものか……。」
イクシアが扉の前に立ってそういう。
イクシアが何かに気づき、扉の前で耳を澄ませる。
「おい、人の声だ……瓦礫をどけてくれてるのか?」
出入り口は特に不自然なほど瓦礫が積んであり、建物の瓦礫だけでなく妖がどこからか運んできたものも恐らくあるのだろう。
しかしほとんどは外にあり内側には少ししかない。
「きっと警察の人たちだ!俺達もこっちの瓦礫を除けよう!」
ロケットがそう言って瓦礫を動かし始める。
4人と4匹も頷いて瓦礫を運んでいると、扉の向こう側から光が射す。
「大丈夫か!誰かいるかー!」
警察の男の声が聞こえる。
瓦礫はさらにどけられていき、ついに扉が開く。
少しだけだが開いた所から複数人の警察署員の姿が見えた。
「た、助かったー……!」
イクシアが扉からの光を浴びながらそう呟いた。
警察署へと戻る途中に事情を話し、何とか理解してもらった後警察署内に戻ると5人と4匹は緊張の糸が切れたかのように倒れ込むように眠り、食事して、また眠った。
フィーネは特に酷く、目を閉じればマークの死が浮かび、目を開ければおかしくなってしまいそうなそんなぎりぎりの精神状態で何度もロケットたちと話したりまたフェイと共に泣き合ったりして徐々に沈静化していった。
一時期はワービーストを見るだけでフラッシュバックが起こりパニックを起こすと言うことで戦線離脱を勧められたがそれだけは拒否し、肉体的ではない精神的なリハビリをこなして言った。
その姿勢がフィーネの回復を驚くほどの早さで促し、もう一度スティックと盾を持つのには数日程度しかかからなかった。
妖の罠。
精霊石に輝きを戻した後、天にかざすと5人があの世とこの世の狭間の世界に飛ばされ戦いをさせられる罠。
しかし同時にそこで精霊覚醒や強大な力を手に入れ妖に挑む手段を手に入れた。
「これまでのように敵の罠と分かっていても飛び込んでいくしかない。」
ロケットがそう言って氷のように冷たく輝く石を持つ。
全員頷いたのを確認して石を天に掲げた。
5人と4匹は光に包まれた後違う光景を見る。
周囲は凍てつくように青白い空間で肌寒く、足下は前とは違い氷に覆われていたり氷の塊が足場のように浮いていたりする。
目の前の空間がゆがみ、冷気とそれにより発生した白い空気が排出され、それが消えると銃を持ったワービースト2匹と氷で出来たヌールのような姿の巨大な像と鼠がいる。
氷の像は氷の鎧を身にまとい、氷の曲刀を構え、動き出す。
「予想通りだけど最悪だな本当に!」
イクシアたちも装備を構える。
「ワタシは妖に借りを返して貰うためならここで力を手に入れる、あの強すぎる力にすら対抗するために今、フィーネにだって出来た事をワタシだってやってやる!」
ウチワはそう言うと相手に猟銃を向ける。
『このーせかいでつよーくなろー。』
ウメとウチワは光り輝き光が繋がっていく。
「凄い、意図的に精霊覚醒を引き出したぎゃ!」
タートルがウチワたちを見てそう言った。
ウチワの姿が変わり、背中から一対の翼が横向きに生えた。
服装はドレスのようなカラフルな羽根でできた変わった服だ。
「へえ、これはもしかすると。」
ウチワはそういって背中の翼で飛び上がり空中から射撃する!
空からの攻撃に防ぎきれないワービーストたち。
ワービーストたちも負け時と弾丸をウチワへと撃ち込む
「やはりそう来たね。でもまだまだ!」
銃をしまって腕も翼に変え4つの翼で羽ばたく。
銃弾の嵐の中を高速で飛び回りかすりもせず余裕そうに避ける。
「こっちも相手だ!」
ロケットとイクシアが空に注目していたワービースト2匹に襲いかかり大きな一撃を入れる!
二匹は不意打ちに大きく吹き飛ばされ体勢を崩すが何とか受け身を取って反撃し出す。
フィーネがスティックで素早く二人を強化!
