出会い
キヨシは中年の男だ。
人並みの知恵はあったが暗い男だった。
小学、中学、高校と地元の高校を卒業し、そのまま地元の市役所へと就職した。
幼稚園のころが彼のピークで女の子に間違われるほど可愛らしいかったし、それなりの格好もしてもらっていた。
小学生のときに父が癌の患い、体力的な理由で転職をしたため、給料もさがり家計は節約したものになっていった。
彼が30歳のころ父親が死んだ。
そのとき彼の何かがかわり公務員ではなく一般企業で勝負しようなどという小さな野望をもった。
彼は公務員を退職し、一般企業の営業へと転職した。
新人のころは可愛がられ援助もあり、それなりの成績を残したが、5年、10年とたっても昇進はせず
後輩の教育係、さらには後輩のステップアップの台となり、後輩に追い抜かれるという生活を暮らしていた。
キヨシは真面目な性格でほとんど趣味もなく、実家から仕事先に通い母親と二人暮らしをしていた。
彼が40歳になったころ、ある出来事がおこった。
いつもの会社からの帰宅時、20代後半の女性がキヨシの前でコケた。
鞄の中身をすべてぶちまけ、化粧品などがそこらに散らばった。
キヨシは拾うのを手伝った。
女性は一礼し、その場を立ち去ったが
ふと気付くと同じ電車に乗り、座席の前に座っていた。
驚いて見ていると目が合った。
キヨシは一礼した。
キヨシは乗り換えが必要なので電車をおりた。
数分歩き、プラットホームで電車を待っていると
自分の並んでいる列のすぐ前にさっきの彼女がいた。
驚いていると彼女と目が合い、彼女は怪訝な顔で
「ストーカーですか?」
なんて聞いてきた。
キヨシは彼女のそれほどまで美人ではない容姿の彼女の発言に吹き出しそうになったが
笑いをこらえた顔で「すみません」と言って隣の列に移った。
電車を降り、自分の家まで向かっているときにさっきの彼女がまたいた。
彼女が「家近いんですね?」
といい、キヨシは「はい。」
といった。
それから彼女と世間話のようなものをした。
彼女は近くでスナックに勤めているのでまた遊びに来てほしいといい、その日は別れた。
キヨシはスナックに通うようになり、その彼女と付き合うようになった。