銃弾が二人を襲うが皮膚で止められガードも行ったのであまりダメージは無い。
「うん、もう戦える!」
おまけ休憩所
ロケット「フィーネは強いよ、心が。」
フィーネ「ううん、私は強くないの。いつも独りでは光で心が焼けてしまいそうだもの。」
フェイ『フィーネの気持ちわなんとなくわかるなあわ。確かに怖さや悲しさで心が暗くなるのもいやだけど、強すぎる力に立ち向かうときとか、託された想いや自分だけでは重すぎる他人の善意。
わたしたちふたりぼっちならきっとそんな事に潰されちゃう。』
フィーネ「うん、けれどみんなが日陰をつくってくれる。私たちが普通でいて良いんだって休ませてくれる場所を。だから私はまた光を受けれるの。焼けてしまいそうになったらまた休めれるから。」
ロケット「……フィーネは本当に強いよ。」
──────
上下からの猛攻はワービーストたちにとって驚異だった。
銃弾は回避され片方狙えばもう片方に狙われる。
どんどんとダメージを負っていくが氷の像と鼠は違った。
250センチほどの巨躯を難無く高速に動かし無駄なく擦れるように避けていく。
地上を纏めて切り込みながら術を展開し空を飛ぶウチワを迎撃する。
重いタートルが受け、他4人で攻撃し一部腕などを砕くこともできるが。
「ちっ、やっぱり再生する。」
ウチワが撃ち込みながら見ると壊れた箇所も結局は氷、鼠がせっせと術で氷を生み出してしまう。
かといってタートルとトマトやウチワとウメが精霊術でまとめて破壊しようとしてもそれを当てるスキが生まれない。
「フォーム、コンテルネッツァ!」
ロケットが毛むくじゃらに変身し氷の像の足元に闇を広げる!
しかし直ぐに範囲から脱出され闇の蛇を出しても氷の術で蛇を斬られる。
「そんな事出来るのか。どうしたようか。」
ロケットは集中する。
自分の可能性をさらに探っていく。
今までの経験からどうすれば良いかは分かる。
けれどそれが自分をどこへ連れて行くのかがわからなかった。
さらなる自分の中の闇へ、失われた記憶の奥へと。
「フォームレボリューション!」
光の繭に包まれ、身体を変えていく。
強大な相手には相手を弱める必要があった。
先鋭化した相手にむしろ小細工は不要だ。
もはや身体を捨てるかの如く縮め、全長10センチ程度だ。
たてがみは朱く染まって行き、手も前脚へと変化させ足も後ろ脚へと。
赤い毛は黒くなってゆき毛が六つ束になって後ろ上へと細い翼のように伸びる。
「フォーム、ア・ジ・タ・ー・ト!」
強調するように激しい口調で言い、光の繭から出る。
「行け!闇よ!」
ロケットがそう言うとロケットは黒く光り出し、周囲に闇のエネルギー弾が多量に出現し氷の像に一斉に降りかかる!
当然除けはするが雨のように降るそれを巨躯がいくつかくらいさらにそこに追撃のように弾がいくつも襲う!
氷の像は壊れ鼠がむき出しになり闇の弾が襲いかかる!
「うっ、ぐぬううかたい!」
しかし闇の弾は押し返されていく。
氷のエネルギーをありったけに込めた氷の壁が鼠を守り、そのまま弾き返した!
「ぐっ、こいつは逆に力じゃ無理か!?」
ロケットは毛むくじゃらに変身しようとするが自分の周囲の変化に気づく。
「危なっ!」
間一髪、後ろから切りかかられたのを回避!
しかし間髪入れずにさらに横からも斬撃!
闇の塊のようなもので剣を弾いてさらに距離をとる。
「これは!」
ロケットの周囲に複数の氷の像。
ざっと5体はいる。
「俺はこいつらを引きつける!本体をどうにかしてくれ!」
そういうとロケットは空中で闇の弾を操り氷の像達と激闘を繰り広げる。
「急にかわいくなったと思ったら、人使い荒いね!」
ウチワはウメから雷を本体のある氷の箱のようなものに数発落とすがまるで手応えがない。
「ダメね。やっぱり力じゃ。」
タートルはウチワやロケット、精霊覚醒を行ったフィーネやイクシアの様子を見ていた。
イクシアとフィーネによりワービーストたちは完全に倒された。
「……なるほど、だいたいわかったかもしれないぎゃ!」
タートルはそう言うとトマトを手の平に乗せる。
もうすでにトマトは赤く染まっていてやる気十分だ。
『どうした、俺ならいつでもいけるぞ!』
「まー待って貰ったのはほかでもなく精霊覚醒のためぎゃ。解析が終わったから今から実践ぎゃ。」
タートルはそう言うと目をとじる。
「おいら達は他の人たちとは違ってセンスとそれを支える正義心もにゃあし優れた直感も、対抗心から導く天才ならではの閃きもにゃあぎゃ。だから努力して見て理解する。それしかないぎゃ。」
目をゆっくり開いてトマトの乗った手を自分に寄せる。
「だけどその分、最後に結果は出すぎゃ!」
『そうさ、俺らはのんびり屋なんかじゃない全てを己の糧にしていくタイプなのさ!』
ふたりは静かに光に包まれ、光同士が結びつく。
タートルは姿を変えていき身体全体が一回り大きくなりさらに腕にひれのようなものが伸びる。
手足の装甲の変わりに頑丈そうな緑の甲殻が複雑に付き不思議な形をしている。
『俺の補助なしでいけるな?』
トマトの問いにタートルは頷いて、ふたりは水へと変化する。
そしてふたりが別離のまま高速で氷の箱に近づいて左右から手を合わせる。
すると氷の箱から水煙が出てきた。
「水と氷は元は同じ。大量の湯の中にある水はどうなるぎゃ?」
『溶かしてやるよ、俺達の熱い力で!』
水のふたりははあっという間に氷を浸食していき、ヒビが入って壊れた!
その場から急いで逃げようと中身の鼠が飛び出す!
『逃がすか!』
トマトとタートルが合わせて二つの水流を鼠へと放ちぶつける。
『あわせーる。』
ウメとウチワがさらに水流に雷撃のエネルギーを叩き込む!
「おっしゃいっとけ!」
イクシアとイベリーが岩の精霊エネルギーそのものをその水流に撃ち込む!
「合わせます!」
フィーネとフェイもほぼ同時に光のエネルギーを水流に流し込む!
「うおおお!!」
ロケットはなんとか氷の像を一体壊し次の像が襲いかかる隙間に闇のエネルギーを光のエネルギーと合わせるように送り込む!
エネルギーが水流の中で混ざり合い一つとなって鼠を貫き、飲み込む。
互いにエネルギーは弾け合い爆発し、そして収まった。
また前の時のように宙に輝く氷の色の石が現れた。
ロケットは人型に戻って手に取り、帰るために空へと掲げる。
光に包まれ気づくと再び警察署の中へと戻っていた。
ロケットは小さく淡く光る精霊の石を手に持っていた。
少し前のように力強くは輝いていない。
「何とか、勝てたけれど後一つ……。」
全員疲労が溜まった顔をしている。
誰が打ち合わせることなくそれぞれ自分の寝室へと戻っていった。
おまけ休憩所
ロケット「フォームア・ジ・タ・ー・ト!」
ウチワ「音楽で激しくって意味。にしても随分かわいらしいね。」
フェイ『少し大きな精霊って言われても違和感無いなあ。』
ロケット「何だかこの姿だと暴れたくなる!後、何だか後で冷静になると何だか子供に戻ったみたいだ!」
ウチワ「その前にロケットにそんなキッズ時代の記憶があるとは思えないけどね。」
ロケット「感覚だよ、感覚!」
フィーネ「にしてもここまで色も姿も変わっちゃうとロケットさんだって言われないと気づかないですね。」
ロケット「ええと、わりと撫でられるのが好きなのはかわらなかったり。」
フェイ『すっかり撫でられるのがクセになってる人間ってそれはそれでどうなんだろう。』
──────
最後の台座の位置はおそらく役所の中だった。
そして最後のはめる精霊石は教会で手に入れたデリエの石だとフィーネたちは予想した。
石はワービーストたちを浄化し妖を追い払った後に机に置いてあるのをフィーネが鞄に入れておいた。
台座を目指し、外に出る。
すっかり空は晴れ、暗闇に包まれていた塔の姿がよく見える。
一階部分は長い塔を支えるためか頑強そうな黒い石で太く作ってある。
そして少し細くなってそのままずっと不気味な黒い石を長方形に切り出したような、レンガ造りのようにずっと上まで建っている。
白い雲を貫いて頂上は下からはよく分からないが恐らく大きな台のようになっている。
光に照らされ見えた塔はまるでその光の陰のように真っ黒だった。
「不気味な塔だなあ。」
ロケットは塔を見上げながら役所の方へと歩く。
「次の台座が見つかったらきっと次に行くのは、あそこなんですよね。」
フィーネも同じように見上げる。
そんな会話をしながら役所へ着く。
役所の中は窓が獣対策で塞がれていて真っ暗だ。
それが仇となって光の苦手なワービーストたちの格好の場所へと化していた。
フィーネはスティックを軽くくるりと振ってフェイがそれに答えるように輝きを増し、暗闇を照らしていく。
『これで少しはマシだよね!』
先まではあまり見えないが十分付近の様子は見えるようになった。
ワービーストたちはその光に気づき遠くからこちらへと歩いてくる。
「邪魔な明かりを消しに来るみたいだな!」
イクシアたちは武器を取りだしてワービーストへと戦いを挑み、進む。
暗闇の中探索と戦闘を繰り返す。
ロケットたちはさすがにワービーストたちとの戦いも手慣れてきていたが厄介ななのは暗さだった。
小型の獣とワービーストが組んで来ることもあり暗い中の戦闘はどうしても不利に追い込まれがちだった。
それでもなんとか少しずつ探索して行き最上階の3階、誰の部屋かは分からないが書類が多く積まれ机が一つだけ立派そうにある。
そしてその机の前にあるのが、精霊石をはめ込む上の部分が白の台座だ。
「今までの流れからするときっとこれは。」
フィーネは鞄からデリエの精霊石を取り出して、くぼみにはめ込んでみるとピタリと嵌まった。
「最初から用意してたみたいで気味が悪いね。」
ウチワが呟いた。
いつも通り強く石が光り出し飛び出して台座が消える。
今度はちゃんとフィーネは石を受け取り素早く鞄へとしまう。
「警察署へと帰って休んでからこれに挑みましょう。」
全員同意し、再び暗闇の中を戻った。
警察署に帰り数時間ほど休んでから再び集合し石を掲げ3回目の狭間の世界に入った。
白い光が遠くの景色を輝かせ眩しいほどだ。
気候今までとは違い暑くも寒くも無く快適だ。
「フィーネ、ここに出てくるのは多分……」
ロケットが全て言い切る前にフィーネはロケットを見てうなずく。
「うん、分かってる。私が越えなくちゃいけないってことも。」
フィーネのスティックを構える手は少し震えていた。
目の前の空間は歪んで行き、猛烈な輝きが広がる。
収まった所にいるのは双剣所持ワービースト2体と高さ3mほどの巨大な三毛猫だ。
デリエにとても良く似ているが敵意をこちらへ向けている。
爪を出し、八つ裂きにせんと飛びかかってきた!
戦闘は互いに一歩も引かず激しく斬り合っていた。
ワービーストたちはこれまでのより遙かに強くなっており、光の弱点すら消えてるようで精霊術をとことん弾き足止めが効かない。
三毛猫はロケットが小さくなって闇の精霊術で攻めても正面から弾き、フィーネが光で拘束しようとしてもむしろ光を喰って増長する。
「精霊術が有効打にならねえのなら!」
イクシアが深く踏み込んで三毛猫の爪と4回切りつけあう。
結果は互角だが三毛猫の方は余裕そうだがイクシアは全力を込めたものだ。
「流石に手強いな!」
フィーネは味方を補助しながら身体と心の高まりを感じていた。
「私はそろそろいけます!」
「頼んだぎゃ!かなり手強いからまー少しでも戦力増やすぎゃ!」
タートルの言葉を聞いてフィーネは大きく息を吸い込んでフェイとハイタッチし互いに光を纏って変化する。
精霊覚醒だ。
「デリエ……いえ敵の猫は光の精霊術を食べてしまいます。ロケットさんフォローお願い!」
スティックを振って味方に敵の攻撃を通さない特殊な結界を張る。
ロケットは変身して毛むくじゃらになる。
「フォームコンテルネッツァ。闇よ光の陰となれ!」
三毛猫がイクシアの無効化結界に食いつこうとした瞬間に光の結界が影をつくるように闇が伸びて牙を弾く。
「闇はやっぱり食べれないんですね。」
その隙にフィーネは仲間の回復を行っていく。
ロケットは次々と闇を光の術に張っていき敵の食事を妨げる。
その間にまた自らの可能性を探っていく。
精霊術が効かないまたは吸収すらされてしまう相手には、自分が獣の姿の時にやられたように相手をまとめて打ち砕くような強力な一撃を。
記憶の闇に眠る自分の姿を。
ロケットはもう自分の闇に手を伸ばす恐怖は自分のものにできていた。
恐怖は仲間の光に照らされ勇気となってさらに奥へと。
「フォームレボリューション!」
闇を張り終えて自らの姿を変える。
光の繭を作って姿を大きく変える。
人の姿より逞しく、大きくなっていき、2m以上の身長を得て腰回りも骨格そのものから頑強に太くまた二足歩行でもしっかり耐えられるものに。
全身を筋肉が張り詰め足は地面で踏ん張るために爪を太く変化させていく。
全身を黒い甲冑のようなもので覆っていき頭まで隠す。
手には大きくなった両手持ちハンマーを。
光の繭から出てきたロケットはまさに巨人。
「フォーム、グラーヴェ!」
低い声と鎧のせいで篭もった声になっている。
全身が猛々しく白のたてがみと相手を粉砕しそうな強靱な尻尾、それに地面に食い込むような爪のある足元が唯一鎧から見えている部分だ。
「あの猫は、俺が、やる。」
鎧の重さもなんのそのと強く駆けていく。
走るたび地響きが起きそうなその走りを止めんとワービーストのイクシアの相手をしていない方が飛び出し双剣を振るうがロケットはまるで気にすることなくそのままぶつかって剣を弾き、ワービーストすらも弾いてそのまま三毛猫の元へ向かう。
三毛猫も負けんとその身体ごと体当たりするように飛びかかりロケットはそれに合わせて鎚を横に振るう。
鎚と爪先がぶつかり合い、互いに体重をかけて押し込む!
三毛猫の身体が押されていきそのまま身体ごと鎚がめり込んでいき鎚を振り抜いて吹き飛ばす!
数メートル後ろへ吹き飛ぶが直ぐに体勢を直し着地する。
イクシアがワービーストと斬り合いながらその姿を見ていた。
「よし、ロケットそっちは任せた!俺もやってやる!イベリー!」
『了解、精霊覚醒。』
イベリーがイクシアの背中に止まり互いに輝いて光が繋がる。
光はイクシアの姿を変えていきより強靱になっていく。
「この俺の全力を見やがれ!」
縦に剣で斬るだけでワービーストは双剣で受けきれず大きく怯む。
追撃で盾で空へと打ち上げた。
「オーライ!」
イクシアの打ち上げを見てウチワがその敵に銃弾を浴びせていく。
「間違えて俺に当てるなよ!」
イクシアも無防備になっているワービーストを何度も空中で切り上げていき、弾丸と同時に敵を切り裂いた。
「手応えあった!まずは一体だ!」
おまけ休憩所。
イクシア「あの水になってるのってどんな感覚なんだ?」
タートル「うーん難しさぎゃね。そう、海で泳いでるような……場と一体になった感じぎゃ……。」
イクシア「俺、海なんて沈むしかないんだよな……。」
タートル「うーん水になった時は姿も自由自在だから自分の身体の境界線が曖昧になってちょっとおもしろい感覚なんぎゃよ。」
イクシア「なんだか、スライムみたいだな。」
タートル「否定はできないけどその言われ方は何だか納得できにゃあぎゃ……。」
──────
ロケットの新たな変身と精霊覚醒による強化で形成を一気に傾ける。
3回目の妖の罠はこれまでの中で最も手強かったが5人と4匹はさらに強くなっていた。
ワービーストはウチワとイクシアが、三毛猫はロケットと精霊覚醒したタートルが無事撃破した。
出てきた石を掲げ、現実世界の警察署、休憩室へと戻る。
瞬間、全員疲れが出てため息をついて倒れ込む。
「こ、今回何だか一番疲れた……。」
ロケットが何とか椅子の上に乗っる。
「うう、……あれ、何かある。」
フィーネは側にあった机に二枚の紙切れがおいてあるのを見つける。
一枚は前回の勝利報酬と書いてある。
《本当は前回渡したかったけれどロケットが自分の変身を見つけるのが遅かったから今渡すことにするよ! 妖より》
妖の書いたと思われる折り畳んである紙切れは伸ばすとロケットに関する記述が載っていた。
表裏びっしり書かれていて、《ピアニッシモ 人間形態》、《フォルテッシモ 獣状態》、《グラーヴェ 巨人状態》、《コンテルネッツァ 妖魔形態》、《アジタート 悪魔形態》の5形態が事細かに書かれている。
「これは……俺が分かってそうで分かってなかったことも結構書かれてそうだ。ちょっと読んでみるよ。」
もう一つの紙は短くこう書かれていた。
《最後の報酬 さあ決戦の時だ。謎の解消と事件の解決をしたいなら光る三つの石を塔に持ってくると良いよ。この紙を見てるということは精霊石の試練を全て突破したということだから僕の『影の塔』へ挑む資格がある。さあ持てる力全てを使い楽しませてくれ!》
さらに最後、赤い文字で書かれている。
《殺害依頼 僕を殺してみろ 5人と4匹へ》
「随分となめられた文章ね。」
ウチワは紙から目線を外して椅子にもたれ掛かる。
これであとは塔へと乗り込むだけだったが妖が待ち受ける場所になにも無いわけがなく、相談の結果準備と休養を取ってから乗り込む事にした。
そして決戦前夜。
夜は外にワービーストたちが出てくる。
ただそれでも警察署屋上まではワービーストはおらず、フィーネとフェイはそこで月を見ていた。
『ついにこの旅もおしまいかあ。』
フェイはぽつりとそう言う。
「何だか不思議な気分。 早く終わらせて平和に戻りたい自分と、もっとみんなと一緒に色んな事したい自分どちらもいるの。」
フィーネは月を眺め、心境を語る。
「みんなと一緒にいる時は楽しくて、でもたくさん辛いこともあってそれに多くの人や精霊、もしかしたら倒してきた獣たちからもたくさんの想いを託されてきた。」
フェイはゆっくりフィーネの周りを回る。
『そっか、獣たちもアヤカシに連れてこられたんだもんね。』
「うん。全てはアヤカシによって作られた舞台。私たちは絶対にこの戦いに幕を下ろさなきゃいけない。」
フィーネはゆっくり尻尾を振る。
「それに、正直復讐心もあると思う。絶対に許せないことをアヤカシはした。」
『当たり前だよ!絶対にたおしてやる!』
フェイが熱り立つがフィーネはそっと手を伸ばして撫でる。
「けれど、私は復讐のためには戦わない。復讐にとらわれて相手と同じ事してたら意味がないから。」
フェイは考えて、考えても答えが出ずに言う。
『わかんないよ、そんな難しいこと。』
フフッと少しフィーネが笑い、フェイを撫でる。
「ごめんね。でも簡単な事だよ。私はみんなを守るために戦うというだけ。ね?」
フェイは考えてからうなずく。
月夜に照らされる中、夜は更けていく。
タートルはトマトと共に警察署の捜査資料質の中にいた。
「犯罪者データを洗う手伝いするって言ったら何とか見せてくれてラッキーだったぎゃ。」
『半分嘘……ぐう。』
タートルは頭を掻いて資料を読み続ける。
「半分は本当ぎゃ。過去に同一人物がいないかぎゃ。まーもう半分は滅多に見せて貰えない物に興味があったからなんだけどぎゃ。」
小さな明かりの中、常識的にはあり得ない速度で頁をめくっていく。
タートルは速読そのものもあるがそもそも見てる範囲なら全て記憶にしまえる。
画像や映像として覚えておいて後でその絵の文字を読むという技を使っている。
「それにしても、流石に多いぎゃ。まだ半分も終わらないぎゃね。」
『ねよ……ぐう。』
「ずっと寝てるぎゃね。」
本を片づけ、新たな本を取り出す。
それの繰り返しで少しずつ読んでいく。
「後はあの塔、影の塔に挑むだけで終わると思いたいんだぎゃなあ。まだこれがおるからぎゃぁ。」
袋から結晶を取り出す。
中に胸に刺さった小さなナイフを取ってくれと翼を折り曲げくちばしを開け痛みに涙する青い小鳥の精霊がそのときそのまま止まっている。
「これ、中にも聞こえてるんぎゃね?まあ聞こえてるのならそれで良いんだぎゃ、絶対にそこからだしてやるぎゃね。」
結晶を机に置いて、さらに作業を進めていった。
イクシアとウメは眠る準備をしていた。
服は既に寝間着に着替えベッドに座っていた。
「どうも、眠れそうにないね。」
時計を見ると普段なら直ぐに眠ってしまう時間だ。
『ドキドキーしてる?』
ウメがウチワの胸に耳を当てて心音を聞いている。
「まあ、明日はついに妖との対決予定だからね。心躍るよ。」
ウチワは含み笑いしてウメに答えるが、ウメは首を横に振る。
『ちがーう、ふあんやこわさでいっぱーい。』
図星をつかれウチワは少し驚く。
そしてウメを撫でて少しずつ口を開く。
「分かってなさそうで、分かるんだねえ。まあ実際どうなのかってのはワタシにもわからない。あの時まだ力の差を感じたしアヤカシがこの先なにをしてくるのかは分からない。」
ウチワは教会で妖の威圧でその強さを肌で感じた事を思い出す。
「それでも、ワタシたちであいつをぶっ飛ばしてやらないとね。」
ウメは撫でられて目を閉じ眠ろうとしてる。
「それじゃあ、ワタシも寝ようかね……。」
おまけ休憩所
ロケット「相変わらず、ちょっと慣れないなあ。」
フィーネ「獣を斃してしまう事にですか?」
ロケット「うん。何だか俺らも命を奪ってるんだなってなってさ。」
ウチワ「向こうだってやる気あるんだから良いじゃない、狩っても。」
フィーネ「まあ、そう割り切るのが楽なのかもしれないですけどそもそも人間だって自然の一つですよ。斃さなければそれだけで異常にふえてしまって自然破壊につながる生物もいますから。」
フェイ『でも、たおしすぎて結局自然破壊になるんじゃないの?』
ウチワ「狩りと駆除の違いね。駆除はそいつらを過剰に殺すから生態系が崩れるのよ。」
フィーネ「結局私達も生きるためには多くの生物を殺さなくてはいけない。けれどそこに少しでも心があるかどうかで変わってくると思う。その命すら背負って私達は生きていくということを忘れないためにもロケットさんの考え方も良いと思いますよ。」
ロケット「なんだか、勉強になった気もするよ。」
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イクシアは一階玄関外で月の光を浴びていた。
光の結界が以前より弱っているとはいえまだワービーストたちの侵入を拒む事はできる。
少しだけではあるが玄関外も結界内なのでワービーストたちが襲ってくることはない。
「ついに明日、行くんだなあそこに。」
影の塔を見上げる。
月に照らされ黒い石たちが滑らかに輝く。
『多くの敵の罠が仕掛けられていると考えられます。準備と覚悟は宜しいですか。』
イベリーがイクシアの視界に入るようにひらひらと舞う。
「勿論、気合い十分後は乗り込むだけだ!ただ。」
イクシアは上の方へと視線を移し塔の頂上を見上げる。
「あそこにいる奴に会って俺は生きて帰らなくちゃならない。外で仲間が待っているしシャムもいる。」
キャラバン隊と狸族のシャム。
キャラバン隊は町の外で、シャムはCブロックで待っている。
「あの強敵相手に立ち向かっていける気合いはある。だけど絶対生きて帰れる自信はどうしてもないんだよな。」
イベリーはイクシアの指先に止まり、イクシアはその指を伸ばす。
『こちらの方が不利ではあります。ですが、貴方達なら勝てると考えます。』
イクシアはにやりと笑う。
「イベリーが断定できない事を言うなんて珍しいな。」
イベリーは指から飛んで上へとのぼっていく。
『私も全力を尽くしてその結果に導きます。』
のぼるイベリーをイクシアは眺める。
月明かりを浴びながら明日へ向けて想いを込めながら。
誰もいない暗闇の隅、警察署は4階建てだがそのうちの3階誰もいない机と椅子が置いてある部屋でロケットは一人いた。
「今までずっと誰かと一緒だったけれど、たまにはこういうのも良いかな。」
机に伏して、身体の力を抜き思いを広げていく。
記憶を失った後の思い出も多くあり、それも掛け替えのないものになっていた。
そして妖の存在。
自分のことを唯一知っている妖と何度も対峙しここまで来た。
妖は何を知っていてそしてなぜこんな事をしそして自分たちよりも遙かに強い力を持ちながらこちらを殺そうとしないのか。
静寂な暗闇の中、どこまでも広がりそうな思いを張り巡らしそっと目を瞑る。
何がどうであれ、それらは全てあの塔に乗り込んでみないと分からない。
自分一人じゃなく5人と4匹で必ずあそこを攻略し妖に挑む。
そして妖から自分の過去を聞かなくてはならない。
ロケットにとってはそれは今は少し怖くもあった。
妖という凶悪そのものが知る自分の過去とは一体何なのか。
それのせいで今の新しい思い出たちが壊れてしまうほどのものなのか。
不安や恐怖、同時に自分に対する好奇心ややっと分かるかもしれないという喜びも暗闇の中にとけ込ませていく。
心を穏やかに研ぎ澄ませ休ませていく。
決戦への集中力を高めていくかのように。
そして翌朝。
それぞれがそれぞれの夜を過ごし、想いは一つに9つの心は真っ黒な塔へと向かう。
警察たちが協力してくれると言ったが補給活動や一般人たちの保護を優先してもらった。
もはや5人とも警察たちよりも強く、また妖が招待した中に警察は含まれていない。
犠牲が増える危険性を考慮しても少人数での突破を選んだ。
塔の前まで歩いて来て、塔の入り口らしきものがあるのに気づく。
3mほどの高さの大きな門で開閉方法は分からないが門のちょうど人の目線あたりに三つ窪みが三角上に並んでる。
「確か、紙には三つの石を持ってこいって書いてありましたよね。」
フィーネはそう言って、それぞれの形に合う精霊石をはめ込んだ。
精霊石の淡い光が門と伸びていき、重なり合って黒い扉は白く光り精霊石たちは飛び出す。
フィーネは三つ同時に飛び出てきたのに驚くもなんとか掴む。
扉に広がった光が収まると、黒い門は下から外側へ向けて開いていく。
門の上側を基点にぐるりと門が上へ動いて入り口が開いた。
中はどうやら薄暗そうだ。
いざ乗り込もうとする5人と4匹。
しかしその時、後ろに誰かがいるのに気づいき、全員振り返る。
鳥族の男のようで紺色と灰色の羽根が混じった変わった模様で腕ではなく翼が生えている。
質素な服装で町の一般的な軽装だ。
「あ、驚かせてしまってごめんなさい。」
振り返った事に驚いた様子で羽を少しばたつかせる。
「誰貴方?町の人間ならここは危険だから早く帰りなさい。」
ウチワがそんな様子を見て帰るよう促す。
だが男は帰る気配はなく語り始める。
「いやあこんな大きな塔近くで見ないと勿体ないじゃないですか。それに皆さんがいるのなら大丈夫でしょうここも。」
そう言うと鳥の男はロケットに近付いて右の翼を差し出す。
「握手してくれません?町を救うヒーロー。」
「え?う、うん。」
ロケットは急な申し出に戸惑いながら翼と握手するように握る。
瞬間、ロケットにの手から衝撃が体中を巡る。
「うわっ!?」
おもわず手を離しその時一枚羽根をむしってしまう。
「あ、静電気溜まってたかな。」
男そう言って翼を戻す。
紺の羽根はひらひらと舞ってロケットは掴む。
「あ、ごめん抜けちゃった。」
「良いんですよ羽根なんてたくさんありますから。」
その時、羽根はなぜか光り輝きロケットの手の中へ入って消えてしまった。
驚く様子のロケット。
だが周囲の誰もが何も気づいてないかのように離れていく鳥の男を見ている。
「あれっ、え?」
「どうしたんですか?ロケットさん。」
フィーネがロケットの挙動に気づく。
「いや、今羽根が光って俺の中に。」
「羽根?どこかへ飛んで行ったんじゃあないんですか?」
あれ?とロケットは頭をかく。
誰も気づいてない様子だ。
「それじゃあ、皆さんで頑張ってください!」
鳥の男は翼を振ってBブロックの方へと歩いていく。
5人と4匹は見送り、互いに顔を見合わす。
「何だったんだ?」
イクシアがそう言ったが全員わからないと首を振る。
「まあ良いんじゃない?今はそれよりも。」
影の塔の門は既に開いてウチワたちを待ち受けている。
「何だか、今ので緊張がほぐれちゃったけれど改めて。行きましょう!」
『おー!』
5人と4匹は黒い塔の中へと入っていく。
ひんやりとした空気が身体を包み、中は火も明かりもないが不思議と薄暗い程度で奥まで見えた。
中は広くそして直ぐ側に階段、どこかへ通じるとびらが3つ、奥にも階段で、塔の造りだが中は4mほどの高さの位置に天井がある。
「飛んでいけたらと思ったけれど、そうは行かせないみたいね。」
ワービーストや獣は奥の方にいるのが見える。
神秘的なような邪悪なような不思議な雰囲気が中には立ちこめていて5人と4匹には再び緊張が戻ってきた。
おまけ休憩所
トマト『いよいよ最終決戦……ぐう。』
イベリー『敵はただ待っているとは思えません。注意を。』
フィーネ「ここまでだいぶ長かった気がします。」
イクシア「こういうのって、結構ここからが長いんだよな。」
ウチワ「外から飛んで行くには高すぎるし流石にアヤカシが対策してないとは思えないからね。」
ロケット「塔の材質、良くわからないけど凄く硬くて壊して進むってのも難しそうだなあ。」
ウメ『あともーちょっとだけーつづ』
フェイ「それは言っちゃダメなセリフ!」